マツダが2016年に発表した「SKYACITV-VEHICLEDYNAMICS」の第一弾が「G-VectoringControl」(GVC)だ。シャシーとパワートレーンのチームが一体となって開発した車両統合制御技術である。
G-VectoringControlは、エンジンでシャシー性能を向上させる新しい試みである。
ドライバーはアクセルで前後Gを、ステアリングで横方向のGを制御するが、GVCはエンジンとステアリングを完全に連携して制御することで4輪の接地荷重を瞬間に最適化、前後方向と横方向のGがより滑らかにつながるようにし、旋回応答性と安定性を両立させる。具体的には、ドライバーのステアリング操作に応じてエンジンの駆動トルクを瞬間的に緻密に制御する。制御周期は5ミリ秒。つまり1000分の5秒毎にトルク量を微妙に上下させることで4輪の接地荷重を最適化し、スムーズな車両の挙動を実現するわけだ。
実際に変化する加速度は最大で0.05G、通常で0.01Gとエンジンブレーキより断然小さい微少なG変化である。エンジン出力で数Nm、荷重で1輪あたり数kgというごく微少な領域だ。この程度で効果があるのか?という疑問は試乗で氷解した。緊急回避のシングルレーンチェンジでは明確に効果が体感できた。それ以上に印象的だったのは、意識せずに運転操作をしている20km/hという低速時やごく普通の直線を走っているときの修正舵、舵角の少なさだ(これはデータで確認して驚いた)。
もともと「スキルフルなドライバーの運転を克明に分析することから始まった」GVCの開発だが、いかに優れたドライバーでも5ミリ秒毎に数Nm単位のアクセルコントロールはできない。5ミリ秒の制御周期に対応できる高応答のSKYACTIVエンジンあってのGVCだが、ECUの制御プログラムだけでこれだけ車両の運動に効果があることに驚いた。
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