モンキーのカタログを見ると、なんだか涙が出る
モンキーのカタログを見ると、なんだか涙が出る。――そう言うと少し大げさに聞こえるかもしれない。けれど、ページをめくるたびに、当時の空気や匂いまで一緒によみがえってくるのだ。
1984年。中学生になったばかりの13歳だったボク(津田洋介)は、自転車でひたすらバイク屋を回っていた。頭の中はすでにバイクと女の子でいっぱい。フルスロットルをキメる高校生のジブンを勝手に思い描きながら、日々カタログ収集にいそしんでいたのである。
ナナハンのカタログはさすがにもらいづらかったけれど、400ccクラスまではフルラインナップの勢いで集めていた。
自動車ディーラーへ行けば、「誰が買うんですか? パパですか?」と営業マンに迫られ、住所と名前を書かされたりもした。でもバイク屋のオヤジは、そんな野暮なことは言わない。
「どれでも持っていきな!」
いい時代だった。
そんなカタログを教室へ持ち込み、休み時間になるとバイク好きの友人と「あれがいい」「これが速そうだ」と熱心に眺めた。もちろん、モンキーのカタログもそのひとつ。
その友人が高校生になって初めて買った中古バイクが、1978年式のモンキー(Z50J)だった。
「え? それ買ったの!(笑)」
なぜかみんな笑ってしまう。でも、決してバカにしているわけじゃない。見ればニヤッとして、乗れば楽しくて、話題にすれば盛り上がる。それがモンキーだった。
そして歴代カタログを改めて並べてみると、その親しみやすさは紙の上にもちゃんと表れている。
真面目な商品カタログなのに、遊び心が止まらない!
「さあ、10位からカウントダウン!」ここからは、数ある8インチモンキーのカタログから「これはイイ!」と思った10冊を勝手にランキング。
選考基準? そんな難しいものはありません。見た瞬間にニヤッとするか。モンキーらしいか。そして、もう一度見たくなるか。それだけです。
第10位 2007年 BA-AB27

モデル末期となる2007年。価格は20万円を超え、21万5250円となっていたモンキー。どこか落ち着いた雰囲気で、長寿モデルらしい佇まいを見せる1冊だ。
第9位 1999年 BA-AB27

消費税抜きなら20万円を切る19万1000円で販売されていた1999年モデル。背景に使われているのは、モンキーの原点でもある遊園地。歴史を知ってから見ると、じつに意味深なカタログだ。
第8位 2009年 JBH-AB27

FI化された2009年モデルは、1970年代の“4L風”タンクを採用。そのカタログでモンキーが佇む場所は……まさかのジャングル! 「超モンキー出現!」の世界観まで含めて、遊び心全開である。
第7位 2005年 BA-AB27

アメリカンなガレージを背景に、モンキーとゴリラが並ぶ1枚。原点回帰したカラーリングとも相まって、昭和感を匂わせる仕上がり。眺めているだけで、ガレージに1台置きたくなる。
第6位 2006年 BA-AB27

2006年発売の40周年スペシャル。かつての初期型Z50Mを思わせる赤×黒のチェック柄がポイントで、車体だけでなくカタログそのものまで“記念モデル感”たっぷり。
第5位 1995年 A-Z50J

シックな装いのお猿さんが主役。カタログ裏面ではアバウトな技術解説を展開していて、真面目に説明しているはずなのに、どこか肩の力が抜けている。そこもまたモンキーらしい。
第4位 2005年 BA-AB27

パッと見たらモノクロ写真? と思わせるほど、クロームメッキをふんだんに使った「リミテッド」。専用キーまでクロームという徹底ぶりで、その世界観をそのままカタログにも落とし込んでいる。
第3位 1981年 Z50J-I

1981年当時の空気感を、おしゃれなイラストで閉じ込めた「レジャーバイク」カタログ。
モンキーだけでなく、ゴリラ、ダックス、R&P、ラクーンと個性派がズラリ。「楽しさフル装備。遊び心あふれる個性派の仲間たち。」というコピーも含めて、当時のホンダが小さなバイクを“遊び道具”として見せていたことがよく分かる1冊だ。
第2位 2000年 BA-AB27

レコードジャケット風デザインに、大きく踊る文字は「MONKEY A GO! GO!」。
余計な説明はいらない。
もう「行け行けモンキー!」だけでいいじゃないか! という潔さが清々しい。モンキーという商品のキャラクターを分かっていなければ、なかなかできないカタログだ。
第1位 1978年 Z50J-I ゴリラと猿がドーン!

そして勝手に選ぶ第1位は、1978年のZ50J-I。
このカタログ、まず普通のバイクカタログとはサイズからして違う。定型をあえて外し、A3サイズをフルに使ってモンキーと兄弟モデルのゴリラ、さらに巨大なゴリラまで登場する。
キャッチコピーも強烈。
「NEWっと、出たッ!」
青空、ヤシの木、巨大ゴリラ、サファリ風の人物、そしてモンキー&ゴリラ。
新型バイクのカタログなのに、画面の情報量がとにかく多い(笑)。でも、不思議とゴチャゴチャして見えない。むしろ「なんか楽しそう!」が先にくる。
裏面も負けていない。「あなたのホビー心を満たすのは、痛快なゴリラか、粋なモンキーか。」というコピーとともに、2台の違いをこれでもかと遊びながら見せている。商品説明をしているのに、読み物としてちゃんとおもしろい。
モンキーは速さだけを競うバイクでもなければ、高級感だけを売りにするバイクでもない。小さな車体で遊ぶことそのものを楽しむバイクだった。
だからカタログも、カッコつけすぎない。
見た人を笑顔にして、「こんなの欲しいな」「乗ってみたいな」と思わせる。
歴代モンキーのカタログを眺めていると、車体のカラーや装備だけでなく、その時代にホンダがモンキーをどう楽しんでほしかったのかまで伝わってくる。
半世紀近く経っても「このカタログいいよね」と話題にできるのだから、モンキーってやっぱりスゴい。
バイクはもちろん、カタログまで愛玩車なのである。
※この記事は月刊モトチャンプ2024年3月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】