バイクのマフラーの役割とは?

まずは、バイクのマフラーがどんな役割を持つのかをおさらいしよう。マフラーとは、バイクのエンジン部分から後方に向かって伸びている部品のことだ。主な役割は、エンジン内部で燃焼した排出ガスを排出することと、その際に出る排気音を小さくすること。

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バイクのエンジン部分から後方に向かって伸びている部品がマフラー

そのため、もしマフラーを装着せずに走行すると、大量の排気ガスと大爆音を出してしまうことになる。また、マフラーに何らかの異常があると車検にパスしないケースもあるため、安全な走行にはかなり不可欠なパーツのひとつといえるだろう。

マフラーは3つのパートからできている

このようにバイクにとって、なくてはならないパーツがマフラーだ。バイクの場合、マフラーの基本的な構造は、エンジンとの接続部となる「フランジ」と、エンジンから発生した排気ガスを通過させる「エキゾーストパイプ」、そして、エキゾーストパイプと繋がり、排気ガスの低減や排気音を抑える「サイレンサー」といった3つのパートからできているといえる。

これらのうち、エキゾーストパイプは、エンジンの気筒数に応じて数が異なり、単気筒なら1本、2気筒なら2本、4気筒であれば4本あるのが一般的。多気筒エンジンのエキゾーストパイプでは、そこからサイレンサーへつながる途中で、集合部にまとめられることもよくある傾向だ。

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4気筒エンジン車のエキゾーストパイプ

また、サイレンサーも、エンジン気筒数やバイクの種類・特性などに応じて変わり、右側1本出しや左右2本出し、またオフロードバイクなどのアップタイプなど、さまざまな種類がある。

加えて、サイレンサーは、バイクの性能だけでなく、デザイン面でも非常に需要なパーツだといえる。その形状により、バイクのサイドビューやリアビューにスポーティさや迫力、レトロな雰囲気など、さまざまなイメージを演出できる。

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4気筒バイクの右1本出しマフラーの例(写真はホンダ・CBR1000RR-RファイヤーブレードSP)
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単気筒バイクの右1本出しマフラーの例(写真はホンダ・GB350C)
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アップタイプマフラーの例(写真はホンダ・CL250)
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左右2本出しマフラーの例(写真はスズキ・ハヤブサの欧州仕様車)

ちなみに、社外マフラーの場合、フランジとエキゾーストパイプ、サイレンサーがセットになった「フルエキゾーストタイプ」と、主にサイレンサー部だけを交換する「スリップオンタイプ」がある。とくに、スリップオンタイプの場合は、サイレンサー部だけなのにマフラーと呼ぶことも多い。それほど、サイレンサーは、マフラーと同義に近いイメージを持つパーツであるといえるだろう。

なぜ首に巻くマフラーと同じなのか?

このようにバイクにとって重要なマフラーだが、前述の通り、首に巻く防寒具のマフラーも英語の綴りは同じ「muffler」だ。

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首に巻く防寒具のマフラーも英語の綴りは同じ「muffler」

そもそもマフラーとは、「覆う」「包む」「消す」といっった意味を持つ「muffle」という言葉が語源。それに「何かを実行する人または物」を表す接尾辞の「er」を付けた言葉だといえる。

防寒具としてのマフラーは「首元を覆ったり包む」ことで身体を温めるために使うもの。バイクやクルマのマフラーは、エンジンから発生した「排出ガスを覆ったり包んだりして音を抑える」役割をするもの。つまり、「覆ったり包んだりする」という点では、同じ行為をしているということで、綴りや発音が同じになっていることがうかがえる。

サイレンサーには内部構造により2タイプある

ちなみに、マフラーのなかで、排気音を包むことで小さくするサイレンサーには、内部構造により主に以下の2タイプがある。

●ストレート構造
●隔壁タイプ

「ストレート構造」とは、排出ガスが入って出るまでのパイプがまっすぐになっているタイプのこと。排出ガスのヌケがいいことで、高性能を発揮できることが特徴だ。内部のパイプにはいくつも穴の開いた金属製を用い、そのまわりへ穴をふさぐように「グラスウール」と呼ばれる素材を巻くことで、排気音の低減を図っている。

一方の隔壁タイプは、サイレンサー内に「隔壁」と呼ばれる複数の壁を設けているものだ。エンジンからの排気音が壁に跳ね返ることで消音効果を出す。隔壁タイプは、ストレート構造と比べると、静粛性が高く、グラスウールなど内部パーツのメンテナンスも不要。ただし、サイレンサー自体が大きくなり、重量も重くなる傾向のため、スポーツタイプのバイクなどにはあまり向いていないといえる。

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隔壁タイプのマフラーはスクーターに採用される場合も多い

カスタムで人気の社外マフラーの注意点

マフラーには、純正品だけでなく、アフターパーツメーカーから社外品も数多く出ており、カスタムやドレスアップ用のパーツとしても人気だ。

社外マフラーには、前述の通り、「フランジ+エキゾーストパイプ+サイレンサー」がセットになった「フルエキゾーストタイプ」もあるが、車種によっては主にサイレンサー部のみを変えられる「スリップオンタイプ」もある。

フルエキゾーストタイプは、見た目だけでなく、ある程度のパワーアップや軽量化も望める製品も数多い。だが、高価な製品が多い傾向で、最近では20万円以上するタイプもざらだ。一方、スリップオンタイプは、性能を上げるというよりも、手頃な価格でドレスアップ効果を狙えるのが魅力といえるだろう。

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フルエキゾーストタイプの社外マフラー例(写真はアールズギア・GPスペック シングル フルエキゾーストマフラーのCBR650R用)

ただし、いずれの場合も、法律で定められた騒音基準値や排出ガス規制値などに適合していないと、違法改造となるので注意しよう。

しかも、もし違法マフラーを付けて公道を走り捕まると、かなり重い処罰が待っている。まず、バイクには整備命令のステッカーが貼られ、15日以内に運輸支局などに持ち込んで、法律に適合したマフラーを装着しているかを確認することを義務付けられる。そして、これに従わない場合は「50万円以下の罰金」と高額な罰金が待っている。加えて、違法改造を実施した者に対しても「6ヶ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」などの処分を課せられる。

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国土交通省が製作した違法マフラー関連ポスター

そうしたことを防ぐには、社外マフラーを選ぶ場合、きちんと法規に適合ていて公道走行が可能か否かをを確認することが大切だ。たとえば、2010年4月1日以降に生産されたバイクの場合、「政府認証マフラー」でないと交換して公道走行できないなど、社外マフラーにはさまざまな決まりもあるので注意しよう。くれぐれも、安易に違法マフラーを購入し、愛車に付けて公道走行しないよう気をつけたい。