基本情報

Honda WN7

Honda WN7は、EICMA 2024で公開された「EV Fun Concept」の量産モデルだ。2025年9月に欧州で名称や主要諸元が発表され、同年11月のEICMA 2025で披露された。

車名の「WN7」は、Wが「Wind」、Nが「Naked」を意味する。7は、ホンダが社内で設定する出力クラスを示す数字であり、WN7がホンダの電動FUNバイクにおける新たなシリーズの出発点であることを示している。

WN7の特徴は、電動モーターサイクルでありながら、日常の扱いやすさとスポーツライディングの楽しさを両立している点だ。最高出力は50kW、最大トルクは100N・mで、出力は600ccクラス、トルクは1000ccクラスのガソリンエンジン車に匹敵する性能とされる。

一方で、開発では単に高出力や長航続距離を追うのではなく、軽快さや取り回しのよさも重視された。バッテリー容量は9.3kWh、一充電走行距離は140km(WMTC2-2)で、都市部での日常移動やスポーツライディングを想定したバランスとなっている。

欧州仕様では、標準仕様のWN7に加え、A1ライセンス向けの11kW仕様も設定されている。

項目WN7
全長×全幅×全高2,156 × 826 × 1,085 mm
ホイールベース1,480 mm
最低地上高139 mm
シート高800 mm
車両重量217.5 kg
原動機種類電動モーター(水冷式)
最高出力50 kW(定格出力:18 kW)
最大トルク100 N・m
動力用主電池リチウムイオンバッテリー(容量:9.3 kWh)
一充電走行距離140 km(WMTC2-2)
充電時間(普通充電)2.4時間(Mode3/0〜100%充電まで)

WN7は、数値だけを見ると中量級の電動スポーツバイクに見える。しかし、重要なのは電動化によって生まれたパッケージングの自由度を活かし、スリムな車体と扱いやすいライディングポジションを実現している点である。

バッテリーを車体中央に配置し、前後をつなぐ従来型のメインフレームを持たないフレームレス構造を採用することで、重量物を中心に集めながら、スリムで軽快な車体を目指している。

Honda WN7が登場するまで

WN7は、ホンダが電動二輪のFUN領域に本格的に踏み出すモデルとして登場した。

これまでホンダの電動二輪は、街中での移動を想定したコミューター領域が中心だった。一方、WN7は日常移動だけでなく、ライダーが走る楽しさを味わえる電動モーターサイクルとして開発されている点が特徴だ。

その背景には、ホンダが進める二輪製品の電動化戦略がある。ホンダは2040年代にすべての二輪製品でカーボンニュートラルを実現することを目標としており、WN7はその流れのなかで投入される本格的な電動FUNモデルとなる。

Honda WN7の魅力

Honda WN7の魅力は、電動モーターサイクルならではの新しさと、ホンダが長年培ってきた二輪車づくりのノウハウを両立している点にある。

単にガソリンエンジン車を電動化したモデルではなく、静粛性、滑らかな加速、車体構造、操作感、デザインまで含めて、電動時代のFUNバイクとして仕立てられている。

電動ならではの静粛性

第102回東京箱根間往復大学駅伝競走で、往路1区の先導車両として走行したWN7

WN7の大きな特徴のひとつが、電動モーターサイクルならではの静粛性だ。

ガソリンエンジン車では、エンジン音や排気音が走行体験の大きな要素となる。一方、WN7は騒音や振動が少ないため、走行中に風の音や周囲の気配を感じやすい。

グランドコンセプトである「Be the Wind」は、この電動ならではの体験価値を象徴している。ライダーが風や街の空気を感じながら、静かで滑らかな走りを楽しめることは、WN7ならではの魅力といえる。

WN7の静粛性を象徴する事例として、第102回東京箱根間往復大学駅伝競走での走行がある。

2026年1月に開催された同大会では、Honda WN7の白バイ仕様が往路1区の先導車両として走行した。EVならではの静かでスムーズな走りにより、沿道の観客やランナーの集中を妨げにくい先導車としての可能性を示した。

力強い走行性能

走行性能もWN7の重要な魅力である。

WN7は、最高出力50kW、最大トルク100N・mを発揮する電動モーターを搭載する。出力は600ccクラス、トルクは1000ccクラスのガソリンエンジン車に匹敵するとされ、発進時から力強い加速を味わえる。

電動モーターは、低回転域から大きなトルクを発生しやすい。そのため、街中での発進や加速でも反応のよさを感じやすく、信号の多い都市部でも扱いやすい。

また、WN7は単に速さだけを追求したモデルではない。ホンダが重視したのは、電動でも「操る楽しさ」を感じられることだ。走る、止まる、曲がるというバイクの基本性能を磨き込み、日常使いとスポーツライディングの両方を楽しめるモデルとして開発されている。

フレームレスシャシーによるスリムな車体構成

WN7の車体構造では、フレームレスシャシーが大きな特徴である。

従来のバイクのように前後をメインフレームでつなぐのではなく、バッテリーパックを車体構造の一部として活用することで、スリムなパッケージングと軽快なハンドリングの両立を図っている。

バッテリーを車体中央に配置することで、重量物を中心に集めやすくなる。これにより、電動バイクでありながら車体のまとまりを高め、扱いやすいライディングポジションや自然な操作感につなげている。

217.5kgという車両重量を持ちながらも、WN7が軽快な印象を目指しているのは、こうした車体設計による部分が大きい。

ベルトドライブと減速度セレクターによる新しい走行感覚

WN7は、駆動方式にベルトドライブを採用する。

チェーンドライブに比べて摩擦音を抑えやすく、電動モーターの静粛性を活かした滑らかな走行感覚に寄与している。駆動系のノイズを抑えることで、WN7が掲げる「風を感じる」ようなライディング体験にもつながっている。

また、減速度セレクターもWN7らしい装備である。回生ブレーキの強さを複数段階で切り替えられるため、スロットルオフ時の減速感をライダーの好みや走行シーンに合わせて調整可能だ。

回生を強めれば、スロットル操作だけで加減速をコントロールしやすくなる。一方で、回生を弱めれば、滑空するような走行フィールを楽しみやすい。ガソリンエンジン車とは異なる操作感を味わえる点も、WN7の魅力である。

取り回しを支えるウォーキングスピードモード

日常での扱いやすさを高める装備として、ウォーキングスピードモードも採用されている。

ウォーキングスピードモードは、停車中に微速前進・微速後退を行える機能で、駐車場や狭い場所で車体を動かす際に、ライダーの取り回しをサポートする。

電動バイクはバッテリーを搭載するため、車両重量が大きくなりやすい。WN7も217.5kgの車両重量を持つため、狭い場所での切り返しや駐車時には、こうした低速移動支援が実用面で大きな意味を持つ。

走行中の楽しさだけでなく、停車時や押し引きに近いシーンまで考えられている点は、WN7が日常利用を重視したモデルであることを示している。

EVらしさとネイキッドらしさを両立したデザイン

デザイン面では、EVらしさとモーターサイクルらしさの両立が意識されている。

WN7は、バッテリーやモーターといった電動車ならではの構成要素を隠すのではなく、構造そのものをデザインの一部として見せている。ガソリンタンクやエンジンが存在しないEVだからこそ、従来のバイクとは異なる造形が可能になっている。

フロントまわりでは、横一文字のライトバーを備えた表情が印象的だ。黒を基調にゴールドをアクセントとしたカラー表現も、WN7の先進性と上質感を際立たせている。

ネイキッドモデルらしい機能的な見せ方を残しながら、電動バイクならではの新しさも表現している点がWN7のデザインの魅力だ。

WN7は、環境対応のためだけの電動バイクではない。静粛性、滑らかな加速、回生ブレーキによる新しい操作感、フレームレス構造によるスリムな車体、ホンダらしい操る楽しさを組み合わせた、電動時代のFUNバイクである。

まとめ

Honda WN7は、ホンダが電動FUNバイク領域へ本格的に踏み出すための重要なモデルである。

特徴は、電動ならではの静粛性やスムーズな加速だけではない。フレームレスシャシー、ベルトドライブ、減速度セレクター、ウォーキングスピードモードなどにより、日常の扱いやすさと操る楽しさを両立している。

WN7は欧州で展開が進められている一方、日本国内での発売は現時点では未定である。そのため、今後は欧州市場での受け入れに加え、日本導入の可能性やグローバル展開の動向にも注目したい。

WN7は、ホンダの電動二輪における新しい出発点である。単なる電動化モデルではなく、電動だからこそ実現できる走行体験を提示する1台として、今後の電動モーターサイクル市場における存在感を高めていく可能性がある。