ジェイテクト、遊星減速キャリア一体 「ウルトラ・コンパクト・デフ」 を新開発

遊星減速キャリア一体JUCDイメージ
ジェイテクトは、今後の電気自動車(BEV)の市場拡大を見据え、遊星減速キャリア一体「JTEKT Ultra Compact Diff.TM(以下「JUCD」)」を新たに開発したことを発表した、遊星減速ピニオンギヤと遊星減速キャリア、超小型デフ「JUCD」を一体化したものであり、同軸遊星式eAxleの更なる小型化・軽量化、ひいてはBEVの航続距離向上に貢献する。

遊星減速キャリア一体JUCDの開発経緯

自動車の電動化が進む中、インバーター、モーター、デフを含む減速機などを一体化させたeAxleと呼ばれる電動駆動システムの開発・採用が急激に拡大しており、より良いBEV実現のためにはその駆動源の心臓部であるeAxleの小型化・軽量化が求められている。モーターとデフがオフセット配置される一般的な3軸式eAxleに対して、それらを同軸上に配置する同軸式はeAxleの高さと前後寸法の小型化に有利であり、今後シェアの増加が見込まれている。

なかでもモーター軸に連結するサンギヤ、eAxleケースに固定するリングギヤ、それらとかみあいトルク分岐・合流させる複数の段付ピニオンギヤをもつ遊星減速式は、更なる減速機小型化と、ピニオンギヤを含むキャリアとデフの一体化が可能だが、一般的なベベルギヤ式デフではキャリア機能との干渉を避けるため並列配置となり、幅寸法の抑制が課題となっていた。
ジェイテクトは2022年8月に、従来のデフを超小型化したJUCDを開発したが、今回ジェイテクトグループが有する技術シナジーを活かして遊星減速キャリア一体JUCDを新開発。同軸遊星式eAxleの更なる小型化・軽量化に貢献することが可能となった。

開発品の特長と嬉しさ

①高トルク密度JUCDとの融合により、遊星減速キャリア一体デフの幅狭化、小型化・軽量化

通常デフと同等強度を確保しつつ、径と幅寸法の両方で小型化が可能なJUCDの特長を活かし、デフ外径を小径化することでキャリア機能との干渉を回避しつつ、デフ幅も短縮してキャリアの幅寸法内にオーバーラップ配置させている。
出力150kW級eAxle向けデフ単体としては、JUCDにより約25mmのデフ幅の短縮効果があったが、更に遊星減速キャリアとJUCDを高度に融合させることで、通常デフと組み合わせた遊星減速キャリアに対し約50mmの幅寸法短縮と、全体の小型化・軽量化が実現された。

また、デフハウジングを円筒形としてキャリア部と一体化し、トルク伝達時のハウジング変形・バラツキを抑制することで、複数ある遊星減速ギヤの歯当たりバラツキを改善し、減速機のNV性能確保に有利になっている。

②「JTEKT Ultra Compact Bearing™」、「JTEKT Ultra Compact Seal™」にて更なる幅寸法短縮を実現

同軸式eAxleの玉軸受取付け箇所に、ジェイテクトが開発した超幅狭軸受「JTEKT Ultra Compact Bearing (以下「JUCB」)」を採用し、さらにはシール部に幅短縮デフサイドシール「JTEKT Ultra Compact Seal (以下「JUCS」)」を取り付けることで、eAxle全体の幅寸法の一層の短縮を実現している。

遊星減速キャリア一体JUCDの断面イメージ

③高性能な遊星減速ピニオンギヤも供給可能

ジェイテクトは、eAxleなどにおける小型化・軽量化、高強度化、高効率化、低騒音化などのニーズにお応えするため、2021年に歯車事業を立ち上げ、自動車部品・軸受・工作機械の各事業で培った解析技術やモノづくり技術を融合することで、独自の3D歯面修整加工技術を確立した。こうしたジェイテクト独自のOnly One技術によって生み出した高性能な遊星減速ピニオンギヤを、JUCDなどの軸受とともに遊星減速キャリア一体JUCDに組み付け、供給することも可能となる。

今後の展望

世界の主要市場でBEVが増加傾向であり、eAxle小型化ニーズの高い、高出力車や4WD車を中心に同軸式eAxleも大幅に伸びると推測されている。代表的な出力150kWの同軸遊星式eAxleに、ジェイテクトが開発した遊星減速キャリア一体JUCD、JUCB、JUCSを適用した場合、eAxleのユニット幅を約70mm短縮、重量を約7kg低減の効果が試算されている。

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