Porsche Cayenne Electric

BEV戦略を見直したポルシェ

左がカイエン・ターボ・エレクトリックで、右がカイエン・エレクトリック。フロントサイドのダクトの形状が異なる。
左がカイエン・ターボ・エレクトリックで、右がカイエン・エレクトリック。フロントサイドのダクトの形状が異なる。

「もしも試乗会場がお通夜みたいな雰囲気だったら、どうしよう?」

やや不謹慎な表現だが、スペイン・バルセロナ郊外で行われるポルシェ・カイエン・エレクトリックの国際試乗会に向かう際、私の心の中にそんな気持ちがまるでなかったといえばウソになる。

昨秋来、ポルシェは電動化戦略の見直しに関する声明を次々と発表。その中には、BEVに舵を切ったマカンに内燃エンジンモデルを追加すると推測されるような文言や、BEVに切り替わる見通しだった718にも内燃エンジンモデルを追加するとの内容が含まれていた。

こうした戦略見直しに日本円で3000億円を越える予算を投じたことで、2025年度の営業利益は前年度比マイナス92.7%の4億ユーロ(約730億円)と大幅な減益を発表。近年は15%を上回る利益率を誇ってきた自動車界の優等生が、昨年はわずか1.1%に留まって業界を驚かせたのである。

ポルシェらしさ溢れるステアリングフィール

登場以来、ポルシェの中心的存在として君臨しているカイエンが、大きな転換期を迎えようとしている。マカンに続き、電動パワートレインを搭載したカイエンはポルシェの走りをどのように表現しているのだろうか。大谷達也が確かめた。
カイエン・エレクトリックの走りは、従来のポルシェらしさを感じさせるもの。

「最悪の場合、カイエン・エレクトリックが状況をさらに悪化させるかもしれない」そんな推測も成り立つ試乗会に向かうのに、無条件に明るい雰囲気を期待するほうが無理というもの。しかし、そんな私の予想は見事に裏切られ、試乗会に参加したポルシェ関係者は誰もが自信に満ちた表情を浮かべていたのである。

その答えは、実際にカイエン・エレクトリックのステアリングを握るとすぐに理解ができた。

「ポルシェの真髄はそのステアリングフィールにある」

常々そう信じてきた私は、先にデビューしたマカン・エレクトリックに初めて試乗したとき、呆然とした。ステアリングから伝わってくる感触が乏しく、ポルシェらしさがほとんど感じられなかったからだ。

しかし、カイエン・エレクトリックはまるで違う。従来のポルシェに比べれば、ステアリングフィールに含まれていた「生っぽさ」はわずかに削がれたかもしれない。けれども、ステアリングから伝わる路面の情報量は潤沢で、クルマとの強い一体感が得られる。これこそ、私がポルシェに期待する最大の価値といって構わない。

快適性と俊敏性を両立

登場以来、ポルシェの中心的存在として君臨しているカイエンが、大きな転換期を迎えようとしている。マカンに続き、電動パワートレインを搭載したカイエンはポルシェの走りをどのように表現しているのだろうか。大谷達也が確かめた。
エアサスペンションが全グレードに標準装備される。快適性は高いが、ハードな走りも支えてくれる。

全車に標準装備となるエアサスペンションはしなやかにボディをフラットな姿勢に保ってくれるタイプ。路面から伝わるゴツゴツ感も薄く、快適性は高い。BEVの中でもパワートレインが発する騒音やロードノイズが極めて小さいので、おとなしく走っていればこれが超ハイパフォーマンスなSUVであると気づく者はそう多くあるまい。

しかし、カイエン・ターボ・エレクトリックのスロットルペダルをフロアまで踏み込めば、瞬く間に世界は一変する。高性能なBEVらしく、加速Gが瞬時に立ち上がるのは当然のことながら、その際に肩甲骨がシートバックに激しく叩きつけられるような感触を味わったのは生まれて初めてのこと。「ポルシェ量産車史上最強」といわれる1156PS(ローンチコントロール使用時)の最高出力と1500Nmの最大トルクが伊達ではないことを、このとき、イヤというほど思い知らされた。

ただし、ワインディングロードを真剣に攻めていると、パワートレインの凶暴さは影を潜め、従順さのみが意識に上ってくる。ハンドリングもまったく同様で、ブレーキングによる荷重移動をしっかりと感じながら、自信を持ってステアリングを切り込むことができる。その恐ろしく正確なハンドリングを操っていると、2.6tを越える車重や2mに迫る全幅のことはすっかりと忘れ、ひたすらコーナリングに没頭している自分に気づくことになる。これもまたポルシェの真骨頂というべき味わいである。

グレードは2種類を用意

発売時点で用意されるのはフラッグシップのカイエン・ターボ・エレクトリックとベースグレードとなるカイエン・エレクトリックの2タイプ(やや遅れて両グレードの中間に位置するカイエンSエレクトリックが発表されたが、今回の試乗会には間に合わなかった)。後者の最高出力は442PS(ローンチコントロール時)に留まるが、この場合でもパワーウエイトレシオは6.0kg/PSを軽く切る。したがって市街地から高速道路に至るまで動力性能で不満を感じることはないはず。一方バッテリー容量はカイエン・ターボ・エレクトリックと同じ113kWhで、航続距離は576〜643kmと十分以上(WLTP)。ワインディングロードでの走りは未確認ながら、市街地を走らせた感触からいえば、こちらも侮れないポテンシャルを秘めているはずだ。

湾曲するフローディスプレイが斬新

ウインドウのグラフィックはカイエンのイメージを継承する。リヤ周りは下部にデコレーションパネルがあしらわれている。

手元で傾斜角が水平近くに変化するセンターコンソール上のフローディスプレイは、手前にパームレストが設けられていることもあって操作性は極めて良好。それ以外のインテリアも質感は高く、ポルシェ・ファンの期待を裏切らないことだろう。

聞けば、プラットフォームにはマカンエレクトリックのPPE41をポルシェが独自に進化させたPPE41Cを採用したとか。そんなところにも、カイエン・エレクトリックがポルシェらしく仕上がった秘密が隠されているのかもしれない。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/PORSCHE AG.

 

SPECIFICATIONS

ポルシェ・カイエン・ターボエレクトリック

ボディサイズ:全長── 全幅── 全高── mm
ホイールベース:── mm
車両重量:── kg
モーター最高出力:850kW(1156PS)
モーター最大トルク:1500Nm(20.4kgm)
駆動方式:AWD
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
最高速度:260km/h
0-100km/h加速:2.5秒
車両本体価格:2101万円

 

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

 

 

 

カイエン エレクトリックのプレゼンテーションを行うポルシェジャパン イモー・ブッシュマン社長。

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