ATパターン、はたしていまのが完璧か?
ここでは無段変速機(CVT)もAT(オートマチックトランスミッション)に含む。
従来型の段付きATにしろCVTにしろ、多くのシフトレバーのポジションは、従来の段付きATなら「P-R-N-D-2-1」、CVTなら数字の概念のない「「P-R-N-D-S-L」におおかた集約される。
オーバードライブがDに内包されるか、S(スポーツないしスロープ)がゲート上にあるか、グリップ横のボタン式に変わるかの違いはあるが、まあこんなところだ。
他に世の中にはボタン式のものや、見た目はレバー式でも内部では電気式のものもある。
どんなATでも共通しているのは「P(パーキング)」の次に「R(リバース・後退)」があり、その後「N(ニュートラル)」に続くことだ。
ただ、駐車スペース事情でエンジン始動後、まず後退の場合もあるにせよ、基本的にクルマは前に進むものだから、Pの次にいきなりRが来るのではなく、いきなりDか、いったんNで空白を置いてからDなりRなりの並びにする方がいいような気もするのだが、実はこの道すじはJIS規格で決めごとがなされている。
次のようなものだ。
1.中立位置がある場合には、前進位置と後退位置の間になければならない。
2.中立位置から前進位置への操作における変速レバーノブの移動方向は、フロアシフト式の場合には、自動車の前進方向に見て後方とし、コラムシフト及びインストルメントパネル式の場合には、下方とする。
3.駐車位置がある場合には、シフトパターンの最も端にあり、かつ後退位置と隣接していなければならない。
他にもMT(マニュアルトランスミッション)や「阻止装置」の項もあるのだが、ATシフトの並びについてはこの3つだ。
ここで「中立位置」とは「N(ニュートラル)」のことで、「駐車位置」は「P(パーキング)」だ。
ただ、Pの次になぜいきなりRを持ってくる必要があったのかの根拠は調べてもわからなかった。
アメリカは日本よりずっと先にATが普及していたが、日本だって2026年の現在から見ればその歴史は古く、日本初のトルクコンバーター付きATは、1960年10月に初代クラウンのマイナーチェンジ時に搭載された「トヨグライド」だ。
さきのJIS規格は、初代クラウンのトヨグライド時点では制定されていなかったと思われる。
というのも、トヨグライドがフルオートではないセミオートで、Lレンジで発進してからDにシフトする必要があったからなのかどうかわからないが、いまのATのゲートとは違う並びになっているのだ。
それがこれだ。

現代的に記すと「P-N-D-L-R」。
ただし、写真で見ればわかるとおり(実際にはイラストの写真)、実車のハンドル向こうにある表示は逆で「R-L-D-N-P」である。
お気づきだろうか、Pの次はNになっていて、RはD、Lを通り越した後の端っこに置かれていることが。
さきのJISの要件に照らし合わせると、1はまったく満たしておらず、2は半分しか守られていないから、いまのクルマに初期トヨグライドのパターンは適用できないことになる。
ただ、私が、いまのATゲートにどうにも違和感を抱いているのは、クルマを前進から後退させる際、クルマの動きを前から後ろへにしたいのに、レバーはDからR・・・後ろから前へになっている点、そしてそのRを一連の道すじの中に組み込んでしまっていることだ。
Rだけ外へ押しのけることはできないだろうか。
暴走事故のニュースのたび、プリウスがやり玉に挙げられる。
実は私の父もついこの間まで2代目プリウスを使っており、私もときおり乗ることがあったが、プリウスは電気式自動無段変速機であり、「エレクトロシフトマチック」という電気シフトを用いていた。
それがこの写真だ。
「●」が定置位置で、右保持でN、N通過の下向きでD、上にRだ。
どこに動かしてもノブは●に戻り、D走行中にBに向けると回生ブレーキが働く。
これまた私がなじみにくかったのは、常にノブが●に戻ること、Rが右→上への操作であることだった。
プリウス暴走の要因はこのシフト配置にあるのではという声があるが、なるほど、いわれてみればいろいろ考えられる要因のひとつに掲げられるかもしれない。
というわけで、ここまで述べた、従来からのATのRが道すじの中にあること、プリウスのR位置になじまないことの要件を解決する新しいゲートをいくつか考えてみた。
新シフト提案1
この案の特徴は、Pを使うのはまさに名のとおり駐車時にとどめる・・・すなわちPシフトは乗り込んで出発時に外すときと駐車して降りるときにとどめることとし、運転中は常にN起点で操作するのと、RはMTに倣って右向けの手前引きにしたことの2点だ。
前進D以外の「3」「2」「1」はクルマのキャラクターおよびATロジックに応じて「S」でも「L」でもお好きにどうぞ。
何だったら前進はDのみにとどめて三菱のINVECS風にファジィ制御任せにする、あるいは左にマニュアルモードの「+」「-」を設ける手もある。
新シフト提案2
これはNからRへをMTに倣っただけでなく、前進までをもMTに合わせた案。
ただし3はNからのT字路から下に持ってこざるを得ず、D-3の間隔だけが唯一他の倍になってしまうのが難点だ。
T字部が3だとNからDに入れる際、いったん3を通過しなければならなくなるからだ。
これはこれで違和感がある。
これら2案、もうひとつ問題があって、すべての案が「PはRと隣接」というJIS規格の3を、新提案2は加えて「NからDへの動きは車両後方向きに」というJIS規格2を満たさないことだ。
ほんと、これらの根拠は何なのか、この規格を制定したひとに伺いたいのだが、プリウスのエレクトロシフトもPをボタンにしてJIS規格3を例外にしているようだし(?)、大目に見ていただきたいと思う。
と、あらためてよく見たら、プリウスのエレクトロシフトもJIS規格1の「中立は前進と後退の間」を、JIS規格2の「NからDへの向きはインパネ下方向に」を満たしていた。
ということは、さきに推測したプリウス暴走はこのJIS規格2に起因していると考えられなくない。
ところで1996年に休刊した弊社「モーターファン」、いまも続く「ニューモデル速報」でかつて主筆を務められた自動車ジャーナリストの故・星島浩さんは、モーターファン1994年12月号の連載ページ「星島浩のおしゃべりジャーナル」の中で、「無意識にロックボタンを押すことでRに簡単に入るATによる事故発生原因が潜んでいないとはいえない」「少なくともPレンジからR位置を通り越さないとNやDに向かえない現在のルート設定はよくない」として、次のようなシフトパターンを提案している。
星島さんと筆者の案の違いはR位置。
星島さんはPからNへの途中にRへの専用道を設けていること、筆者はNとRの関係をMTと同じにしているくらいで、全体的には同じだ。
筆者は「Nを起点」にと考えているが、これを星島さんは「Nありき」と表現していた。
実は私は学生時代にこの号のモーターファンを読んでおり、図がなぜか手描きで掲載されていたことが印象に残ったのだが、いつしか星島さんがこの話を書いていたこと自体すっかり忘れていた。
忘れていた割に、筆者の案が星島さんのものに近いのは偶然なのか、間違ってもいいとはいえない私の頭のどこかに残っていたのか・・・
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慣れの要素が多分にあるから、ライトやワイパー、ターンシグナルのようなスイッチと同様、シフト操作もクルマごとに変わらないことが望ましい。
ゆえにシフト操作をいまさら変えるとか新しくすることにためらいがあるだろう(実は筆者がいちばんそう思っている)。
AT限定免許取得者が多いことを思えばなおのこといまさらな話だが、使いやすいとはいえないボタン式もあることだし、この際どさくさ紛れにあとひとつふたつあってもいいのではというATシフトゲートの提案でした。
みなさんも3つめ、4つめのパターンを考えてみてくださいな。
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連休2日めのちょいとしたお遊びだ(でも半分まじめに)。
そろそろJIS規格も見直して、使いやすく、安全・確実にシフトできる新しいものができてもいい頃だと思う。
いまのはちょっとねえ・・・











