
じつはかなり多い! 「バイクの時価額」の争い
損 保太郎(以下 保太郎)バイクは交通事故によって自動車と衝突した部位だけではなく、その後の転倒や滑走によって損傷範囲が広く全損扱いとなってしまうことがけっこう多いんだよ。
モン太 ほえ~。そうなんだモンな。ところでバイクが全損になるのか?ならないのか?の「線引き」はどうやって決めるモンか?
保太郎 一般的には修理費用がそのバイクの価値を超えてしまった場合、「経済的全損」と言うんだけど、賠償を受けることができる上限は「時価額まで」となってしまう。
また、原形を留めないほど大破した場合や、焼失してしまった場合など修理が不可能な場合を「物理的全損」と言う。この場合も賠償額の上限は時価額までだ。
モン太 時価額ということは被害事故にあったのに、修理代を満額支払ってもらえない場合が結構あるってことだモンな。せちがらいな~。ところで全損の場合の時価額ってどうやって算出されるモンか?
保太郎 保険会社ではオートガイド社が発行するレッドブック(中古相場を掲載した冊子)を参考にしたり、被害車両と同程度の中古車の平均価格で算出することが多いかな。
モン太 修理することはできないけれど、同等中古車両の購入金額程度は保証されるってことだモンな。
保太郎 そういうこと。事故で被害を受けた損害を”加不足なく復旧する”というのが賠償の基本となるからね。なので、ノーマル車両はそれほどトラブルになることはないんだけど、今回のテーマである旧車やカスタム車両となると……。
”価値”算出の「難しさ」と判例の「流動性」がトラブルの要因
保太郎 肌感として旧車やカスタム車両の場合、被害者と保険会社で時価額について揉めることが多い。その理由は賠償額の算出の難しさと、過去の「裁判例に流動性がある」ことが要因としてある。
まず旧車の場合、レッドブックに掲載がなく中古車市場から算出しようとしても程度の差によって価格の変動が大きかったり、プレミアなどで価格が新車時の数倍に高騰していることもしばしばある。そもそも中古市場に全く流通していない車両もあるしね。
そしてカスタム車両については、カスタムにかかった費用の算定が難しい。賠償額として上乗せされるのは、カスタムによってそのバイクの価値が増加した分となるため、それをどう判断し算定するのがとても難しいんだ。
モン太 えー⁉ かかった費用はまるまる賠償してもらえないモンか。
保太郎 残念ながらそうなんだよ。たとえば中古車販売サイトでのカスタム車両を見ても、そのカスタムにかかった費用がまるまる上乗せされているわけではなく、上乗せされているのは付加価値分になっていることと似ているね。
モン太 なるほど~。カンタンに算出できないってことだモンな。ところで「裁判例に流動性がある」っていうのは?
保太郎 たとえば、製造から30年経過した希少なモデル(新車価格500万円)の損害賠償請求に対して、「初度登録からの経過年数及び走行距離からして、既に車両としての客観的•経済的価値は相当程度低下している」として新車価格の一割に車両の程度を加味した金額の100万円が相当と判断している裁判例もあれば、12年落ちのハーレーダビッドソンの損害賠償請求では、「3000台のみが生産されている98年式ハーレーダビットソン誕生95周年限定記念モデルであり、一般量産車と比べてその価値は高い」として、購入価格の100万円を超える230万円を認めた事例もあるんだ。
モン太 なるほど~。難しいモン。
保太郎 何件か類似の判例を調べてみたけど、ポイントは客観的に見てその旧車やカスタム車の価値が、被害者や一部の愛好者の主観的な価値ではなく、世間一般の目線で客観的に見て価値があるということを立証できるか?という点にある。そこをクリアできれば旧車やカスタム車両の価値も含めて賠償を受けられるということだね。
モン太 そこが難しい気がするモン。
保太郎 そうだね、やっぱり交渉段階ではまとまらないことも多いよ。こういうバイクに乗っている人は、いざというという時に交渉を任せられる、弁護士費用特約を付けておくのがおススメだよ。

※ここでは一般的な自動車保険について解説しています。各社の約款や個別の事情により内容が異なる場合があります。
※この記事は月刊モトチャンプ2025年10月号を基に加筆修正をしています

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