エンジンは快調なのに、なんか遅い……気付かないうちに進行する “駆動系の劣化”

スクーターの駆動系は、気付かないうちに少しずつ性能が低下していく。密閉されていることもあってミッション車のように明確な異音や故障が出ることが少なく、「なんとなく遅くなった気がする」という状態のまま乗り続けている人も多いはずだ。

特に通勤や街乗りメインの車両は、ストップ&ゴーの繰り返しによって駆動系に熱がこもりやすく、内部のグリス劣化や摩耗が進行しやすい。すると発進時のツキが悪くなったり、熱ダレしたように回転の上昇が鈍くなるなど、“駆動ロス感”が強くなってくる。そう、スクーターの駆動系は高温下で常に回転し、摩擦と戦いながら動き続けているという過酷な環境下にさらされているメカニズムなのである。

今回用意したのは、約2万4000kmを走行したヤマハBW’S125。シグナスX系エンジンを採用した元気なモデルだが、最近は「110ccクラスに置いていかれそう……」と感じるほど加速フィールが低下。エンジン自体は快調なのに、アクセル操作に対する反応が鈍く、以前のようなキビキビ感が失われていた。

そこで今回は駆動系を徹底分解。Vベルトやプーリー、クラッチ周辺の状態をチェックしながら、“組み直しだけでどこまで復活するのか”を検証していく。まず前編では、分解手順と各部のダメージチェックを中心にレクチャーしていこう。

用意したマシンはこちら

●ヤマハ・BW’S 125
・走行距離:約2万4000km
・0-50m加速タイム:6秒07
シグナスXと同系統のエンジンを採用。主に通勤で使用しており、最近はアクセル操作に対するツキが悪くて、キビキビ感がない。



覚えておきたい ドライブ側? ドリブン側?

普段は密閉されていて見ることができないスクーターの駆動系。駆動系カバーを開けるとこんなカンジになっており、メーカー関係なくほぼ同じ構成だ。

こちらが「ドライブ側」と呼ばれるプーリーのあるほう。エンジンのクランクシャフトと直結している。ドライブベルト(Vベルト)で、ドリブン側と繋がっている。

こちらが「ドリブン側」と呼ばれるクラッチのあるほう。奥にある変速ギヤを介してリヤホイールと繋がっている。

ドライブ(プーリー)側は、段付き摩耗やキズを発見!

プーリーのフェイス面が凸凹に!?

取り外したパーツはさまざまな痕跡が。プーリーは一部が爪で触ると分かるくらい凹んでおり、いわゆる段付き摩耗が起きていた(円周状にある色が濃くなっている線)。プーリーの真ん中くらいに見える線が通勤で使用している速度域で走り続けた結果できた摩耗だ。段付きがあると加速時にVベルトが引っ掛かってしまい加速の谷ができてしまう。ちょっとした修正が必要。

プーリーボスの縦キズは要交換の合図

プーリーとの摩擦に絶え続けているプーリーボスは、もっともストレスの掛かる場所。そのため表面は硬質メッキ処理がほどこされているが、メンテナンスを怠るとこのようにグリスが抜け落ち縦方向に線キズが入ってしまう。「アクセルを開けても加速がにぶい」そんな時はプーリーボスのキズや潤滑不足が考えられる。

ウエイトローラーはまだ使えそうです

変速回転数を決めるウエイトローラーは、定期的な交換をしていたおかげで偏摩耗もなく丸い良い状態。放っておくと丸い部分の一部が平らになってしまい、プーリー内でうまく転がらず加速にムラが出る。

HOW TO:ドライブ側の外しかたの手順とポイント

用意した工具
プラスドライバー、10mmソケットレンチ(写真ではT型レンチ)、17/19mmソケット、ユニバーサルホルダー、クラッチ用41/46mmレンチ、ハンマー、ラジオペンチ。


8本のボルトを緩める

駆動系カバーは10㎜角のボルト8本で固定されている(全て同じ長さ)。車種によっては長さが違うボルトを使用する事があるので注意したい。

プーリーを固定してナットを外す

回り止めのための窪みにユニバーサルホルダーを差し込んでプーリーを固定する。センターのナット(17mm)をソケットレンチで緩める。

外側から順番に外していくだけ

ナットを外したら、ワッシャ、ドライブフェイスと外側から順番に外していく。プーリーは少し手前に引き出し、裏側にあるランププレートを指で押さえるようにして、プーリーボスごとごっそり取り外すと中にあるウエイトローラーがバラバラにならずに済む。

ドリブン(クラッチ)側は、グリスの劣化が顕著だった

ドリブン側は、常に高速で回転をしていて、「クラッチミート」による発熱など高温下になりやすい部分。分解してみると本来たっぷり入っているはずのグリスが減っているのが分かる(溝の部分)。また、摺動時の擦れなどでグリスが汚れて(劣化)いる。オイルシールで密閉されているとはいえ、高温でグリスが柔らかくなり回転による遠心力でどうしても減ってしまう。劣化して硬化したり、乾燥してしまうと動きが悪くなってしまうのだ。

クラッチアウターはエンジンのパワーをリヤホイールに伝える際の大事なパーツの一つ。内側を見るとクラッチミート時のクラッチシューのカスや、Vベルトのカスが溜まっている。パーツクリーナーなどで綺麗にクリーニングしないとクラッチ滑りの原因に。

クラッチアウターと接するクラッチシュー(摩擦材)チェック。黒く光っているのがクラッチアウターと接触している部分。意外にも触れていない部分が多かった。組み直す際に修正する予定だ。

HOW TO:ドリブン(クラッチ)側の外しかたとポイント

ホルダーでしっかり固定

クラッチアウターをユニバーサルホルダーで固定して、センターのナットを緩める。BW’S125は19mmのナットだ。センターのナットを取り外したら、クラッチアウターだけでなく、クラッチユニットやVベルトごと手前に引き出して取り外す。

インパクトレンチがあると便利

固定ネジを外す時にインパクトレンチがあると作業時間も短縮できる。但しトルク管理が難しいため締め付けに使うのはお勧めできない。

叩いてナットを緩める

クラッチユニットにはセンタースプリングが入っているので、飛び出さないように足で押さえながら46mmのナットを緩める。いきなりナットを取り外すとスプリングが勢いよく飛び出してくるので、押さえつけながらナットを取り外そう。

ここはパワープレイ

トルクカムのカバーは固着していることが多いので、グリップの良いグローブをはめて、しっかり掴んでグリグリと左右に回すようにすれば外しやすい。

3個のピンを引き抜く

トルクカムは3個のピンによってドリブン側プーリーの動きを制御している。このピンを取り外せば分解できる。

ゆっくり引き抜いて

ゆっくり手前に引き抜けばドリブン側のプーリーが分離できる。併せてオイルシールの状態もチェックしよう。

後編は組み直しテクニックを披露!体感できるほど加速力が復活しました!

今回(前編)は駆動系を分解して中の状態をチェックした。スクーターの駆動系を分解してみたい人はこの前編だけ見てもOK。今回の分解で分かった事実は、ドライブ側は摩耗が見られて、ドリブン側は劣化による潤滑不足が目立った印象。次回後編ではひと手間を加えながら組み直す予定。パーツ交換せずどこかで走りが復活するかこうご期待! 

※この記事は月刊モトチャンプ2023年6月号を基に加筆修正を行っています