お便り 燃料代の安いディーゼルエンジン、なんでバイクにはないの?

投稿者:大阪府/優子さん

チェンの回答

ガソリン価格が高騰している今、「軽油の方が安いなら、バイクもディーゼル化すればいいのでは?」と思ったことがある人もいるんじゃないだろうか。

実際、ディーゼルエンジンといえばトラックや重機のイメージが強いけれど、クルマの世界ではかなりメジャーな存在。欧州では昔から一般的だし、日本でもマツダの“スカイアクティブD”など、乗用車向けディーゼルエンジンが話題になったこともある。それなのに、なぜバイクではほとんど見かけないのか? 「燃費も良くて燃料代も安いなら、むしろバイク向きでは?」と不思議に思うのも分かる。

まず、ディーゼルエンジン最大のメリットは“経済性”。燃料が軽油だから、ガソリンより燃料代を安く抑えられるんだ。もちろん燃費性能も優秀で、その理由のひとつが“高い圧縮比”。一般的なガソリンエンジンの圧縮比が10前後なのに対して、ディーゼルエンジンは20を超えるような高圧縮で燃焼させる構造になっていて、さらにスロットルボディがなくポンピングロスも少ない。こういった構造が燃費の良さにつながっているワケ。

ただし、この“高圧縮”こそが、実はバイクと相性が悪い大きな理由でもある。高圧縮に耐えるためには、エンジン内部の部品をかなり頑丈に作らなければいけない。その結果、エンジン自体が大きく、そして重くなってしまうし、ディーゼル特有の振動や騒音も無視できないポイント。クルマや大型車ならまだしも、スペースが限られていて、ライダーがエンジンの鼓動をダイレクトに感じるバイクでは、このデメリットがかなり大きい。しかも、エンジン内部の部品が重いため、高回転化も苦手。レスポンスもガソリンエンジンほど鋭くできないので、“回して楽しい”というバイクらしいフィーリングとも少し方向性が違ってくる。さらに構造上、ディーゼルエンジンは小排気量化すると熱効率が下がりやすいという弱点もある。小さく軽く、高回転まで気持ちよく回ることが求められるバイクとは、なかなか噛み合わないんだよね。

加えて、ディーゼルエンジンは排気ガス対策も大きな課題。ひと昔前には黒煙問題などニュースになったけれど、現在のディーゼルエンジンはさまざまな補器類や制御技術によって高いレベルでクリアしている。ただ、そのぶん構造は複雑化し、重量やコストも増えてしまう。そんなワケで、燃費や燃料代だけを見ると魅力的なディーゼルエンジンだけど、バイクに搭載するとなるとデメリットの方が大きい。結果として、“量産バイクではほとんど採用されていない”というのが今の答えなんだと思うよ。

まとめ

●経済性は◎だけど大きくて重い
●エンジン特性とバイクとのマッチングが×

著者紹介 

チェン

元レースメカニックで、カスタムビルダーや二輪誌編集部員のキャリアを持つ。現在はスーパーモトのレースに参戦し、ハイエースで全国を飛び回っている。

※この記事は月刊モトチャンプ2023年6月号を基に加筆修正しています。