新世代「シトロエン顔」でモダンに生まれ変わったエクステリア
「マルチパーパスビークルって何?」とGoogleに聞いたら、「ミニバンのように多人数が乗車でき、荷室を広くとれる設計で、日常の買い物、通勤、家族でのレジャー、車中泊など、1台で多様な用途に対応できるクルマを指します」との答えが返ってきた。マルチパーパスビークルは英語の頭文字をとってMPVともいう。

「シトロエンのMPV」にカテゴライズされるクルマがBERLINGO(ベルランゴ)である。現行型は2024年10月に発売された。新型の大きな特徴はシトロエンの新世代デザインを採用したことで、2025年11月に発売されてやはり新世代デザインを取り入れたC3と並べてみると、同じ血筋であることがよくわかる。

まるっきり、顔が一緒だ。縦長オーバル形状のエンブレムから左右に山型の模様(「シェブロンライン」と呼んでいる)が波紋のように広がり、3つのライトでコの字を形成するヘッドライトにつながる。この新しい顔のおかげでベルランゴは、とってもモダンに見える。
ボディタイプは2種類。2列5人乗りモデルと3列7人乗りモデルがある。5人乗りモデルの全長×全幅×全高は4405×1850×1830mm、ホイールベースは2785mm。全長だけで言えばCセグメントに属する。一方、7人乗りモデル「LONG」の全長×全幅×全高は4770×1850×1850mm、ホイールベースは2975mmである。ホイールベースは190mm長く、全長は365mm長い。最小回転半径は5人乗りが5.6m、7人乗りが5.8mだ。
試乗車は3列シート7人乗りで、装備が充実した「BERLINGO LONG MAX XTR Grip Control Package」だった。アクアグリーンのボディカラーと相まって、スタイリッシュな1台である。

独自の足まわりが生む、飾らないけれど確かなフットワーク
いつものクセでリヤバンパー側からフロア下を覗いたが、なかなかの見ものだった。ぶっとい鉄骨をトラス構造で組み上げた橋を見るようで、構造美すら感じる。リヤサスペンションはパワートレイン横置き前輪駆動車の定番ともいえるトーションビーム式。ダンパーの車体側取り付け点が丸見えでおもしろい。「こんなのでいいの?」と思わずにいられないほど素っ気ないが、「いいんだよこれで。オレたちプロなんだから任せとけ」とでも言いたげな自信すら感じる。
センターを通ってきた排気管は途中で右側にオフセットし、トーションビームを避けて車体後部まで伸びている。トーションビームとのクリアランスが大げさに見えるが、それだけストロークするということだ。短い試乗時間ではあったが、ベルランゴは粗雑な振る舞いを一切見せなかった。ばねはよく縮んでよく伸び、ダンパーは変位のスピードをほどよく制御して乗員に快適な乗り心地を提供してくれる。


フランス車らしい愛嬌と、最新のデジタル装備が共存する室内
運転席のドアを開け、シートに腰を下ろしたところで思わずニヤッとしてしまった。「なんだよ、これ」と。フロントのサイドウインドウは後端でキックアップしている。その後方に続くスライドドアのウインドウは、その跳ね上がったラインを受け継ぐように下降するデザインを描いている。これがベルランゴのデザイン上のアクセントになっているのだが、フロントドアの内張りはフラットなものだから、室内から見るとキックアップした外板パネルの裏が丸見えだ。スライドドア側はちゃんと(?)、内装材で目隠ししているのだが。
「処理が雑じゃない?」と思わないでもないが、不思議と憎めない。フランス生まれのシトロエンというブランドのなせるワザだろう。一分の隙も無いカチッとした雰囲気を出されると肩に力が入るというものだが、どこか抜けたところがあるとリラックスして付き合えるというものだ。
改良前はアナログだったメーターは、新型ではフルデジタルになっている。C3のように(ヒーターを装備した)ステアリングホイールの上からのぞき込むタイプではなく、オーソドックスにステアリングホイールの内側から見るタイプだ。センターのタッチディスプレイは従来の8インチから10インチにサイズアップしている。Apple CarPlay/Android AutoはUSB Type-C経由での接続に対応している。


エンジンのスタート/ストップはボタンスイッチ。R/N/Dのセレクターは小ぶりなレバータイプで、ドライブモードのセレクトスイッチも含めてシトロエンとプジョーで共用しているスイッチだろう。パーキングブレーキは(足踏み式でも手引き式でもなく)電動式だ。

頼れるトルクと高い実用性。まさに「マルチパーパス」な1台
シートはC3とも共通する板チョコパターンで、オレンジのラインがいいアクセントになっている(3列目シートは例外)。ゴージャスというよりカジュアルなムード。シートのクッション性は1列目>2列目>3列目の順に落ちていくが、3列目もしっかり使える印象だ。(脱着できる)3列目までしっかり使っても、荷室には280mm程度の奥行きが残る。
エンジンは1.5L直列4気筒ディーゼルターボを搭載。これに8速ATを組み合わせる。最高出力96kW/3750rpm、最大トルクは300Nm/1750rpmを発生。WLTCモード燃費は18.1km/Lだ。

このエンジンとトランスミッションの組み合わせがもたらす力強い走りが頼もしい。蹴り出しが良く、発進時にもたつかないところがいい。1名乗車で確かめたにすぎないが、多人数乗車であっても頼もしさが減じることはないだろう。巡航スピードまでストレスなく加速してくれる。とっても静かというわけでもないが、ことさら騒々しくもなく、走行音がいいBGMになる印象だ。

ベルランゴはビジネスでも買い物でも、人の送り迎えでも、多人数でのドライブでも、ソロキャンプでも楽々とこなしてしまいそう。マルチパーパスだが機能一辺倒ではなく、適度にスマートで、適度にカジュアルに付き合えるのがいい。
シトロエン・ベルランゴ LONG MAX XTR Grip Control Package・主要諸元
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4770×1850×1850mm
ホイールベース:2975mm
車両重量:1680kg
乗車定員:7名
最小回転半径:5.8m
燃料タンク容量:50L(軽油)
■エンジン
形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:1498cc
圧縮比:16.4
ボア×ストローク:75.0×84.8mm
最高出力:96kW(130ps)/3750rpm
最大トルク:300Nm/1750rpm
■駆動系
トランスミッション:8速オートマチック
駆動方式:FF
■シャシー系
サスペンション形式:Fマクファーソンストラット・Rトーションビーム
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク・Rディスク
タイヤサイズ:205/55R17
■燃費
WLTCモード:18.1km/L
市街地モード:14.5km/L
郊外モード:18.2km/L
高速道路モード:20.2km/L
■車両本体価格
457万2500円


