増車が止まらない! 理由は“青春の続き”だった
「懐かしい旧車で虫取りツーリングへ行こう」。すべては、そんな仲間内の何気ない一言から始まったという。最初に手に入れたのはタクト。そこからディオ、ジョグ……気づけば90年代を代表する2ストスクーターたちが次々と増えていった。だが、これは単なる “旧車集め” ではない。オーナーのSさんにとって、90年代スクーターは青春そのものなのだ。
当時憧れた乾いたチャンバーサウンド、自動販売機の灯りをたよりに行った真夜中のセッティング、焼き付きすらも今では笑い話だ。しかも大人になった今は、当時より少しだけ自由に使えるお金と環境がある。最初はクルマ1台分だった広さのガレージも、増車と工具や設備が充実していき2台分へ。さらに家主と交渉し、ついには3台分へ拡張。電気を引き込み、エアコンまで完備したことで、週末になると自然と仲間が集まる “秘密基地” へと進化していった。
そんなガレージ内には、吊るされたチャンバー、山積みのスクーターパーツ、使い込まれた電動工具、細かく仕分けされたウエイトローラー等のセッティングパーツが並ぶ。分かる人なら、この時点でニヤリとしてしまうはずだ。そして面白いのは、完成した車両を “飾らない” こと。むしろ完成度が高まるほど「もう1台作りたい」が始まってしまうという。カスタム好きなら分かる、 “増車沼” そのものなのである。
ガレージライフを満喫中~♪

最初は1台分のガレージからスタート。車両や工具の増加で2台分となり、さらに「3台分借りるから」と家主に交渉して電気を引き込みエアコンも完備♪

3台分のガレージを借りたので、クルマやバイクは余裕で収納。並びには仲間のガレージもある。


冬場はまだ我慢できるけど、夏場のガレージ環境は命の危険すら感じることも。そのため空調設備があるとないとでは雲泥の差で、エアコンひとつで一気にグレードアップするのである。また、電気を引き込んだことによって、エアーコンプレッサーなど設備の追加も行った。
たいていの作業は、オーナーのDIY魂で手掛ける

旧車はまず車両のレストアから始める場合が多い。磨いたり削ったりするのに、電動工具は頼れる相棒だ。ストッ
クパーツを加工したら、交換装着して走るのが楽しみのひとつ。

チャンバーはKブレイン製を中心に複数本所有。今でも新品が入手可能でオーダーにも対応してくれるそう。

まるでアート?な、Sさんによる肉抜き加工がされた駆動系カバーの数々。

精度が必要とされるキャブレターのセッティングパーツはKN企画製を愛用。後ろに見える予備?のプラグの数もハンパない!

2スト50ccスクーターの速さのキモとなる、変速回転数を決めるウエイトローラー。重さ違いに整理されておりとても使いやすそう。
90年代スクーター文化はまだ終わらない
ガレージに並ぶ車両たちは、どれも単なる懐かし仕様では終わっていない。ライブDio ZXにスーパーJOG ZR、タクトといった人気車種をベースに、当時の “ヤンチャ感” を現代クオリティで再構築しているのだ。入手困難な紫紋、RSゼロ、キタコ、マロッシ……90年代スクーター少年たちが熱狂したブランド名の数々を採り入れながら、KN企画、KOSO、ステージ6等の現在でも新品で入手できるパーツを組み合わせている。ストロボライン、ラップ塗装、ワンオフチャンバー、ロングエンジンハンガー、エンジンスワップなど、1台ずつカスタムテーマが違うものの、その内容はとても濃い。
しかも驚くのは仕上げの丁寧さだ。フレーム裏まで塗り込まれたペイント、徹底的に磨き込まれたパーツ類、スマートに整理された配線処理など、勢いだけではない “大人の本気遊び” が見えてくる。一方で、どこか当時のラフさも残しているのがSさんのセンスなのだ。速さだけじゃない。キレイすぎるだけでもない。90年代スクーター特有の “ちょっと悪そうで楽しそう” な空気感が、今もそのまま残っているのである。
そしてSさんをはじめとする彼らは今日もまた、新しいベース車を探している。ネットオークションを開き、「次は何を作る?」と笑いながら語り合う時間こそ、この遊び最大の魅力なのかもしれない。次回以降は、この秘密基地に並ぶ濃すぎる90年代マシンたちを1台ずつ深掘りしていく。まずは、ライブDio ZXか、それともスーパーJOGか……増車が止まらない理由は、まだまだ終わりそうにない。
所有マシンは随時ご紹介します








※この記事は月刊モトチャンプ2023年6月号を基に加筆修正を行っています

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