ニュル24時間の知見を日常に落とし込んだ「MORIZO RR」

GAZOO Racing(ガズーレーシング)はGRヤリス26式をベースにした特別仕様車が2モデル存在する。「GRヤリスMORIZO RR」と「GRヤリスSébastien Ogier 9x World Champion Edition」である。前者は2025年のニュルブルクリンク24時間レース参戦を起点に作り込んだ1台。後者はセバスチャン・オジエ選手のWRC(FIA世界ラリー選手権)2025年シーズンにおけるドライバーズチャンピオン獲得を記念した1台だ。「9x」は歴代最多タイとなる通算9回目のタイトル獲得を意味する。

MORIZO RRは日本では100台限定(欧州一部地域でも100台限定販売を予定)で、GR appを通じて抽選を受け付ける予定。オジエ9xも日本100台+欧州100台が限定販売され、MORIZO RRと同様、GR appを通じて抽選が行われた。
2026年の東京オートサロンで世界初公開されたMORIZO RRは、マスタードライバーのモリゾウ(トヨタ自動車会長の豊田章男氏)を中心に参戦した2025年のニュルブルクリンク24時間レースが開発の出発点となっている。GR-DAT(専用開発の8速AT)搭載車で参戦した同レースでは、クルマとドライバーとの対話、一体感の高さ、信頼性や安心感をキーワードにクルマづくりを行ない、レースを戦った。そのエッセンス折り込んだ特別仕様車である。

「エッセンスを折り込んだ」のがポイントで、決してニュルでタイムを追求するためのガチガチの仕様としているわけではない。MORIZO RRのネーミングでは、2024年にレクサスLBX MORIZO RRが発売された。このクルマはモリゾウのために開発したわけではなく、レーシングカーからコンパクトカーまで、たくさんのクルマに乗り尽くした本物のクルマ好きを象徴する存在として「モリゾウ」のネーミングを冠し、開発された。本物のクルマ好きを笑顔にし、ハンドルを握った瞬間に「ワオッ」と言ってもらえるようなクルマにするのがコンセプトだ。

「日常使いも許容できるようなGRヤリスを作りたい。そこに、ニュル24時間の活動をうまく融合したのがMORIZO RRです」と開発担当者は話す。「日常とニュルでは方向性が違うように感じるかもしれませんが、ニュルは1周が25kmある。1周約4.5kmの富士スピードウェイに比べるとかなり広い範囲で適合しなければならず、ロバスト性が求められます。広く適合する開発が日常というテーマにうまくはまり、結果的に乗り心地が良くなっています」

カーボン製リヤウイングと専用足まわりが生む乗り味
GRヤリスMORIZO RRは専用装備としてカーボン製専用リヤウイングを装備する。このリヤウイングによって得られる強力なダウンフォースを前提に、ショックアブソーバーは路面追従性を高める方向でチューニングした。具体的には、フロントの伸び側減衰力をダウン、リヤは低速域の縮み側減衰をダウンし、伸び側は減衰を高めている。「どちらかというとロール姿勢を少し下げる方向です。沈みロールで旋回するようにしたのですが、これが結果として乗り心地に効いています」(開発者)

富士スピードウェイの構内路を走った、というより移動するような感覚と速度レンジで走ったのだが、やる気満々なエクステリアから受けるイメージとは裏腹に、乗り心地はいい。硬いか柔らかいかで言えば硬い部類に入るが、路面追従性が高いので、不快なショックは伝わらず入力が巧みに丸め込まれている。そこが乗り心地に効いているのだろう。

専用色グラベルカーキとイエロー加飾で特別感を演出
ボンネットフードはカーボン。カーボン地そのままなので一発でスペシャルな材料を使っていることが認識できるし、フードを持ち上げてみれば、とてつもない軽さを実感できる。ボディカラーは専用のグラベルカーキ。カーキはともするとミリタリー色が強くなりがちなので、日常使いにマッチした落ち着いた色味になるよう意識して開発したとのことだ。

MORIZOのメンバーカラー(?)であるイエローは、エクステリアではブレーキキャリパー、インテリアではスエード表皮ステアリング(26式の新ステアリングなのがポイント)およびシフトノブ&ブーツ、パーキングブレーキレバー&カバー、シートに施され、いいアクセントになっている。
4WDの制御モードは、ベース車の「GRAVEL」に置き換える形で「MORIZO」を設定。ニュルを安心して走り切るために最適な前後駆動力配分とし、GRAVELの前53:後47から、前50:後50に変更している。

WRC最多タイ9度目の王座を記念する「Ogier 9x」

GRヤリスSébastien Ogier 9x World Champion Editionは、「応援してくださっているファンの皆様への感謝を込めて開発」したモデルで、Aero performance packageがベース。ボディカラーはグラビティブラックと呼ぶ、マット(つや消し)のブラックを専用に開発し採用した。ブレーキキャリパーはオジェ選手のシグネチャーカラーであるブルーとし、ラジエターグリルやステアリングスイッチにフランス国旗がモチーフのブルー/レッド/ホワイトを配色している。トランスミッションは6速MT。パーキングブレーキは縦引きだ。

2台で異なるMORIZOモード、オジエ仕様にはSEB.モードも搭載
4WDモードはベース車の「TRACK」と置き換える形で、オジエ選手と共同開発した「SEB.」モードを設定。TRACKモードが前60:後40〜前30:後70の可変制御なのに対し、SEB.モードは前40:後60の固定配分とした。前輪の旋回性を確保しつつ、後輪駆動力でクルマをコントロールしやすくするのが狙い。高速域での車体コントロール性を高め、競技シーンでのタイム短縮に寄与するモードだ。

また、ベース車の「GRAVEL」に置き換える形で「MORIZO」モードを設定。トラクションと旋回性能の両立を狙い、加速時は前輪拘束力を最大(直結)とし、制動時は必要分だけ拘束を緩める制御としている。「モリゾウがラリーで走り込んで導き出した駆動力配分を、オジエ選手が気に入り採用」した制御で、リヤを振り回して走るようなデモランするのに最適なモードだそう。MORIZO RRのMORIZOモードとは制御内容が異なる。
モータースポーツを起点に「もっといいクルマづくり」をするのがGRの使命。ベース車は選ぶ人の裾野を広げる役割に徹して進化させ、特別仕様車には個性的なキャラクターを与える方向だ。

