パナソニック オートモーティブシステムズ、マツダとの共創で自動車ソフトウェア開発の新プロセスを確立

パナソニック オートモーティブシステムズは、自動車のソフトウェア開発に新プロセスをマツダとの共創で確立し、開発工数の大幅な削減を実現したことを発表した。この新プロセスはマツダCX-60国内向けモデルに搭載のコネクティビティマスタユニット(車載情報制御系システム)の一部に適用されている。

新プロセスは、従来は実機で行っていた開発を、シミュレーションで検証するMBD(Model-Based Development、モデルベース開発)の手法で実現した。MBDには、実機の試作にかかるコストや人員数、開発期間の削減といったメリットに加えて、シミュレーションで構成するモデルをさまざまに組み替え、多くのアイデアを容易に試せるなど、大きなメリットがある。

本開発プロセスの適用範囲の拡大により、パナソニックオートモーティブとマツダの両社はそれぞれ、さらなる開発効率化を目指すとともに、MBD推進センターなどと連携し、他自動車メーカー、自動車部品メーカー、ツールベンダーなどを巻き込んだ、業界における標準化活動を推進する方針を示している。これにより、モデルを用いた高度なすり合わせ技術を実現し、日本の自動車産業の国際競争力の向上に貢献していく。

開発の背景

自動車業界では、近年、車載情報制御系システムを中心として、ソフトウェアの大規模化が進み、抜本的な開発の効率化が求められている。これに対し、両社では、モデルベース開発による開発効率化が取り組まれてきた。マツダでは、モデルベース開発をSKYACTIVエンジンの制御に適用し、品質で約10倍の効果が得られている。また、先進安全運転支援システムであるi-ACTIVSENSEなどにも適用が拡大されており、パナソニックグループには電気自動車の電動パワートレイン開発に適用された例がある。

しかしながら、自動車のソフトウェア開発において、自動車メーカーと自動車部品メーカーのやり取りは、人の手で文章や図表を記載した仕様書が用られており、記述のあいまいさや不足などから、不具合や設計のやり直し等が発生する恐れがあった。

開発の概要

両社は、文章や図表で記載された従来の仕様書のやり取りではなく、仕様の振る舞いをシミュレーション可能な電子データを仕様書とする「モデル」でのやり取りによる開発に取り掛かった。個社で開発効率化を図るだけでなく、自動車メーカーの要求仕様の定義から、自動車部品メーカーにおける詳細な設計段階での設計、商用ソフトウェアへの自動コード生成までを、共同で一気通貫で実施するための開発プロセスを策定した。モデル化により、従来の課題である、あいまいさを排除した仕様の記述や設計段階でのシミュレーション検証が、両社間にまたがって実施可能となる。一連の取り組みにより、設計の手戻りを回避し、開発工数を2割程度削減できる見通しが示されている。

開発の詳細

  1. マツダ:要求仕様をモデルで設計・検証し、要求モデルとして自動車部品メーカー(パナソニック オートモーティブほか)に提示
  2. パナソニック オートモーティブ:マツダから要求モデルを入手し、自社開発ツールでモデル変換・検証
  3. パナソニック オートモーティブ:モデルの詳細設計・自動ソフトウェアコード生成

上記の開発をサポートする共通基盤として、下記の2点が構築されている。

  • マツダ側のツールとパナソニック オートモーティブ側のツールとの間で、互換性を保証した状態でモデルをやり取りするための共通仕様書(モデル交換仕様書)の策定と両社での共通ガイドライン化
  • 開発中のモデルを相互接続し設計検証可能なシミュレーション環境(共有検証ゾーン)

マツダは要求仕様をモデルで設計する際に、モデル交換仕様書に記載されたガイドラインにしたがって記載し、パナソニック オートモーティブが使用するツールでの動作を保証する。パナソニック オートモーティブは実物で動作するようにモデルの詳細設計を実施するとともに、その設計段階で共有シミュレーション環境を用いて検証する。これらの活動により、会社間にまたがる開発の手戻りを抑止し、高品質のソフトウェア開発を目指す。

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