今回の検証車両はヤマハ・125ccスクーター

YAMAHA BW’S125

シグナスX系エンジンを採用するBW’S125。走行距離は約2万4000kmで、主に通勤メインで使用されていた車両だ。エンジン本体は快調だったものの、加速時のツキやレスポンス低下、熱ダレ感が気になる状態。今回はパーツ交換を行わず、分解清掃と組み直しだけでどこまでフィーリング改善できるのかを検証してみた。

0-50m加速を実測 6秒07  → 5秒93に短縮!

発進時のタイムラグが軽減して、アクセルのツキも良くなった!

インプレッション:「分解前は8000rpmで変速していき、スタートから40m 付近で7800rpmに変速回転数が落ちてしまっていた(加速が鈍くなる)。リフレッシュ後は、アクセルを開けた瞬間からバッチリ体感できるほど鋭く加速してくれるように。変速の落ち込みもなく8000rpmをキープして、アクセルに対するツキもグッド。とくにアクセル中開度からの加速が気持ち良くなったね。これって組み付けたばかりだから、これからクラッチシューのアタリが出たらさらに良くなりそう!」(モトチャンプ編集部サンタサン)

汚れと傷は徹底除去!動きをイメージして施工するべし

スクーターの駆動系は、ゴム製のVベルトと2つのプーリーによって変速を行っている。一般的なミッション車のようにオイルに浸かった構造ではないため、熱や摩擦の影響を受けやすく、汚れや摩耗が進行しやすい傾向。しかも駆動系は、カバーによって塞がれており外からは見ることができない。そのため汚れや摩耗の進行に気付きにくいからやっかい。加速の悪さや最高速の低下、燃費の悪化などを感じても、つい見て見ぬふりをしてしまいがち。多くのスクーター乗りがそうだと思う。だからこそ今回言いたいのが「リフレッシュするだけでも加速が復活する可能性があるよ!」ってこと。新品パーツを用意しなくてもいいから手軽にトライできる。

そこで重要になるのが、分解清掃と組み直し時の“ひと手間”だ。各部の摺動抵抗を減らし、スムーズに動くようリフレッシュすることで、失われていた加速フィールを取り戻せるんだ。実際に今回のBW’S125も、組み直し後は発進時のタイムラグが軽減。アクセルに対するツキも改善され、0-50m加速タイムも6秒07から5秒93へ短縮した。たった0.14秒と侮ることなかれ。0-50mでその差は距離が伸びればそれ以上だし、しっかりと体感できるほどの違いがあるんだ。

もちろん、スクーターの駆動系は基本的に消耗品。今回のようなリフレッシュで性能低下を抑えることはできても、摩耗そのものが消えるわけではない。もし作業後も不満が残るようなら、Vベルトやウエイトローラーなどの交換も視野に入れたいところ。さらに社外製パーツを組み合わせれば、加速性能や変速特性そのものを変えることも可能だ。ちなみに最高速の低下はVベルトの摩耗(細くなる)が主な原因。こちらは新品に交換しないと解決しないのであしからず。

まずはコストほぼゼロで試せる“組み直しリフレッシュ”。スクーターならばミッション車と違ってオイルまみれになる可能性がないから、軒先でも作業できちゃう。愛車の走りを見直すキッカケとして試してみる価値は十分ありますよ!

「駆動系リフレッシュ」前編の記事はコチラ

■ドライブ(プーリー)側のひと手間テクニック

駆動系を取り外して、パーツクリーナー等を使って各パーツをクリーニング。そこからひと手間かけることで、加速が改善するのだ。パーツ一つ一つの効果は微細だけれど、「チリも積もれば山となる」作戦で施工していこう。

こちらがドライブ側のパーツ。

【プーリー&ドライブフェイス】フェイス面を整えて加速の谷をなくす!

フェイス面の段差をならす

段付き摩耗があると加速の谷ができてしまうため、研磨パッドである程度ならしていく。

放射状に浅~くキズを作る

初期グリップとフェイス面の平滑化を狙って研磨。このくらいキズが付けばOKだ。Vベルトの食いつきが良くなる。

摺動部はすべてグリスアップ

綿棒を使ってスライドピースが接触する部分にも薄く、熱に強いシリコン系グリスを塗布する。

【プーリーボス】摺動抵抗を減らして動きを軽くする!

研磨パッドで縦キズを消す
熱ダレしたような症状が出る縦キズを、#320程度の研磨パッドを円周方向に動かし消す。

削りすぎないようにね!
プーリーボスの表面に爪を立て、引っかからない程度までキズが消えればOKだ。円周方向に微細な溝を作るイメージ。

グリスはうっすらで十分
摺動部分にグリスを塗り込み、金属同士の嚙みこみを軽減。量は塗ってふき取るくらいでOK。

【ウエイトローラー】バリ取りで変速レスポンスを改善!

面取りで引っ掛かりをなくす
カッターナイフでウエイトローラーのエッジを面取りしておくと、変速時の動きがスムーズになる。

ドライブ側のグリスは薄く
ウエイトローラーの表面にシリコングリスを薄く塗る。専用のグリスも販売されている。

【スライドピース】引っ掛かりを減らして動きを正常化!

小さなバリも取り除く
スライドピースはエッジ部分が引っかかって動きが悪くなることも。摩耗が酷ければ交換。

メンテに綿棒最強説
プーリーと接触する面もグリスアップ。付けすぎると汚れを呼んでしまい逆効果なので注意したい。

≫ポイント 中古部品同士を組み直す際は、同じパーツを同じ場所に組む

中古部品同士のアタリを良くするために、分解する前に油性ペンでマーキングをしておけば、同じ場所に同じ部品が組める。細かいようだけど相性は大切なのだ。

■ドリブン(クラッチ)側のひと手間テクニック

駆動系を取り外して、パーツクリーナー等を使って各パーツをクリーニング。そこからひと手間かけることで、加速が改善するのだ。パーツ一つ一つの効果は微細だけれど、「チリも積もれば山となる」作戦で施工していこう。

こちらがドリブン側のパーツ。

【トルクカム】グリスアップで変速動作を正常化!

グリスはパンパンに!
トルクカムの溝も埋めるようにグリスを詰
める。今回はヤマハ純正部品として手に入るセカンダリー用を使用した。

内側にもグリスを
できるだけ古いグリスを取り除き、トルク
カム内部にグリスを詰め込んでおく。高温
になるため専用グリスがおすすめ。

【クラッチシュー】接触面を整えて食いつきを改善!

クラッチのアタリをCHECK
黒光りしている箇所だけがクラッチアウターと当たっている。つまりこの部分だけクラッチアウター内壁に対して凸になっている状態だ。これだと接地面が少なく、パワーロスや滑りの原因につながる。

当たっている箇所を削る

120番程度の荒目のサンドペーパーで、光沢がなくなるよう削ってクラッチアウター内壁との当たり面を増やすのが狙い。装着直後は慣らし走行を行うとなおグッド。

【クラッチアウター】荒れた内壁をリフレッシュ!

アウター内の壁面を荒研磨
クラッチシューと接する硬い金属だが、レ
コード状に荒れていたため、垂直方向(食
いつきが増す向き)に研磨した。

【フェイス面】変速の滑らかさを取り戻す!

錆や汚れを落として
ドリブン側のフェイス面にもベルトの跡が
ついていたので、研磨パッドで汚れを落と
す。平滑をキープするイメージで。

エピローグ

「参考までに作業に要した時間は撮影を除いて、分解に30分。組み直しの作業に2時間。組み付けに30分。準備と片づけを合わせて3時間半といったところ。タイム計測を行うともうちょいかかるかな。決してお手軽とはいえないけれど、施工後の走りの変化を考えると理想は半年に一度くらいやって、状態によりパーツを交換していくと快調さがキープできそうだと感じた。良く走るようになると自然と燃費も改善されるし給油の回数も減る。バイク通勤派として、愛車のメンテがんばります!」。(モトチャンプ編集部サンタサン)

※この記事は月刊モトチャンプ2023年7月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ】