納車から20年、今も飽きずに乗り続けている“相棒”

筆者がサンバーという軽自動車を意識したのは2004年のこと。当時、私はイベントレースに積極的に参戦しており、ホンダ・ステップワゴン(LA-RF3)にBMW・R1100Rを積み込んで、各地のサーキットへ練習走行に通っていた。
ある日、ステップワゴンよりも一回り小さなサンバーに、スズキ・GSX-R750を積んでいる人を筑波サーキットで発見。車内を見せてもらうと、ラダー2本に発電機、大きな工具箱、ヘルメット、レザースーツなどのレース用品一式が、まるでパズルのようにピッタリと収まっている。しかも、その状態で2名乗車ができると教わり、心底感動したのだ。
その2年後、どこからか「サンバーが生産終了になりそうだ」という噂が流れてくる。それを聞きつけ、あれほどの傑作が新車で買えるのは今が最後かも、などと勝手に焦った私は、2006年7月にステップワゴンからディアスワゴン(サンバーの5ナンバー仕様)に乗り換えたのだ。唯一の不安は、自身が所有する初の軽自動車ということだったが、20年が経過した今なお1ミリも飽きていないので、焦りからとはいえあの日の決断は間違いではなかったと断言できる。
ちなみにサンバーは、4ナンバーの「サンバーバン」と「サンバートラック」、5ナンバーの「ディアスワゴン」に大別される。バンタイプのサンバーには「サンバーバンディアス」というグレードもあるため、ディアスワゴンと混同されやすい。だが、5ナンバーの方はサンバーという名称が付かないほか、カタログにすら一切記載されていない。また、フロントの足周りにスタビライザーが追加されていたり、ブレーキディスク径が大きかったりと、違いは多岐にわたっているのだ。
上はディアスワゴンにスーパーカブ50デラックスを積んだ状態。フロントタイヤをセンターコンソールに当て、タイダウンで縛るというのが定番の積載方法だ。R1100Rが入ったときには感動すらした。

ほぼ唯一の不満、それは段差通過時の“突き上げ感”だ
新車から20年。積算計は10万kmをやっと超えたあたりなので、年間に5,000kmしか乗っていないことになる。それでも北は青森、西は鈴鹿まで足を延ばしたことがあるほか、フェリーを使って佐渡島にも渡っている。加えて仕事柄、WGPの250ccチャンピオンやアニメ声優さんを助手席に乗せたことも。
そんな縦横無尽に活躍しているディアスワゴンだが、ハイエースらと同じフルキャブオーバー型なので、フロントタイヤが段差を通過した際の突き上げ感が大きいのがネックだ。これはサスストロークの短さにも原因があるようで、ガツンと来たあとの収束も遅め。4ナンバーのサンバーよりはマシという意見もあるが、アスファルトの荒れた道を延々と走っているとかなりつらいのは事実だ。
一時期は社外ショックユニットの換装も検討したが、ローダウンもしくはリフトアップとの組み合わせが前提の製品もあり、悩み続けること20年。最近になってたまたまFBで見つけたのが「ネオチューン」だった。これは千葉県いすみ市にあるサンコーワークスが開発した純正ショックユニットのモディファイメニューで、特許も取得している。現在、これを施行してくれるショップが全国に15軒あり、筆者は千葉県市原市にある「くるま屋ユウシン」さんにディアスワゴンの作業をお願いした。

ヒアリングで減衰力を決定、施行は3時間ほどで完了した
くるま屋ユウシンの代表は松田光市さんだ。関東のイベントレースに詳しい人なら、テイスト・オブ・ツクバでGPZ1000RXレーサーを駆る彼の雄姿を見たことがあるだろう。

彼が経営するショップでは、15年前からネオチューンの施行を実施しており、年間に100台あまり、延べ1000台以上を手掛けてきたという。その7割がトランポ人気ナンバー1のトヨタ・ハイエースだが、ショックユニットが複筒式であればどんな機種でも対応可能とのこと。

施行するにあたり、まずは現状を把握するために松田さんがディアスワゴンを試乗。その横で筆者がどういう走りを望んでいるかを伝える。いわゆるヒアリングだ。ギャップ通過時の突き上げ感はもちろん、コーナリングや横風を受けた際の車体のローリングを減らしたいこと、片道300km以上のロングドライブを快適に走りたいこと、などを伝えた。
「じゃあ、基本的には減衰力を上げる方向でいいと思います」と、松田さん。30分ほどで前後4本のショックユニットを外し、奥の作業スペースであっという間に内部のオイルを入れ替えてしまった。具体的な手順としては、純正ショックユニットにチェックバルブを設け、そこから古いオイルを抜き出す。ネオチューン用のチューニングオイルは粘度の異なるものが数種類あり、それをブレンドしてユーザーの要望に応じた粘度を生成。これを先に設けたバルブから注入し、最後は低圧の窒素ガスを封入して完了となる。







運転席に座った瞬間から違いが! 理想通りの走りに大満足
作業自体は、説明を聞きながら3時間ほどで完了した。1週間ぐらい預ける必要があるのでは? などと思っていたので、これはうれしい誤算だ。

ネオチューンの施行が完了した我がディアスワゴン。運転席に乗り込んだ瞬間から、明らかに車体の揺れや沈み込みが抑えられているのが分かる。一言で表現するなら、足周りがグッと引き締められた、だろうか。とはいえこの硬さ、突き上げ感が増えてしまうのでは、などと少々不安になったが、最初の段差を通過した瞬間にその心配は霧散した。具体的には、突き上げのフィーリングが「ダンッ!」から「トン……」へと大幅に軽減。特に凹凸の多いアスファルトを走っている際は、車内が明らかに静かになったのだ。
最も気に入ったのは、ハンドルの切り始めやアクセルのオンオフ、ブレーキングで、車体の揺れや揺り返しが大幅に減ったことだ。施工前は入力に対して常にフワフワとしていて、ストローク感を演出している雰囲気があったのは事実。施工後はドライバーの操縦に対するすべての反応がスポーティーになり、回頭性が向上。加えて、旋回中や減速中に拾ったギャップに対してバネ下がしっかり動いてくれ、より踏ん張りが効くようになったのだ。
施工後、気が付けば2週間で1000kmも走ってしまった。高速巡航中、大型トラックからの横風を食らってもフラつきにくくなり、身体的な疲労はもちろん、気疲れも大幅に減った。ネガティブな要素を挙げるとすれば、段差の種類や通過速度によっては「あれっ、今みたいな状況は施工前の方がスムーズだったかも」というケースがあったことだが、それは本当に数える程度でしかない。

ディアスワゴンの場合で費用は総額5万7200円だった
さて、最後は気になる費用について。ネオチューンは純正ショックユニットの容量によって加工賃が上下し、今回は脱着作業を含む総額として提示されたのが5万7200円だった。筆者にとっては、ディアスワゴンに対する長年の悩みを解決してくれたので、費用対効果としてはかなり高いと思っている。

そうそう、施工後の帰り際に松田さんが「おそらく燃費も良くなりますよ」と言ってくれたのを半ば忘れかけていたのだが、1000kmを走っての平均燃費が16km/Lを超えたので、そのコメントを思い出した次第。この間、長野や富士山周辺など山がちなところを走っただけでなく、暑かったのでエアコンをほぼ常時オン。うち1/3の道程は2名乗車だった。こういう場合、これまでなら良くて14km/L台だったので、確かに燃費が向上したことを実感。おそらく車体の揺れが抑えられたことで、自然とアクセルの無駄踏みが減ったのだろう。
近年は衝突被害軽減ブレーキの影響か、サスが硬い方向でセッティングされている4輪が多いと松田さん。トランポに限らず、普段使っている乗用車の乗り心地を少しでも良くしたいと思っている方は、相談してみてはいかがだろうか。


