S55/ S65
初のカタログモデルとなったSクラスAMG

様々な新規軸を盛り込んだものの、威圧感のある重量級のボディやV12エンジンから「環境破壊車」のレッテルを貼られ、商業的には失敗に終わってしまったW140型「Sクラス」。その反省をもとに1998年に登場したW220型は、全長5045mm、全幅1855mm、全高1445mm、ホイールベース2965mmとひと回り小型化。さらにアルミ、プラスチック、高張力鋼板などを使用するなど全体的に軽量化、効率化を徹底した結果、全長3085mmのロング仕様でも1830kgと大幅なダイエットに成功しつつ、安全性の向上やボディ剛性の強化も図られている。
そのうえでフロント4リンク、リヤマルチリンクに刷新したサスペンションには、エアサスとアダプティブダンピングシステムを組み合わせたエアマティックを採用してハンドリングと乗り心地の両立を高いレベルで実現。またSクラスとして初めて全輪駆動の4マティックが追加されたほか、デュアルインジェクションとなった5.0リッターV8エンジンには、オプションでシリンダーをカットして燃費を改善するアクティブシリンダーを用意するなど、環境性能へのさらなる配慮もなされていた。
そんなW220型Sクラスのもうひとつの特徴が、AMGのコンプリートカーがカタログモデルにラインナップされたことだ。実はW140型をはじめ、これまでもSクラスのAMG仕様は存在していた。しかしながら、本国ではメルセデス・ベンツのカタログモデルではなく、AMGの受注生産的な扱いとされてきた。
搭載されるエンジンは5.4リッターV8

W220型Sクラスでは、そのスポーティグレードとしてまず1999年に「AMG S55」「S55 L」の2モデルをラインナップした。搭載されるエンジンは、「E55」と同じ5439ccのV8SOHC自然吸気のM113 E55型で、最大出力360PSを発生。それにあわせて、エキゾーストパイプ径の拡大とサイレンサーの改良により騒音レベルと排圧を低く抑え、エミッションコントロールに対応したAMGスポーツエキゾーストシステムが組み合わされている。
一方車体側は、フロントスポイラー、サイドスポイラー、18インチのAMGホイールが装着されたほか、ブレーキも強化されてフロントに14インチ、リヤは13インチのベンチレーテッドディスクが奢られた。そのほかオプションでアクティブボディコントロールも用意されていた。
そして2002年には排気量はそのままにスーパーチャージャーを装着したM113 55MLユニットを搭載。これにより最高出力は500PS、最大トルクは700Nmと大幅なパフォーマンスアップを果たしている。また2002年には「S600」のロング仕様をベースに、444PSを発生する6258cc V12 SOHC自然吸気エンジンを搭載した「S63L」をヨーロッパとアジア市場で70台のみ販売した。
マイバッハと同じエンジンを搭載するS65も

その後、2003年からは最高出力612PS、最大トルク950Nmを発生する5980cc V12 SOHCツインターボM275型ユニット(「マイバッハ 57S」「同62S」に積まれたのと同じ)を搭載する「S65」が登場。シャシーはS55に比べるとラグジュアリー寄りのセットアップになっていたが、強大なパワーとトルク(本来なら1100Nmを発生するポテンシャルがあるのだが、ギヤの保護のため1000Nm以下に抑えられた)に対応するため、トランスミッションは5Gトロニック(5速トルコンAT)が採用されている。
いずれにしろ、AMG S55/ 65シリーズの登場によりメルセデス・ベンツはアルピナを含む「BMW 7シリーズ」に対してパフォーマンス的に優位に立つことができたが、これを機にラグジュアリーセダンのハイパフォーマンス化、パワーウォーズが激化していくことにもなった。

