NTN、業界最高水準の高負荷容量化を実現した「HA-C軸受」の自動車向け提案を開始

NTNは、独自開発した特殊熱処理技術「HA-C ※1」を深溝玉軸受に適用した「HA-C軸受」の提案を自動車市場などに向けて本格的に開始することを発表した。「HA-C軸受」は、業界最高水準の高負荷容量化を実現する「HA-C」の適用により、軸受の小型・軽量化を可能としている。

開発の背景

「HA-C軸受(左)」と従来品(右)の寸法比較

「HA-C」は、材料に硬く微細な析出物を多数分散させる手法などにより、極めて高い表面硬さを与えることで高負荷容量化を実現するNTN独自の特殊熱処理技術である。

本技術を適用した「HA-C軸受」は、従来品と同等の寿命を確保しながら、軸受の外径を約15%小型化、幅寸法を約30%小型化、質量を約55%軽量化※2することが可能となり、燃費・電費向上を目的としたe-Axleやトランスミッションなど各種自動車の駆動装置に使用される軸受の小型・軽量化ニーズに対応する。

また、燃費・電費向上に向けて、駆動装置に使用される潤滑油は、摩擦抵抗を抑えるため低粘度化する傾向にあるが、同環境下では、軸受の各部品同士が直接接触しやすくなるために、軸受の寿命低下や摩耗が起こりやすくなる。さらに、駆動装置内の異物が軸受に侵入して軸受を損傷させる可能性もあるが、「HA-C軸受」は長寿命化に加えて耐異物性と耐摩耗性も高水準で実現しており、これらの苛酷な使用環境にも対応する。

平行軸e-Axleにおける適用例(赤丸部分)

NTNでは、2024年5月に本技術の開発を発表して以来、市場から「HA-C」の適用による軸受の小型・軽量化や長寿命化に関する問い合わせや要望が多数集められ、本技術を適用した軸受の量産に向けた準備が進められてきた。今回の性能検証などを重ね、本格的な「HA-C軸受」の提案に至った。

NTNは、「HA-C軸受」を、e-Axleをはじめとする各種自動車向けアプリケーションの小型・軽量化や効率化などに最適な商品として提案を進め、自動車のさらなる省エネルギー化に貢献していく。また、小型・軽量化や耐摩耗性などの特長を活かし、自動車以外にも幅広い産業向けの商品への適用を目指した開発・提案も進められる。

本商品は、5月21日~23日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展2025 YOKOHAMA」に出展される。

製品の特長

1. 高負荷容量 静的負荷容量2倍、重荷重条件における転動疲労寿命が8倍以上※3に向上。
高負荷容量化により、小型・軽量な軸受への置き換えが可能
(置き換え例:軸受外径 約15%小型化、幅 約30%小型化、質量 約55%軽量化※2)
2. 耐異物性 異物混入潤滑下における転動疲労寿命が4倍以上※3に向上
3. 高温寸法安定性 環境温度150℃における経年寸法変化率を1/2以下に抑制
4. 耐摩耗性 摩耗量を1/300以下に低減※4

用途

e-Axle、トランスミッション、コンプレッサーなど

【注釈】

  1. HA-C:High Antiwear and Capacity(高い耐摩耗性と負荷容量)
  2. カタログ標準シリーズの場合。特殊設計でさらにサイズダウン可能。
  3. 性能検証の追加により開発発表時から数値を上方修正。
  4. 油膜が形成され難い潤滑条件におけるNTN社内試験結果に基づく。

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