価格・発売日・スペック確定。まずは“事実”を押さえる

低く構えたフロントと引き締まったボディラインが特徴。空力とマス集中を意識した造形で、軽快なハンドリングと直進安定性の両立を狙うパッケージングとなっている。

ヤマハは新型「CYGNUS X」を2026年4月22日に発表し、5月22日に発売する。メーカー希望小売価格は38万9400円。年間販売計画は4000台で、原付二種クラスのスポーティスクーターとして投入される。

今回のモデルは、モーターサイクルショー段階では未公表だった価格、発売時期、国内仕様の詳細がようやく出そろった、という意味でも大きい。しかも中身を見ると、単なる“日本導入決定”では終わらない。見直しの中心にあるのはフレームで、そこから走りも使い勝手も外観も組み直している。

主要スペック比較(新型シグナスX vs シグナス グリファス)

項目新型シグナスX(7代目)シグナス グリファス
価格38万9400円37万4000円
発売日2026年5月22日2021年12月23日※現行は2025年5月発売
認定型式/原動機打刻型式8BJ-SEM5J/E35TE8BJ-SEJ4J/E34VE
全長×全幅×全高1865×715×1125mm1935×690×1160mm
シート高785mm785mm
軸間距離1340mm1340mm
最低地上高125mm125mm
車両重量126kg125kg
WMTCモード値41.9km/L44.5km/L
原動機種類水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列単気筒単気筒
総排気量124cm3124cm3
内径×行程52.0×58.7mm52.0×58.7mm
圧縮比11.2:111.2:1
最高出力9.0kW(12PS)/8000r/min9.0kW(12PS)/8000r/min
最大トルク11N・m(1.1kgf・m)/6000r/min11N・m(1.1kgf・m)/6000r/min
始動方式セルフ式セルフ式
潤滑方式ウェットサンプウェットサンプ
エンジンオイル容量1.00L1.00L
燃料タンク容量6.1L6.1L
燃料供給方式フューエルインジェクションフューエルインジェクション
点火方式TCITCI
バッテリー12V, 6.5Ah(GT7B-4)12V, 6.5Ah
一次/二次減速比1.000/10.2081.000/10.208
変速装置/変速方式Vベルト式無段変速/オートマチックVベルト式無段変速/オートマチック
変速比2.384-0.7492.384-0.749
クラッチ形式乾式・遠心・シュー乾式・遠心
フレーム形式アンダボーンアンダボーン
キャスター/トレール26°30′/90mm26°30′/90mm
タイヤサイズ(前)110/70-12 47L120/70-12 51L
タイヤサイズ(後)130/70-12 56L130/70-12 56L
制動装置(前)油圧式シングルディスク油圧式シングルディスク
制動装置(後)油圧式シングルディスク油圧式シングルディスク
懸架方式(前)テレスコピックテレスコピック
懸架方式(後)ユニットスイングユニットスイング
ヘッドランプLEDLED

※グリファス側はヤマハ公式価格・仕様ページおよび製品ページベース。

ブルーイッシュグレー。ヤマハらしいスポーティな印象を強めるメインカラー。新デザインのシャープなボディラインとLED灯火類の造形を際立たせる。
ホワイトメタリック6。コントラストの効いた外装により、立体的なボディ形状が強調される。都会的でクリーンなイメージを持つカラーリング。
マットダークグレー。落ち着いたトーンで車体の塊感を強調。鍛造カーボン調パーツとの相性もよく、質感の高さを引き立てる仕上がり。

フレームを変えたから、全部変わった

新設計フレーム。縦剛性をグリファス比で約19%向上させつつ、右側パイプの板厚変更(2.0→2.3mm)で剛性バランスを最適化。穏やかな挙動と接地感を重視した設計。

今回の新型でいちばん重要なのは、やはり新フレームだ。ヤマハはグリファス比で縦剛性を約19%向上させ、さらに右側パイプ厚を2.0mmから2.3mmへ拡大。単に硬くしたのではなく、全体の剛性バランスを最適化することで、走行中の穏やかな挙動を実現したと説明している。

ここが今回の記事の芯になる。エンジン単体の数字はグリファスと同じでも、車体の土台を変えれば、ブレーキの効かせ方も、サスの動かし方も、CVTのつながり方も変わる。新型シグナスXは、まさにその思想で作られたモデルだ。スペック表だけ見て“ほぼ同じ”と片付けると、このバイクの本質を見失う。

足周りは“新フレームありき”で再設計された

フロントブレーキはφ267mmディスクへ大型化。キャリパーピストンもφ27mmに拡大し、制動力とコントロール性を両立。フレーム剛性向上と合わせて安心感のある減速特性を実現。

ブレーキはフロントディスクをグリファスのφ245mmからφ267mmへ大径化し、キャリパーピストンもφ25.4mmからφ27mmへ拡大。リアにもφ230mmディスクを採用し、さらにレバー比を最適化したブレーキレバーとの組み合わせで、制動性と繊細なコントロール性の両立を狙っている。

フロントタイヤは120/70-12から110/70-12へ変更され、リム幅も2.75インチから2.5インチへスリム化。これは見た目のためではなく、軽快な操縦性を引き出すための変更だ。さらにフロントサスペンションは110mm幅タイヤに合わせてインナーチューブ長を5mm伸長し、衝撃吸収性を維持しながら路面追従性を確保。リアは新フレームに合わせてバネレートをグリファス比で約12%ソフト化し、4段階プリロード調整も備える。

つまり足周りの変更は、ブレーキ強化、タイヤ変更、サスペンション再設定が全部ばらばらに存在しているのではない。新フレームで作った挙動の上に、より自然に曲がり、より丁寧に止まり、より荒れた路面でも落ち着いて走れるように積み上げた結果だ。

リヤサスペンションはバネレートをグリファス比で約12%ソフト化。新フレームに合わせてしなやかさを重視し、路面追従性と乗り心地を向上。プリロード調整にも対応。

エンジンは継承、でも中身は“熟成”されている

エンジンはVVAを備えた124cm3の“BLUE CORE”水冷単気筒を継続採用し、最高出力は9.0kW(12PS)/8000r/min、最大トルクは11N・m(1.1kgf・m)/6000r/min。ここはグリファスと同値だ。

ただしヤマハは、そのまま載せ替えたわけではない。ニュースリリースでは、(1)CVTの諸元刷新、(2)トラクションコントロールシステム採用、(3)マフラーのテールパイプ径拡大とエンジン関連部品の小型化によって熟成させたと明記している。CVTはウェイトの軽量化とスプリング荷重調整により加速感を引き出し、TCSは濡れた路面や泥、砂利道など滑りやすい状況での走行をサポートする。

ここで大事なのは、今回の主役がCVTではないことだ。CVT最適化はたしかに効いているが、それは新フレームで変わった車体の動きに対して、駆動側の応答を合わせ込むための調整と見るべきだろう。フレームを核に全体を作り替えた、という今回のキャラクターともきれいにつながる。

日常域での扱いやすさとスポーツ性の両立が今回のテーマ。フレームから見直したことで、街中からワインディングまで自然に扱える特性を実現している。

デザインは“見た目だけ”じゃない。走りの思想を外側に出した

レーシングマシンのウイングをイメージしたボディサイド形状を採用し、走行風を受け流すデザインと視覚的なスピード感を両立している。

新型のデザインコンセプトは「Re-Athletic CYGNUS(俊敏なスポーツ性能への回帰)」。ヤマハは第7世代のシグナスXを、躍動感のある流線型コンパクトボディとして刷新した。ボディサイドにはレーシングマシンのウイングを想起させるモチーフを配置し、サイドカバーモールからグラブバーへとつながる一体感のある造形で疾走感を強調している。

灯火類もかなり重要だ。新開発の小型プロジェクター式ヘッドランプを採用し、灯火器類はLED化。縦に配置したポジションランプやフラッシャー、さらに縦ラインを意識したテールランプによって、前後で統一感のあるダイナミックなスタイルに仕上げている。単に“シャープになった”ではなく、コンパクト化と夜間視認性、そしてスポーティな印象づくりをまとめてやっているのがポイントだ。

さらにフロントのアンダーサイドカバーやマフラープロテクターには鍛造カーボン調のシボを採用。こうした細部の処理まで含めて、今回の新型は見た目の派手さではなく、質感と軽快感でスポーツ性を語る方向に振っている。カラーはブルー、ホワイト、マットダークグレーの3色展開だ。

メーター、収納、足元空間。実用性もかなり濃い

4.6インチカラーLCDメーター。自動調光機能と高コントラスト表示を備え、航続距離表示にも対応。視認性と情報量を両立した実用重視の設計。

装備面では、自動調光機能を備えた高コントラストの4.6インチLCDカラーメーターを採用し、推定航続可能距離表示にも対応する。ここは“カラー液晶です”で終わらせるにはもったいない部分で、日中の視認性と夜間の見やすさ、そして航続距離がすぐ読める実用性を一気に上げてきたポイントだ。

シート下収納はフルフェイスヘルメットが収納可能な約28L。加えて700mlドリンク対応のフロント小物入れ、QC3.0急速充電対応のUSB Type-C端子対応充電ソケット(5V/3A)も備える。日常で使うスクーターとして見ると、ここはかなり強い。通勤快速として選ばれる理由を、装備側でもきっちり補強してきた格好だ。

ライディングポジションも見逃せない。フートスペースは足元や膝周りに余裕を持たせ、シート先端形状を最適化することで自然な着座姿勢と足つき性を両立。さらにシート底部の新設計とクッション材の見直しで疲れにくさも高め、タンデムフットレストはグリファス比で59mm後方へ設定された。見た目だけでなく、毎日使う道具としての完成度も確実に上がっている。

“グリファス”から再び“X”へ。その背景も見えてくる

都市環境での使用を想定したパッケージング。コンパクトな車体と最適化された重量バランスにより、取り回しと加速性能のバランスを高めている。

ヤマハはニュースリリースの企画の狙いで、CYGNUSシリーズを“通勤とスポーツ走行の両立”に応えるスポーティスクーターとして進化させてきたと説明する。そのうえで今回の新型は、歴代モデルが築いたスポーティDNAを受け継ぎながら、新しいデザイン、走行性能、便利な装備、電子制御を融合し、「スポーティ × 実用性 × 都会的なスタイル」を高次元で融合したモデルへ熟成したとしている。

だからこそ、車名が再び「シグナスX」に戻った意味も軽くない。ここを主役にしすぎる必要はないが、グリファスで広げた世界観を経て、もう一度“シグナスの王道”を打ち出す。その裏付けとして、フレームから全部やり直した今回の中身はかなり説得力がある。

歴代最強となるか!? 実車の試乗に期待!

今回の新型シグナスXは、価格と発売日が確定した“国内導入ニュース”であると同時に、ヤマハが原付二種スポーツスクーターの核をもう一度磨き直したモデルでもある。エンジンの数値は大きく変えていない。だが、新フレームを軸に、ブレーキ、タイヤ、サスペンション、CVT、TCS、メーター、収納、そしてデザインまでを一体でやり直してきた。

それはつまり、スペック表の派手さではなく、走った瞬間、止まった瞬間、毎日またがった瞬間に効いてくる進化だ。通勤性能、実用性、スポーツ性、その全部をここまで高い密度でまとめてきた125ccスクーターは、そう多くない。歴代最強と言っても過言ではない

ディテールチェック

メインスイッチはキーシャッター付きのスタンダードな構成。イグニッション、シート、燃料リッドの操作を集約しつつ、防犯性にも配慮した設計。日常使用での扱いやすさと確実性を重視している。
USB Type-C電源(5V/3A)を装備。QC3.0急速充電にも対応し、スマートフォンなどのデバイス充電に対応。通勤用途での実用性をしっかり押さえている。
新開発プロジェクター式LEDヘッドライト。小型化と高輝度化を両立し、夜間視認性を向上。縦配置のポジションランプと合わせ、シャープなフロントマスクを形成。
テールランプもLED化し、縦基調のデザインで前後の統一感を演出。視認性向上とともに、スポーティで立体感のあるリヤビューを構築している。
シート下収納は約28Lでフルフェイスヘルメットにも対応。シート形状も見直され、足つき性と快適性を両立する。※写真のヘルメットはYF-9 ZENITH Mサイズ

【モトチャンプ】