お便り イニシャルを抜いたらバイクが跳ねるようになった

投稿者:東京都/ビッグマウスさん

チェンの回答

ビッグマウスさんはサーキット走行を楽しんでいるライダーかな? この疑問はチェンの得意分野だ。おそらくコーナリング中に「バイクが跳ねる」=「サスペンションが硬い」と感じて、スプリングのイニシャル(プリロードとも言う)を抜いて乗り心地を良くしようとした。でも、実際に走ってみたら余計に跳ねるようになってしまった……という状況なんだと思う。普通に考えると、「イニシャルを抜く=柔らかくなる」だから、乗り心地も良くなってバイクも落ち着きそうな気がするよね。でも、実際のサスペンションはそんなに単純じゃないんだ。

多くのバイクのサスペンションは、動き始めはソフトで、沈み込むほど踏ん張るように設計されている。これを「

プログレッシブ特性」というんだ。フロントフォークなら、エアスプリング効果やオイルロックピースなどで、リヤサスペンションならリンク機構やバンプラバーなどで、この特性を作り出している。だからイニシャルを抜くと、街乗りで感じる「最初の動き」は確かに柔らかくなる。コンビニへ行く程度や市街地を流すくらいなら、「乗り心地が良くなった!」と感じる人も多いはず。ところが、サーキットやワインディングのように大きな荷重が掛かる場面では話が変わってくる。イニシャルを抜いた分だけ、サスペンションは最初から深い位置まで沈み込んだ状態で仕事をすることになる。そしてブレーキングやコーナリングでさらに荷重が掛かると、ストローク後半の踏ん張る領域、つまりプログレッシブ特性が強く立ち上がる部分を使うことになるんだ。

その結果、「柔らかくしたはずなのに硬い!」「コーナー出口でバイクが跳ねる!」という、一見矛盾した現象が起きてしまう。ビッグマウスさんが感じた違和感は、まさにこの現象なんだと思うよ。サスペンションのセッティングって、つい「硬い」「柔らかい」だけで考えがちだけど、その考え方だけだと意外とドツボにはまりやすい。

まずは基本として、ライダーが乗車した状態でサスペンションストローク量の20〜30%程度沈むように調整してみよう。いわゆる「ライダーサグ」と呼ばれる考え方で、サスペンションのストロークを効率よく使い切るためのひとつの目安になる。そこを基準にして、「街乗りメインなのか/ワインディングを楽しみたいのか/サーキットを走るのか」自分の走るステージに合わせて調整していくのが、遠回りに見えて実は一番の近道なんだ。サスペンションは「柔らかければ正解」「硬ければ速い」という単純なものじゃない。だからこそ、自分のバイクに合ったベストポイントを探す作業も、セッティングの面白さのひとつだと思うよ!

まとめ

●サスセッティングは動的に考えるのがキモ!

●ステージによって正解はさまざま

※この記事は月刊モトチャンプ2023年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】