足まわりや操舵性能は好感触 HEVもPHEVも走りは◎

セダンをやめようというところからスタートし、リフトアップしたSUVを主体に4種類の個性を揃えた16代目クラウンの中でも、スポーツはひときわ異彩を放って見える。

エクステリア

ショートオーバーハングに加え、大きく張り出した踏ん張り感のあるリヤフェンダーがグラマラスなシルエットを構築。ピアノブラックのリヤバンパーが後ろ姿を引き締めている。最小回転半径は5.4m。

全長とホイールベースを縮めてオーバーハングを短くするとともに、大きなタイヤを四隅で踏ん張らせたフォルムには、独特の凝縮感と緊張感がある。それを表現するために欠かせなかったという凝った造形のリヤフェンダーは、特別な工法と最新のシミュレーション技術を駆使して実現したもので、コンセプトカーがそのまま出てきたようなスタイリングには、20代の若いデザイナーが深く関わっているという。インテリアもクロスオーバーと共通性の高い構成ながら、大胆なアシンメトリーのカラーコーディネートなどにより、スポーティでスペシャルな雰囲気を上手く演出している。

乗降性

ハッチバックを採用しており、スタイル重視で多少割り切ったところもあると開発関係者は述べていたものの、狭くて不便と感じることはないであろう広さは確保されている。リヤシートを前倒しすると位置は高めながら荷室のフロアとほぼフラットになるのも重宝しそうだ。パワートレインは定番の2.5ℓのHEVを基本に、もうひとつ何か特色のあるものを用意するという方針に則り、モーターを駆使してキビキビと走れるようにするため、PHEVが組み合わされることとなった。エンジンを掛けることなく最大で90㎞の距離を走ることができて、急速充電にも対応している。

インストルメントパネル

水平基調のインパネだが、ドアトリムまでの連続感のある造形とワイドなセンターコンソールが心地良さを醸し出している。左右独立式オートエアコンの操作部やステアリングスイッチなど操作系をゾーニングしたすっきりした配置も特徴で、12.3インチのコネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオは全車標準で装備。

よりパワフルで瞬発力のあるPHEVの走りも印象的だが、HEVもかつてのTHSからは想像できないほどリニアなレスポンスを実現していることに感心する。硬いだけがスポーツではないことを追求したという足まわりの仕上がりもなかなか妙味だ。路面からの入力を上手くいなすためにサスペンションの摩擦を低減し、乗り心地が硬くならないようにした。「AVS」と呼ぶ電子制御サスペンションを装備したPHEVは、よりしなやかでよく動きながらもフラットで安定した姿勢を実現している。

居住性

ホイールベースとオーバーハングが短めにされたことで、基本性能として回頭性が高まっている上に、後輪を操舵する「DRS」と、左右の後輪のベクタリング機構を備えた4WDシステムにより応答遅れのない俊敏なハンドリングを追求したと伝えられるとおり、一体感のある走りを実現している。HEVも十分に良くまとまっているが、より回頭性の良さを強調したPHEVの方が俊敏さが際立ち、コーナリング時のロールも抑えられていて、乗り心地が良い上に意のままに操れる感覚が高い。

うれしい装備

縦置きワイヤレス充電「おくだけ充電」を標準装備。走行時に揺れても充電が維持しやすいのがうれしい。また、センターコンソール前部にふたつ、後部にふたつ充電用USB端子(Type-C)も用意する。
PHEVは急速充電、普通充電に対応。前者は満充電の約80%までは約38分間、後者は200V/30Aで約3時間半で満充電になり、90㎞のEV走行を可能にするほか、合計1500Wまでの給電にも対応。
月間販売台数     3100台 (24年9月~25年2月平均値)
現行型発表      23年10月( PHEV追加 23年12月)
WLTCモード燃費    21.3㎞/ℓ ※「SPORT Z」  

ラゲッジルーム

この走りを実現するために、PHEVでは開発の最終段階でサーキットを走り込んでハンドリングを煮詰め直したのだという。ブレーキフィールも回生していることを感じさせないほど自然で、フロントに対向6ピストンのキャリパーを装備したPHEVだって重くても不安を感じさせることもない。見て良し、乗って良し、所有して良し。ほかにはない独特の世界観をもった刺激的な存在に違いない。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.167「2025-2026年 国産&輸入SUVのすべて」の再構成です。

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