重くなってはいけないクルマ:トヨタ・ヴィッツとホンダ・フィットの歴代を比べてみる

街中を軽快に走り回るBセグメント車は、重くないほうがいいのが当たり前。しかし機能は省きたくない。中身はだんだん充実しながら大きさと重さは変わらずという傾向が、ここに挙げる2台からは見て取れる。

モーターファン・イラストレーテッド vol.162「軽量化の正体」より一部転載

 クルマは年を経るごとに大きく重たくなる傾向にあるのはご承知のとおりだが、大きくなってはいけないクルマというのも存在する。想像しやすい筆頭が軽自動車。ただしこの場合はサイズの上限は超えないものの、重くなってきたのは近年の新型車を想像していただければわかるだろう。軽自動車は車検時の重量税に登録車のような重量区分がないことが一因になっていると思われる。

 その登録車、とくにユーザーのコスト意識が高い小型車については、0.5t以下7500円、1t以下15000円、1.5t以下22500円──という具合に金額がかさんでいく(3年車検、本則税率)。いわゆるリッターカーでは、あり得ない話ではあるが1.5tを超えたら商品性を大きく落としてしまう。しかし近年の快適装備や安全機能を「小さいからつけない」というわけにはいかず、これらの小型車は工夫を凝らして「高機能だけど重くならない」を実現している。

トヨタ・ヴィッツ/ヤリスの例。
初代は小さなボディサイズで軽量、登場時には1.0L4気筒のみの設定で4WD仕様がなかったことも軽かった理由だろう。この初代ヴィッツのインパクトは大きく、多くのフォロワーを生み出すことになった。二代目への移行時には4WDを設定、エンジンも4種をそろえる。衝突性能を高めたことから寸法拡大と重量増となった。三代目は2014年と17年にマイナーチェンジが施され、とくに17年にはハイブリッド仕様が追加されている(最大1110kg)。四代目は最軽量車が大きく軽量化、装備の面から考えても相当の工夫が凝らされたことが窺える。二代〜四代の最軽量車はすべて1.0L3気筒で、どんどん軽くなっている。
(車両重量と装備の有無はデビュー時のカタログから。●は全車標準装備、△は一部グレードに採用、OPはオプションで選択可、×は設定なし)
ホンダ・フィットの例。
登場当初から4WD仕様を設定。ヴィッツに比べて重量が嵩むのはそれが理由で(全長も長いが)、FWD仕様で数字を拾えば980〜990kgという具合。パワートレーンは1.3l+CVTのみで登場。二代目で全幅1695mmに拡幅したのはヴィッツと同様。2010年のマイナーチェンジ時にハイブリッドが投入され、重量は1130kg。三代目ではエンジンがすべてDOHC化される。ハイブリッドはIMAからi-DCDに刷新、重量は1080kgと軽量になった。四代目は最軽量車が100kg増加、パワートレーンに大きな変化はないので、構造と装備によるものだと思われる。ハイブリッドシステムもe:HEVに再度変更、同等グレード比較でやはり100kg増えている。

 ここに例としてとりあげた2台は近年のBセグメントの基本を作り上げたパイオニア。ともにグローバル市場で展開される。初代から二代目へのジャンプアップは少なくないものの、そこから代を重ねても著しい増加にはならず、しかし装備は充実していったことがわかる。近年の高機能化が制御によってなされ、大がかりなデバイスを必要としないことにも理由があるとは思われるが、高い耐衝突性能が求められ続けていることなどを考えれば、とにかく重くしたくないというエンジニアの執念が見えてくる。

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