連載

安藤眞の『テクノロジーのすべて』
巷のSUVよりも低く抑えられたボディが精悍! 室内は近未来感が好印象【スバル・ソルテラ(内外装解説)】

スバル初となるグローバルEV、ソルテラの発売が迫っている。それに先立ってプロトタイプモデルの雪上試乗会が開催され、実車をじっくりと確認することができた。まずは、その内外装の印象からレポートしよう。 TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto)

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大型バッテリーの搭載や重量増にどう対処した? e-スバル・グローバル・プラットフォームを深堀りする【スバル・ソルテラ(ボディ&シャシー解説)】

スバル・ソルテラの土台を支えるのは、トヨタと共同で開発したe-スバル・グローバル・プラットフォームだ。EVだからできることとは? EVだからこそ配慮しなければならなかった部分とは? 既存のガソリン車とはまったく異なるその構成を、じっくりと掘り下げて解説しよう。 TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto)

https://motor-fan.jp/mf/article/45515/
スバルのこだわり! FWDとAWDで異なる最高出力のモーターを使い分ける【スバル・ソルテラ(パワーユニット解説)】

FWDとAWD、2種類の駆動方式を用意するスバル・ソルテラ。ユニークなのは、駆動方式によってモーターの最高出力を使い分けていること。そこには走りに対するスバルらしいこだわりが込められていた。 TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto)

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雪上なのに自由自在! 電動AWDの恐るべきポテンシャルを体感【スバル・ソルテラ(試乗インプレッション)】

発売前のニューモデルの試乗会といえばサーキットやテストコースが定番。しかし、スバルがソルテラ(プロトタイプ)の試乗会に選んだ舞台は雪上だった。なぜ、わざわざ雪の上で? そんな疑問は、ソルテラで走り出したら消えていった。スバルの制御技術が盛り込まれた電動AWDは、グリップの低い雪上でその真価を発揮した! TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto)

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これは広い! 身長180cmでも後席の足元は余裕のスペース【スバル・ソルテラ(パッケージング解説)】

2022年年央の発売が予定されているスバル・ソルテラ。そのパッケージングはEVならではのもの。特に180cmの乗員が座っても余裕たっぷりな後席の足元空間にはビックリだ! TEXT●安藤 眞(ANDO Makoto)

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それは2WDとAWDの作り分け方だ。2WD仕様は、フロントに150kWのモーターを搭載して前輪を駆動するFWD、一方のAWD仕様は、前後に80kWのモーターを搭載して前後輪を駆動する。

それのどこが興味深いのかといえば、まず2WDを前輪駆動としたことだ。理由については、3月15日発売のMotor Fan illustrated 誌 vol.186号42ページ以降に詳しいが、BEVとFWDの相性は良くない。ひとことで言えば「前軸重が足りない」のである。

モーターファン・イラストレーテッド 186号より。42ページから「後輪駆動とは何か」を解説しています

BEVのコンポーネントでもっとも重たいのは、走行用バッテリー。ミドルサイズのクルマなら、500kg程度はある。しかもエネルギー密度が小さいため、搭載に場所を取るし、可燃性の電解液を使用しているため、衝突から保護する必要がある。これらの要件を満足できる搭載場所は、ホイールベース間に限られる。するとその時点で、前後重量配分はほぼ50:50になる。前輪駆動にするなら、坂路発進性能や旋回加速性能の都合上、前軸重は60%以上、欲しいところだが、これではフロントにモーターを搭載しても、60%を確保するのは難しい。実際、Solterraの2WD仕様の前後重量配分は約56:44となっている。

上:bZ4X/下:Solterra

既存のモデルとプラットフォームを共用するならともかく、Solterra/bZ4Xは専用設計。ならば2WD仕様はRRにするという選択もあったのではないか、と率直に聞いてみたら、下記のような回答をもらった。

「モーターの特性を本当に生かしたいと思ったら、当然RRだと思います。それでも僕らがFFにしたのは、普及させることを優先したためです。ほかのメーカーさんには、リヤにモーターとインバータを置き、充電器を前に置いているものもありますが、そうすると1本3kgぐらいある高電圧ケーブルが車両の前後を行ったり来たりすることになり、コストと重量が増えてしまいます。『ならばリヤに全部まとめれば』とすると、荷室が狭くなったり、後席が高くなったりと、いろいろな弊害が出てくる。むしろフロントにぜんぶまとめてしまえば、ケーブルが行き来する無駄はないし、キャビンと荷室はしっかりと確保できます。ご指摘の課題は理解しているのですが、商品として総合的に見た場合、使い勝手の点でも価格の点でも、FFのほうがお客様に受け入れて貰いやすいだろうと考えました」

“内燃機関+トルクコンバータ”という組み合わせでは、低μ路での坂路発進制御はあまり緻密にはできない。だからこそ、これまでは「FF車の前軸重は60%以上欲しい」というのが常識とされてきた。しかし、電気モーターの精密制御とブレーキLSDを組み合わせれば、もう少し追い込める可能性はある。フル積載した場合に不利になる点は否定できないとはいえ、低μ路での使用機会が多いユーザーにはAWDも用意されているわけで、不都合ならそちらを選べば良いだけだ。

もうひとつ興味深い点は、AWDの仕立て方。FF仕様があるのだから、そこにリヤモーターをアドオンするという手法もあったはず。そうすればAWD専用のフロント駆動ユニットは起こさなくて済む。

しかし、2WDは前150kWで十分、走る仕様。そこにリヤモーターをアドオンするとなると、「トラクション性能的には十数kWで十分」となってしまい、操安性制御には能力が足りない。だからといって、前150kWに後80kWを足したのでは、前が使い切れずに、無駄に重く高コストになる。制御の自在性という点でも、前後の出力バランスは50:50に近いほうが融通が利く。

ローターやステーター、ギヤトレーンなどは、前後で共用することでコストは抑制できるし、安易な手法を取るよりも、電動AWDの可能性の高さを生かしたほうが、EVであることの魅力も訴求できる。bZ4X/Solterraの駆動方式は、2WDもAWDも周到に考えられたものなのだ。

連載 安藤眞の『テクノロジーのすべて』

テクノロジー 2022.12.19

ヤマハの四輪! ROVをラフロードで存分に乗ってみた(Yamaha Wolverine)——安藤眞の『テクノロジーのすべて』第77弾

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トヨタbZ4X/スバルSolterraの駆動方式を考える——安藤眞の『テクノロジーのすべて』第75弾

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ホイール締結、ボルトがいいのか、ナットでもいいのか。——安藤眞の『テクノロジーのすべて』第73弾

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