ハイブリッドのRSグレードのみ、駆動方式はFWDと4WD

CR-V e:HEV RS

ホンダのグローバルモデルとして大きな柱となっているのが「CR-V」。1995年に誕生した初代から数えて、6代目となる現行モデルの登場は2022年だ。とはいえ、日本ではイメージの薄いモデルであったことも事実だ。

メイン市場である北米に合わせて大きくなったボディ(全長4700mm・全幅1865mm・全高1680mm)は日本市場ではユーザーを選ぶという判断は2022年段階では妥当といえるもので、日本には導入されなかったからだ。国内向けにはひと回り小さいZR-VによってSUVへのニーズをカバーするという戦略を理解する声も少なくなかったと記憶している。

しかし、ここ数年で国内マーケットの状況は変化している。多くの機械式駐車場に対応する全幅1850mm・全高1550mmというサイズを求める声はわずかながら小さくなっている印象だ。実際、国産SUV市場において1850mmという全幅を超えるモデルは、以下に示すように少なくない。

三菱アウトランダーPHEV:全長4720mm×全幅1860mm×全高1750mm
マツダCX-60:全長4740mm×全幅1890mm×全高1685mm
トヨタRAV4:全長4600mm×全幅1855mm×全高1680mm

そして、それぞれのモデルが存在感を示しているし、市場は受け入れている。2022年の状況と、2026年の市場環境は異なっている。

というわけで、ホンダはCR-Vを日本に投入する決断をした。

CR-V e:HEV RS BLACK EDITION

パワートレインは、2.0L 4気筒ガソリンエンジンに2つのモーターを組み合わせた上に、エンジン直接駆動をハイ/ローで行う最新のハイブリッドで、FWDのWLTCモード燃費は19.8km/L。

グレードはe:HEV RSと、装備を充実させたe:HEV RS BLACK EDITION。前者はFWDと4WD、後者は4WDだけの設定となる。「RS(ロードセーリング)」というホンダの伝統的なスポーティ仕様に絞っている点にも注目したい。

新型CR-Vメーカー希望小売価格
e:HEV RS:512万2700円(FWD)/539万2200円(4WD)
e:HEV RS BLACK EDITION:577万9400円(4WD)

なお、現行CR-Vについては、厳密には本邦初ではない。ご存知のように、2024年にe:FCEVという燃料電池仕様を限定的ながら国内投入しているからだ。もっとも燃料電池仕様は一般ユーザー向けとは言いがたく、リース販売のみだったことを考えると、実質的な6代目CR-Vの国内本格デビューといって差し支えないだろう。

ちなみに、燃料電池のCR-Vはアメリカ生産の輸入車だったが、新しいハイブリッドのCR-Vはタイで生産されている。

CR-V e:FCEV(2024年11月撮影)

スポーツ派には4WD、サルーン的なのはFWD

CR-V e:HEV RS BLACK EDITION

価格的に上級グレードとなるe:HEV RS BLACK EDITIONは、高速道路での車線変更のほとんどをアシストする機能を含む先進運転支援システム「ホンダセンシング360」や、ヘッドアップディスプレイ、前席シートベンチレーション、電動サンルーフといった装備によって差別化されている。

今回の試乗では、e:HEV RS BLACK EDITION(4WD)を高速道路メインで走り、ホンダセンシング360の実力を試すことにした。また、e:HEV RSについてはFWDの試乗車をチョイス、タイトなワインディングをメインに取り回し性の確認をメインテーマに試乗した。

それぞれの印象を報告する前に結論を書けば、RSの響きにふさわしいスポーティさを持っているのは4WD、そしてホンダSUVラインナップにおけるフラッグシップに期待する乗り心地や静粛性はFWDにアドバンテージがあると感じた。

では、それぞれの走りの印象をお伝えしよう。

e:HEV RS BLACK EDITIONに乗り始めて、最初にオッと感じたのは高速道路で合流する手前のゾーン。具体的には、ゆるく上りながらの左旋回から本線に向けてアクセルを踏み込んだときの自然なハンドリングが印象に残った。ミドル級SUVとは思えないナチュラルな挙動で加速していくのだ。

その理由は、洗練された電子制御にあった。

CR-Vの4WDは、前後をプロペラシャフトでつなぐメカニカル方式。先代は前後駆動配分が最大60:40だったが、新型では最大50:50まで可変させる制御となっている。後輪の駆動配分が大きくなっているということは、後輪荷重が増える加速時に、そのグリップを活かした駆動力を与えることができる。おそらく、こうした進化がコーナー立ち上がり区間における挙動のナチュラルさにつながっているのだろう。

後輪への駆動配分を増やすということは、同時に前輪の負担を軽減することにもなる。前後バランスの最適化による旋回能力向上が味わえるのは4WDのメリットである。RSという名前に期待するスポーツ性を求めるのであれば、新型CR-Vは4WD一択といえそうだ。

CR-V e:HEV RS

一般論でいうと、4WDより軽量なFWDは軽快なハンドリングにつなげる傾向がある。今回試乗したCR-Vについても、e:HEV RS BLACK EDITION(4WD)の車両重量1830kgに対して、e:HEV RS(FWD)は1750㎏と大人ひとりぶん以上も軽く仕上がっている。

たしかにワインディングに持ち込んだe:HEV RSのハンドリングはボディサイズを感じさせない軽快さがあった。すれ違いに気を遣うような狭い場所でも路肩まで余裕で寄せられる取り回しの良さも感じられた。

しかしながらCR-VのFWDには、それ以上の魅力がある。それがサルーン的な上質な空間を実現していることだ。

適度に重さを感じさせないことでスーッと走る印象があるし、プロペラシャフト由来のノイズや振動がないことも快適性においては有利。結果として、サルーン的な評価軸においてはFWD有利と感じたのだ。

現在、ホンダの国内向けラインナップにおけるフラッグシップモデルは、同じくタイで生産されるアコードとなるのかもしれないが、進化したハイブリッドのスムースネスにアドバンテージのあるCR-Vが、現時点のホンダ・フラッグシップとしてふさわしい走り味となっている。

さらにいうと、シートの出来栄えもCR-Vという名前から想像する以上だろう。グローバルモデルらしく前後ともサイズ、クッション性に余裕がある。全グレードが本革シートとなっている点も含めて、ここでもフラッグシップらしさを感じさせる。

CR-V e:HEV RS のパワートレイン
エンジン直接駆動をハイ/ローの2系統とした最新の2モーターハイブリッドユニット

ドライブモードをセッティングする楽しみもアリ

4つの項目についてセッティングの組み合わせを選ぶことができる

新型CR-Vのトピックスである、新しいハイブリッドシステムについて、ここで整理しておこう。

エンジンは2.0Lの4気筒で、発電用モーターと駆動用モーターを並行軸配置することでスペース効率を上げている。ホンダの2モーターハイブリッドといえばエンジン直接駆動モードを持つのが特徴だが、新型CR-Vではエンジン駆動力をハイ/ローの2系統で伝達するメカニズムを初採用しているのが最大の注目点だ。

従来はハイ側の直接駆動しかなかったのが、ローを加えることでエンジン直接駆動の領域を広げている。

具体的にいうと、ハイギアは5速相当(約0.7)のギア比となるためエンジン直接駆動は高速巡行時に限られるが、新設されたローギアは3速相当(約1.4)となり、街乗りのスピード域までエンジン直接駆動の範囲を拡大できる。また、エンジン直接駆動時にモーターアシストをすることで、エンジンの熱効率に有利な条件を維持したり、ドライバーの求める加速を実現したりしている。ハイ/ローのギアセットを持つことで、複雑な制御の幅が広がったともいえる。

ただし、ドライバーはこうしたメカニズムを意識することはないだろう。その時々で効率よく走れるようエンジンとモーターの駆動は瞬時に切り替えられているが、トルク変動もノイズもほとんどなく、運転していて気付くことはない。

メーターによって、バッテリーの電力を使ったモーター駆動なのか、エンジンで発電してモーターで駆動しているのか、エンジン直接駆動なのか、エンジン直接駆動にモーターアシストが足されているのかといった制御は可視化されているが、「余裕のあるパワートレインが、シームレスに駆動トルクを生み出している」といったフィーリングに仕上がっている。仮にメカニズムが理解できなくとも、その恩恵は十分に受けることができる。

シフトの隣にドライブモードを選ぶスイッチが置かれる

CR-Vのハイブリッドパワートレインのポテンシャルを味わいたいというならば、ドライブモードをフル活用することをおすすめしたい。

ボタン式シフトの左上に置かれたスイッチを操作すれば、SPORTモード、NORMALモード、ECONモード、SNOWモード、そしてINDIVIDUALモードを選ぶことができる。

INDIVIDUALモードで、ユーザーがセッティングできる項目は、パワートレイン、ステアリング、エンジンサウンド、メーターの4項目。パワートレインをSPORTにすれば、駆動トルクをリニアかつダイレクトにコントロールしやすい印象となる。ステアリングをSPORTにすると、重さを感じる操作感となり微妙なコントロールもしやすい。

とはいえ、新型CR-Vのハンドリングは標準状態でも重めの印象がある。個人的には、サルーン的に味わうのであれば、ステアリングをSPORTモードにするのはノーサンキューだ。そんなこんなINDIVIDUALモードをイジリながら試乗した結論は「FWDをサルーン的に乗るのであれば、パワートレインをSPORTにする以外はNORMALを選ぶのがベスト」というものだった。

あくまで筆者個人の趣味での結論ではあるが、新型CR-Vを試乗する機会があれば、INDIVIDUALモードを利用して、自分好みに仕上げることも楽しんでほしいと思う。

標準装着タイヤはミシュラン ラティチュードスポーツ3

純正アクセサリーでカスタマイズの夢も膨らむ

純正アクセサリーのカスタマイズ例「Urban Premium」

500万円を超えるミドル級SUVとして満足度の高い一台と感じた新型CR-Vだが、唯一気になったのはタイヤ由来のノイズが目立つこと。車体全体が静かに仕上がっているだけに、タイヤの高周波パターンノイズが気になった。試乗車がミシュラン・ラティチュードスポーツ3という銘柄のタイヤを履いていたのは、RSが求める走りを実現するには欠かせないのだろうが、サルーン的な価値を高めるのであれば、もっと静粛性に寄せた銘柄に変えるという手もありそうだ。

スタイリングについて個性を発揮したい、と考えているユーザーは純正アクセサリーに注目してほしい。ホンダアクセスが「Urban Premium(アーバンプレミアム)」と「Tough Premium(タフプレミアム)」という2つのコーディネートを用意している。

ここで紹介するのはスポーティ路線のアーバンプレミアム。ボディ同色とブラックに塗り分けたフロントロアースカートは、いかにもオンロード志向SUVらしい顔つきに変えているのがわかる。

車名ロゴ入りのフロントフェンダーガーニッシュ、標準装着品より伸びやかなフォルムとなったテールゲートスポイラー、流行のブラックエンブレムといったトータルコーディネートにより、上級グレードにレベルアップしているような印象を受ける完成度だ。

もちろん、ラゲッジトレーのようなSUVに求められる実用性を上げるアイテムや、ETC2.0ユニットやドライブレコーダーといった電装アイテムも純正アクセサリーとして用意されている。CR-Vの購入を検討するのであれば、アクセサリーのチェックも欠かさずしておけば、満足度が上がること請け合いだ。

純正アクセサリーのカスタマイズ例「Tough Premium」(プロトタイプ、2026年1月撮影)