連載

【1代限りで消えた車名】

スズキのセダン?

日本におけるスズキ車のイメージは主に軽自動車であり、普通車でもカルタスやスイフトといった小型のハッチバックモデル、そしてジムニーが中心。

スズキの代表的グローバルモデル「スイフト」は現行の4代目で世界累計1000万台を販売した。

とはいえ、スズキもセダンをラインナップに持っていたことはあるが、カルタス・クレセントセダンやSX4セダンなど、ハッチバック車の派生であったことの方が多い。

2006年に登場したコンパクトハッチバックのクロスオーバー「SX4」。
SX4は2007年にセダンを追加。ハッチバックモデルに独立したトランクを追加してセダンに仕立てるのは、東南アジアを主戦場とするクルマにはよくあるパターン。

しかし唯一、派生モデルでは無かったセダンが存在した。それが「キザシ」だ。

元はクロスオーバーなコンセプトモデル

「キザシ」の名前が最初に世に出たのは2007年9月の「第62回フランクフルトモーターショー」に展示された「コンセプト・キザシ(1)」だった。これはクーペライクなステーションワゴンスタイルで注目を集めた。

キザシ・コンセプ(1)。2.0Lディーゼルターボエンジン+6速MTにi-AWDを改良した4WDを組み合わせた。

続いて2007年10月の「第40回東京モーターショー」ではコンセプト・キザシをベースにした「コンセプト・キザシ2」を発表。こちらはフォルムこそ同様だが、デザインはSUVテイストになっている。

キザシ・コンセプト2。スズキ最大となる3.6Lエンジンに6速ATを搭載し、駆動方ほうは同じく4WD。

さらに2008年3月の「ニューヨーク国際オートショー」では「コンセプト・キザシ3」を発表。これまでとは一変してセダンボディとなった。

セダンボディとなり、市販モデルに近い形となったコンセプト・キザシ3。しかし、パワートレインはキザシ2を踏襲していた。

そして2009年7月、米国スズキが生産市販車としてのキザシを発表。グローバルモデルとして、2009年10月に日本、2009年12月に北米で発売。2010年にはヨーロッパとオーストラリア、ニュージーランド、中国でも販売され、オーストラリアで初めて販売されるスズキ車となった。また、2011年2月にインドでも発売。なんとモデル末期の2015年2月にはパキンスタンでも販売された。

2010年4月の「北京モーターショー」に出品されたキザシスポーツ。

グローバルモデルとして華々しくデビューしたキザシであったが、なんと日本では受注生産車扱いだったのは驚きだ。

ヨーロッパテイストなスポーティセダン

コンセプト・キザシ3でより市販車に近いセダンボディ発表されたものの、1と2はワゴンボディだった。とはいえ、クルマの開発は数年がかりであることを考えれば、元々開発が進んでいた新型セダンにコンセプトモデルの名を付けたのだろうと思われる。

スズキ・キザシ

キザシという車名は、スズキが「世界の市場に向け、新しいクルマ作りに挑戦する」という想いが込められており、その由来はもちろん「兆し」だ。グローバル商品であるクルマでは珍しい日本語車名が与えられたわけだ。

キザシのインテリア。発表時の資料では「精巧で緻密なデザインのセンターコンソールやサテンメッキのインパネ加飾など、スポーティーでありながら工芸品を思わせるインテリア」とされている。

エンジンはエスクードにも搭載された最高出力138kW(188PS)・最大トルク230Nm(23.5kgm)を発揮するJ24B型2.4L直列4気筒DOHC16バルブ。トランスミッションはジャトコ製JF011E型CVTのパドルシフト付き。海外モデルには6速MTもあった。

J24B型2.4L直列4気筒DOHC16バルブエンジン。最高出力138kW(188PS)・最大トルク230Nm(23.5kgm)を発揮し、エスクードに搭載しているものより22psほどパワーアップしている。

足まわりはフロントがマクファーソンストラット式、リヤにマルチリンク式のサスペンションを採用。駆動方式はFFを基本に、スズキの電子制御4WDシステム「i-AWD」も用意された。

キザシのサスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リヤがマルチリンクを採用。欧米で味付けしたスポーティなセッティングとされた。

駆動方式の違いを除けば実質ワングレードで、FFが278万7750円、4WDが299万7750円という価格設定だった。
なお、2010年にアクティブクルーズコントロール&プリクラッシュセーフティシステムのセットがメーカーオプションで追加された以外、モデルライフ内でマイナーチェンジや仕様変更は無く、特別仕様車も用意されなかった。

パドルシフトを備えたキザシのステアリング。

「キザシを見たら警察だと思え」はホント?

スズキのモデルライフである2009年~2015年はすでにセダン市場は急速に縮小しており、キザシの販売台数は伸び悩んだ。最終的に2015年10月に生産終了、2015年12月に販売終了となった(登録は2016年4月まであったようだ)。国内登録台数は3379台と言われるが、受注生産車では然もありなん。

スズキ・キザシ

そしてキザシは2013年からスズキで初めて警察の捜査車両として採用されている。2014年からはいわゆる黒白のパトカー仕様も導入されたようで、採用台数は908台とされる。これは実に全登録台数の約27%にあたり、日本の全キザシの1/4以上が警察車両だったことになる。

警察車両を除く登録台数が2471台なので、平均月販台数は2009年10月から2016年4月までとして約31台では、まとめて使われている警察車両の方が目立つのも頷ける。

スズキ・キザシ

なお、現在(2026年2月)も警察車両として残っているようだが、捜査車両ではスズキの「S」エンブレムが外されているケースがある。これはキザシがあまりにレアなためスズキのセダン=警察の捜査車両とバレてしまうことを危惧したからだろうか?(捜査車両ではなおさら)

「フロントシートはダブルステッチを取り入れた本革仕様で、サポート性を高めながらも圧迫感を感じさせない形状」とし、フラッグシップらしい上質感が与えられている。

スズキ最後のオリジナルフラッグシップ

キザシの名ははコンセプトモデルを重ねて満を持して誕生したスズキのフラッグシップ車に与えられたが、その意欲やクルマの出来に関わらず、セダンの退潮が著しい市場では残念ながら成功には至らず1代限りでその名跡は途絶えることになった。これをもって、スズキは日本でのセダンの販売も終了することになった。

そして、キザシは今のところスズキの最後のオリジナルフラッグシップ車となっている。キザシ退場後は国内のフラッグシップ車はOEM車のランディが務めている。

現行ランディは2022年にデビュー。これまでの日産セレナのOEMからトヨタ・ノアのOEMに変わった。

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