ヤマハ Fazzio……368,500円(2026年4月24日発売)

アセアン市場向けに企画されたファッション系スクーター「Fシリーズ」のエントリーモデル、それがFazzioの立ち位置だ。コンセプトは「Simple & Casual Mover as a Lifestyle-wear」で、ライダーのファッションともコーディネートしやすいスタイリングや車体色を目指して開発された。
110/70-12というタイヤサイズは前後とも共通ながら、マキシス製の標準装着タイヤの銘柄はフロントがM6219Y、リヤがM6220と異なっている。指定空気圧はフロント:150kPa、リヤ:225kPaだ(1名、2名乗車時とも)。
車体色はライトグレーイッシュリーフグリーンソリッド1、ダルブルーソリッドB、ペールグリーニッシュイエローソリッド1、ブラックメタリック12の4種類。カラーの異なるヘッドライト&前後ウインカーリングカバー、シートカバーが用意されており、それらを装着した際のイメージが見られるシミュレーターがヤマハの公式サイトに設けられている。

ワイドオープンで約3秒間アシスト、唐突感は一切なし

原付二種スクーターは、エンジンが水冷か空冷かでパワーに大きな差がある。ヤマハを例に挙げると、水冷4バルブのシグナスXは12PS、空冷2バルブのJOG125は8.3PSだ。つまり、およそ44.5%もの開きがある。それでも空冷が生き残り続ける理由は、構造がシンプルゆえに製造コストが安く、かつ軽量に作れることにある。車重に注目すると、シグナスXの126kgに対してJOG125は95kgなので、この31kg差は空冷にとって圧倒的なアドバンテージだ。

そんな予備知識を踏まえつつ、いよいよ国内販売がスタートしたFazzioに跨がる。エンジン始動時のセル音はSMG(スマートモータージェネレーター)のおかげで静かだが、いざアイドリングが始まると、メカノイズが耳へ、微振動が体へ伝わるので、エンジンが空冷であることを実感する。もちろん十分に許容範囲ではあるが、車両価格がシグナスXに迫ること、またファッションに敏感なユーザーをターゲットにしていることなどを考えると、上品さというか、静粛性や低振動のためにもう少し工夫が欲しかったと思う。

アクシスZの124cc空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒をベースに、SMGのモーターで駆動力を補助するパワーアシスト機能を追加。ゼロ発進時にスロットルを大きく、または素早く開けると最大で約3秒間作動する仕組みだ。バッテリーはリチウムではなく鉛で、電圧が低くなっているときなどには作動しない。なお、オン/オフ可能なアイドリングストップ機能も設けられている。
筆者が2022年に試乗したインドからの輸入モデル、ヤマハ「シグナス レイ ZR ハイブリッド」にも同系のパワーユニットが搭載されていた。バイク館イエローハットでは現在も輸入販売を行っており、車両価格は23万9900円となっている。試乗インプレッションはこちら

とはいえ、動力性能に関してネガティブな印象を持ったのはその程度。走り始めてすぐに口から漏れたのは、「コイツ、速いぞ」という率直な感想だった。ゼロ発進時のみに限られるが、スロットルを大きく開けたときの力強さは並み居る水冷勢に迫るほど。モーターによるパワーアシストは実に自然で、メーター内の「ASSIST」表示を見ていないと気付かないレベルだが、ビギナーを慌てさせないという点においてこれは正解だ。特に上り勾配での発進時に効果的であり、約3秒間のアシストとはいえ実に心強い。

最高出力はアクシスZやJOG125と同じ8.3PSなので、巡航中のパワーフィールはそれなりではある。ただし、車重が97kgと軽いこともあって、街中では意外なほどキビキビと走ってくれる。ちなみに燃費の目安となるWMTCモード値は、アクシスZやJOG125の51.9km/Lに対し、Fazzioは56.4km/Lを公称。加えて燃料タンク容量は5.1Lと大きめなので、通勤や通学に使うユーザーにとってこのデータは朗報と言えるだろう。

軽快感と安定性とのバランスが良好、ブレーキも良し

Fazzioに跨がった際、まず感心したのが足元の広さだ。フロアボードは完全にフラットであり、最も狭いセンター部分ですら前後長は235mmも確保されている。これは荷物を置きやすくするのが狙いとのことで、靴のサイズが27.5cmの筆者にとっては非常にありがたい。

前後12インチホイールを採用するFazzioは、ヘッドライトが高い位置にあるのでやや大柄に見えるが、車体寸法は前後10インチのアクシスZとほぼ同等であり、なおかつ車重は3kgも軽い。そこから生まれるハンドリングは、軽快感と安定性がうまくバランスしており、ビギナーでも低速域からフラつかずに走れるのが特徴だ。

ハンドルに軽くきっかけを与えると、ごく自然に舵角が入り、それによって生じたバンク角を維持しながらスムーズに旋回する。一言で表現するなら「扱いやすい」となるが、この傾向は信号が青に変わってすぐに左折するようなシーンから、峠道の下りの中~高速コーナーまでほぼ一定であり、ヤマハのスクーター作りの手腕に感心しきりだ。

前後とも12インチのアルミキャストホイールを採用。ブレーキはフロントがシングルディスク、リヤがドラムだ。左レバーの操作でフロントにも制動力を配分するUBS(ユニファイド・ブレーキ・システム)を採用する。

ブレーキは、フロントがシングルディスク、リヤがドラムで、左レバーを引くとフロントにも制動力が配分されるUBS(ユニファイドブレーキシステム)を採用。このUBSが実に優秀で、街乗りであれば右手はスロットル、左手はブレーキ操作だけに集中できる。ABSは非採用だが、ロック寸前までコントロールしやすい上に、前後とも110mm幅というワイドなタイヤを履いていることもあって、ブレーキ性能自体には不満はない。

足代わりに使われる原付二種スクーターにとって、各種装備の充実度は重要だ。まずシート下のトランクについては容量が約19.1Lで、アクシズZの約37.5L、JOG125の約21.3Lよりも小さい。ヤマハのジェットヘル(例:YJ-14 ZENITH)であれば収納可能とのことだが、筆者の愛用するアライのVZ-RAM(59-60サイズ)は入らなかった。どうしても積載量を増やしたいのであれば、純正アクセサリーのリヤキャリア(1万3200円)を装着し、トップケースを追加するのが最善だろう。

シート下の収納スペースの容量は約19.1Lで、原付二種スクーターとしては小さめの部類に入る。一方、その後方にレイアウトされた燃料タンクは容量5.1Lと大きめだ。シートヒンジ付近にヘルメットホルダーあり。

リッド付きのフロントポケット内には、USB Type-A端子対応充電ソケットが備えられており、スマホの充電などに重宝する。またスマホと言えば、専用アプリ「Y-Connect」に対応している点も今どきの装備と言えるだろう。いわゆるコンビニフックはヤマハ初となるカラビナ型で、フロントパネルだけでなくシートの前方下部にも設置。そして、スマートキーは使ってみるとやはり便利であり、コスト高になってもこれを盛り込んだところに開発者のこだわりが感じられる。

右側のオープン型ポケットには600mlサイズのペットボトルが収納可。左側のリッド付きポケットの奥にはUSB Type-A端子対応充電ソケットあり。カラビナ型フックは1.0kgまで許容する。

空冷エンジンを選択してまで軽さにこだわったFazzio。これより1万6500円安いホンダ・リード125の方が上品かつ上質なエンジンフィールだけに、もう少し静粛性に注力してほしかったと筆者は思う。ただ、おそらくFazzioの購買層にとってそれは些細な問題であり、ベスパのプリマベーラ125(51万7000円)や同LX125(46万2000円)よりも圧倒的に安いことに注目しているはず。アセアン市場にはこうしたファッション系スクーターが豊富にあるので、Fazzioの売れ行き次第では日本にもそれらが次々と導入されるに違いない。

ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)

シート高は765mmで、アクシスZよりも5mm低い。乗車1Gでリヤショックがほどよく沈むこともあって、足着き性はご覧のとおり良好だ。ハンドル位置はやや高めであり、Uターンのような小回りをする際に手と膝が干渉しにくいのがうれしい。また、フロアボードが広いのも好印象で、靴のサイズが大きなライダーでも窮屈に感じないほか、乗り降りがしやすいのも美点だ。

ディテール解説

リヤサスペンションはスクーターで一般的なユニットスイング式で、ショックユニットは左側に1本のみ。乗り心地は良好だった。
ハンドル幅が広く見えるが、全幅685mmはアクシスZと同値だ。純正アクセサリーでグリップウォーマー180C(1万9580円)を用意する。
右側にハザードスイッチが設けられている点に注目。その上にはアイドリングストップのオン/オフスイッチあり。
長円デザインを各部に用いるFazzio。LCDメーター自体は長方形だ。最上段には着信通知、アプリ通知、Y-Connectの各アイコンと、スマホのバッテリー残量計が並ぶ。中央の「ASSIST」アイコンは、パワーアシストが作動すると周囲に矢印が表示される。
座面が広く、座り心地の良いシート。純正アクセサリーでブラックとブラウンのシートカバー(各4950円)、クールメッシュシートカバー(8250円)、ローダウンシート(1万1000円)などが用意されている。
シート前方下部にもカラビナ型フックあり。こちらも1.0kgまで許容する。
灯火類ではヘッドライトとマーカーランプにLEDを採用。外周のヘッドライトリングカバー(3520円)は純正アクセサリーで7色用意されている。
テール/ストップランプ、前後ウインカーはフィラメント球だ。これらのリングカバーも色違いバージョンが純正アクセサリーで用意される。

Fazzio(2026年モデル)主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BJ-SEL6J/E35FE
全長/全幅/全高 1,820mm/685mm/1,125mm
シート高 765mm
軸間距離 1,280mm
最低地上高 135mm
車両重量 97kg
燃料消費率 WMTCモード値 56.4km/L(クラス1) 1名乗車時
原動機種類 空冷・ 4ストローク・ SOHC・ 2バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 124cm3
内径×行程 52.4mm×57.9mm
圧縮比 10.2:1
最高出力 6.1kW(8.3PS)/6,750r/min
最大トルク 9.8N・m(1.00kgf・m)/5,000r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 0.84L
燃料タンク容量 5.1L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V,6.0Ah(10HR)/YTZ7V
1次減速比/2次減速比 1.000/8.258 (50/16 x 37/14)
クラッチ形式 乾式,遠心,シュー
変速装置/変速方式 Vベルト式無段変速/オートマチック
変速比 2.201~0.742:無段変速
フレーム形式 アンダーボーン
キャスター/トレール 27°00’/85mm
タイヤサイズ(前/後) 110/70-12 47L(チューブレス)/110/70-12 52L(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/機械式リーディングトレーリングドラムブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック・ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
乗車定員 2名