CB750ホーネット E-Clutch……1.149.500円

日本仕様のカラーリングは、ウルフシルバーメタリックとグラファイトブラックの2種。海外仕様はそれらに加えて、ゴールドフィンチイエローとマットジーンズブルーメタリックが存在。なおEクラッチ仕様の登場に伴い、オーソドックスなマニュアルクラッチ仕様の販売は終了。

XL750トランザルプの兄弟車

日本への導入は海外より1年半ほど遅くなったけれど、2025年から国内発売が始まったCB750ホーネットは、2023年に登場したXL750トランザルプと同時開発された兄弟車で、2台は並列2気筒エンジンとダイヤモンドタイプのスチールフレームの基本を共有している。

そんなCB750ホーネットを僕が試乗するのは今回が初めてで、2026年型で新規導入されたEクラッチ以上に興味を抱いていたのは(これまでのEクラッチを考えれば出来が悪いわけはないし、事実、このモデルの作動感も自然にして確実だった)、他の日本の3メーカーが販売するミドルパラレルツインネイキッドと何がどう異なるのか。

2026年型CB750ホーネットとXL750トランザルプが導入した新世代のEクラッチは、電子制御式スロットルと連動することで、既存のケーブル式スロットルとは一線を画するスムーズなクラッチの断続とギアチェンジを達成。ユニットの小型化も実現している。

具体的な車名を挙げるなら、価格が近くて各部の構成に共通点を感じる、ヤマハMT-07(96万8000円。オートマチックとして楽しめるY-AMT仕様は105万6000円)、スズキGSX-8S(116万6000円)、カワサキZ650S(107万8000円)との差異が知りたかったのだ。

ただし、2026年型Z650Sを僕はまだ経験していないので、以下の文章で比較対象にしたのは既存のZ650である。

予想以上の速さと運動性能

左上は2025年型CB750ホーネット。クラッチはオーソドックスな手動式で、アンダーカウルは装備しない。価格は2026年型より11万円安い103万9500円だった。右上はヤマハMT-07、左下はスズキGSX-8S。右下は2026年型で細部を刷新したカワサキZ650S。

CB750ホーネットを走らせての第一印象は、“予想以上に速い‼”だった。最高出力はライバルの3車を大きく引き離す91psなので、ある程度の速さは予想していたのだけれど、まさかここまでとは……。

と言ってもその速さは、乗り手が恐怖を感じるレベルではないのだが、もしかしたらそういったフィーリングは、慣性トルクを適度に抑制して、燃焼トルクのみが瑞々しく伝わってくる、270度位相クランクのおかげなのかもしれない。

MT-07の数値はオーソドックスなマニュアルミッション車で、Y-AMT仕様の車重は187kg。2025年型Z650の最高出力・最大トルク・軸間距離は2026年型Z650Sと同じだが、車重は189kgで、シート高は790mmだった。

というわけで、好印象から始まった今回の試乗だが、市街地と高速道路の印象は、良くも悪くも普通だった。シートが低いという美点はあるけれど、市街地では車格が小さくて車重が軽いMT-07とZ650のほうがやや優勢と思えるし、高速道路での安定感は軸間距離が長くて車重が重いGSX-8Sが一番。

もちろん、GSX-8SとZ650に対してはEクラッチが美点になるものの、僕はそもそもクラッチ操作を負担と感じたことがあまりないので、左手が楽チン……という気持ちにはなれなかった。

ではCB750ホーネット750が輝く場面はどこかと言うと、交通量が少なくて大小のコーナーが続くワインディングロードだろう。

と言っても、ライバル勢だってワインディングロードは楽しいのだが、走るペースがある程度以上になるとMT-07とZ650は足まわりに物足りなさを感じることがあるし、GSX-8Sは場面によって軸間距離の長さがネックになる。

でもCB750ホーネットには気になる要素が見当たらないから、どんな状況でも無心になってスポーツライディングに没頭できるのだ。

そして実際にワインディングロードを走っている最中、僕が最も感心したのは、低回転域で十分な力強さを発揮する一方で、高回転域ではシャープな吹け上がりが堪能できるパワーユニットだった。

昨今では世界中の多くのメーカーが270度位相クランクのパラレルツインを導入しているが(ヤマハとスズキに加えて、BMW、トライアンフ、ロイヤルエンフィールドも採用)、このエンジンの守備範囲の広さは白眉と言っていいように思う。

さらに言うなら、コーナー進入時の絶大な安定感、細身のリアタイヤ(160/60ZR17。Z650も同じサイズだが、MT-07とGSX-8Sは180/55ZR17)ならではの軽快な身のこなし、電子制御式スロットル+Eクラッチのおかげでサクサク行えるギアチェンジ(既存のEクラッチとは異なり、シフトダウン時にはオートブリッパーが作動する)なども特筆すべき要素で、この感触ならおそらく、サーキットランも相当に楽しめるだろう。

購入時のハードル

もっとも、実際にCB750ホーネットを買うつもりで全国のホンダドリーム店を訪れたら、ショールムに並ぶ他車と見比べて、ちょっとした躊躇を感じる人がいそうである。

何と言っても、並列4気筒車のCB650R Eクラッチの価格はこのモデルより6万円安いし、+約20万円の出費を厭わないなら、兄貴分にして並列4気筒を搭載するCB1000ホーネットが購入できるのだから。

逆に考えると、CB750ホーネットのオーナーになるためには、そういったハードル?を乗り越える必要あるのだが、4気筒至上主義の風潮が薄れてきた昨今、軽くてスリムで実用性に優れるミドルパラレルツインを選択するライダーは、少なくないような気がする。

純正指定タイヤは、試乗車が装着するダンロップ・ロードスマート2とミシュラン・ロード6の2種。峠道での楽しさに磨きをかけたいライダーには、ダンロップならQ5S、ミシュランならパワー6やパワーGP2がよさそうだ。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

外観はストリートファイター然としているCB750ホーネットだが、ライディングポジションと乗り味はオーソドックスなネイキッドという印象で、市街地走行やツーリングも快適にこなせる。ライバル勢より10~15mmほど低い795mmのシート高は、小柄なライダーにとっては歓迎するべき要素になるはずだ。

ディティール解説

フロントマスクは兄貴分のCB1000ホーネットに通じる雰囲気だが、エッジをビシッと立てたデザインはCB750ホーネットならでは。
コクピット周辺のカラーはブラックで統一。ハンドルは近年のスポーツネイキッドで定番になっているテーパータイプではなく、オーソドックスなφ22.2mmバー。
5インチTFTディスプレイは、3種類の画面を準備。標準設定のライディングモードはスポーツ/スタンダード/レインの3種類で、その他にパワー・エンブレ・トラコン・ABSを好みの設定にできるユーザーモードが存在する。
左右スイッチボックスは、近年のホンダで採用車が増えている定番品。ライディングモードの設定も含めて、TFTディスプレイ内の操作は左側のMODEボタンと十字ボタンで行う。
シートとテールカウルはスーパースポーツを思わせる構成。タンデムシートの下部には標準装備品として、ETC2.0車載機とUSB電源ソケットが収まっている。
ツーリング性能を重視したモデルではないけれど、タンデムステップ基部の穴とタンデムシート裏面のループを使えば、荷物の積載は可能。
754cc並列2気筒エンジンのボア×ストロークは87×63.5mmで、比率は0.730。ライバル勢の数値は、ヤマハMT-07(688cc):80×68.5mm・0.856、スズキGSX-8S(775cc):84×70mm・0.833、カワサキZ650S:83×60mm・0.723。
XL750トランザルプ用と同時開発されたエンジンは、モトクロッサーのCRFをルーツとするユニカムOHCヘッドを導入。クランク位相角は270度で、振動を緩和するバランサーは2軸式。なお1次・2次減速比も含めて、ギアレシオもXL750トランザルプと共通。
φ41mm倒立フォークはショーワSSF-BP。フロントブレーキはφ296mmペータルディスク+ニッシン・ラジアルマウント式対向4ピストンキャリパー。
リアブレーキはφ240mmウェーブディスク+ニッシン片押し1ピストンキャリパー。専用設計のスイングアームはスチール製。
リアサスペンションはボトムリンク式。なお兄弟車のXL750トランザルプは、2026年型から前後ショックがフルアジャスアブル式となったが、CB750ホーネットの調整機構はリアのプリロードのみ。

主要諸元

車名:CB750ホーネット E-Clutch
型式:8BL-RH24 
全長×全幅×全高:2090mm×780mm×1085mm
軸間距離:1420mm
最低地上高:140mm
シート高:795mm
キャスター/トレール:25°/99mm
車両重量:196kg
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:ユニカムOHC4バルブ
総排気量:754cc
内径×行程:87mm×63.5mm
圧縮比:11
最高出力:67kW(91ps)/9500rpm
最大トルク:75N・m(7.6kgf・m)/7250rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギアレシオ
 1速:3.000
 2速:2.187
 3速:1.650
 4速:1.320
 5速:1.096
 6速:0.939
1・2次減速比:1.777・2.812
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ43mm
懸架方式後:プロリンク式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:160/70ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:15L
乗車定員:2名
燃料消費率 国土交通省届出値:34.5km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:22.7km/L(1名乗車時)