歩くのを止めたら即、死!

戦争によって国家が分断された近未来のアメリカで、国をあげて開催される競技“ロングウォーク”。ただひたすらに歩き続けるだけで破格の賞金と願いを一つ叶える権利を獲得できるこの祭典に、選ばれし50人の若者が挑戦します。競技のルール自体はシンプルなのですが、参加者には休息も睡眠も許されません。しかも“警告”を3つ受けると<即死>という地獄の一本道を、ひたすら進んだ先に待ち受けているのは……?
巨匠スティーヴン・キングの事実上の初長編作でもある原作小説が発表されたのは1979年。原作も「近未来のアメリカ」を舞台にしていますが、この映画版ではその当時の“近未来”を再現したのか、スクリーンに映るもの全てがノスタルジーを感じさせつつ、いわゆるレトロフューチャ―とも異なる「いつかあり得たかもしれない終末世界」がさりげなく表現されています。

そんな本作に登場する車たちは、まさに「70年代の近未来」を象徴するクラシックカーばかり。映画冒頭、レイを見送る母親が乗るのは70年代のフォード・マーヴェリック。複雑な家庭の事情がありそうですが、別れ際の母の悲壮な涙がこの競技の苛烈さを物語ります。そしてレイと同じく参加者のピート(デヴィッド・ジョンソン)は、こちらも70年代のフォードF-100(ピックアップ)でスタート地点まで来たようです。
マーク・ハミル演じる“少佐”ほかゲームを仕切る軍人たちが乗るのは、公道でも走りやすい、ずんぐりむっくりとした小型の軍用車たち。1940年代カナダ産のC15TA装甲トラックや、1970年代まで製造されていた英国軍のフェレット装甲車、そして戦時には大型ライフルを積むこともあった1950~70年代製造のJeep M-38A1(ウィリスMD)などが、少年たちを四六時中付け狙います。

そう、本作の最も怖いところは、ほかのデスゲーム映画のように潜んで休むことも助けを乞うこともできない、むき出しの生と死がまだ成長過程の精神と肉体にのしかかる、動悸がするほどの不条理。その極限状況で育まれた“絆”は、いつかこの狂った世界を変えることになるのでしょうか……。
