Chevrolet Corvette Z06
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Aston Martin Vantage S

Z06はエンジンも旋回もレーシングライク

高級スポーツカー市場において、ポルシェ911が絶対的中心であるという事実は揺るぎない。だが少しまわりを見渡すだけで、それに負けず劣らずの魅力的なクルマがあることに気付く。この2台は、そんなスポーツカーの最新にして最右翼。乗らずに死ぬのはもったいない!

「コルベット Z06コンバーチブル」と、「アストンマーティン ヴァンテージS」。この2台をもって、スポーツカージャンルの定番である「ポルシェ 911」への“カウンター・スポーツ”としての魅力を探るというお題を編集部から頂戴した。

なるほどコルベットはフェラーリに憧れているとしながらも、そして「ヴァンキッシュ」は911など鼻にもかけない素振りを見せながらも、どちらもセールス面でも性能面でも、911を強烈に意識している。

となると911イーターとしてコルベットZ06コンバーチブルを捉えたとき、その仮想敵は何になる? 上位機種にツインターボの「ZR1」を持つことを考えても、それは911 GT3だと言えそうだ。しかも今回はコンバチだから、「S/C」が見えてくるか。筆者はまだS/C未体験だが、ともかくそのイメージで見ても、Z06はかなり魅力的な一手だと筆者は感じた。

Z06の魅力はずばり“扱いやすさ”だ。特筆すべきは劇的にそのシャシー性能が向上したこと。ベースモデルに対して3.6インチ(9.4cm)広げられた全幅。そこに収まるフロント275/30ZR20、リヤ345/25ZR21のミシュラン・パイロットスポーツ4S。ミッドシップのフロント荷重に対し、常用域におけるフロントタイヤの剛性がやや高すぎるのは難点だが、足まわり自体は極めてしなやかに動いており、値段に相応しいアメリカンラグジュアリーを体験できる。

それでいて、走らせればその完成度は驚くほど水準が高い。オープンボディにして剛性の不足をまったく感じさせないのは、そもそもの設計がコンバーチブルありきで作られていたことと、「マグネティックライドコントロール4.0」による減衰力コントロールのおかげだろう。標準モデルに見られたちょっとナーバスなフロントの切れ込みや、リヤサスの動きが見事に抑え込まれている。

コルベットZ06のタイヤは前275/30ZR20後345/25ZR21という極太サイズ。タイヤはこちらもミシュランだが、銘柄はパイロットスポーツ4Sとなる。「ZP」の刻印はランフラットの証。
コルベットZ06のタイヤは前275/30ZR20後345/25ZR21という極太サイズ。タイヤはこちらもミシュランだが、銘柄はパイロットスポーツ4Sとなる。「ZP」の刻印はランフラットの証。

自然吸気の5.5リッターV8ユニットは、回せばかなりけたたましい。そしてDOHC化されている割に、常用される中間領域が少し重苦しい。しかしこれを少しがまんしてアクセルを踏み続ければ、トルクバンドが訪れ、その本領を発揮し始める。

高回転型の特性は、623Nm/6300rpmという最大トルクの発生ポイントにも端的に表れている。その上で8550rpmまで回しきって初めてZ06は、646PSの最高出力を発揮する。常用域での振動の少なさもさることながら、ゾーンに入ってからの切れ味は見事のひとことだ。5.5リッターを回しきり、繊細なアクセルコントロールをも受け付ける柔軟性の高さは、自然吸気ならでは。そしてフラットプレーンクランクを投じた効果である。

極めつけはこうしたシャシーとエンジンの組み合わせを、ミッドシップレイアウトでまとめ上げたことだ。フロントタイヤが受け止めた縦Gを、ブレーキをリリースしながら横方向へ転換して行くときの一連の動きは、惚れぼれするほどレーシングライクだ。それはGT3のようにダウンフォースを感じさせる走りではないけれど、リヤステアも使わず純粋なメカニカルグリップでこの旋回性を実現する走りには驚くばかり。パワーの出方はすこぶるリニアだから、ターンアウトで自信をもってアクセルを踏み込んで行ける。見た目に反してZ06は、従順なモンスターだ。走り終えて見たインジケーターで、4輪の内圧がきれいに揃っていたのも感動的だった。ホットに走らせたあとルーフを開け放てば、ラグジーにクールダウンできるその軽さとのギャップも素敵すぎた。

ヴァンテージSはすべてがエモーショナル

高級スポーツカー市場において、ポルシェ911が絶対的中心であるという事実は揺るぎない。だが少しまわりを見渡すだけで、それに負けず劣らずの魅力的なクルマがあることに気付く。この2台は、そんなスポーツカーの最新にして最右翼。乗らずに死ぬのはもったいない!

Z06で極上のミッドシップライドを堪能したあとに向かえたヴァンテージSは、こちらも頑固一徹なブリティッシュテイストを炸裂させた。

その味わいを象徴するのは、動きの軽さだ。フロントタイヤの反発感こそコルベットと同じでやや高すぎる傾向にあるが(こちらはパイロットスポーツS5だ)、とにもかくにもヴァンテージSの足さばきは、コルベットに対して軽快だ。標準モードではダンパーが(といっても標準がSPORTモードではあるが)、路面の起伏をトコトコと上手にいなす。フロントエンジンの重さによって、ただステアリングを切っただけでも前に荷重が掛かるから、カーブをヒラリと曲がることができる。コルベットZ06に比べ、全長で190mm、全幅で45mm、ホイールベースにいたっては20mm短いこともあり、数字通りのコンパクトな走りが堪能できるのだ。

メルセデス製がベースとなる4.0リッターV8ツインターボは、通常のヴァンテージから+15PSとなる680PS/800Nmを実現(トルクは変更なし)。スロットルレスポンスもより過激な方向に調律されている。
メルセデス製がベースとなる4.0リッターV8ツインターボは、通常のヴァンテージから+15PSとなる680PS/800Nmを実現(トルクは変更なし)。スロットルレスポンスもより過激な方向に調律されている。

メルセデス由来の4.0リッターV8ツインターボは、常用域でのサウンドが野太く荒々しい。エキゾーストの影響も当然あるが、メカニカル的にもクロスプレーンのクランクを使うことで左右バンクの爆発が揃わず、排気干渉が起こるからだ。

対してその回り方は、二次振動を打ち消し合うからとてもスムーズ。3000rpmから発揮される800Nmの最大トルクには文句のつけようもなく、コッチリとしたボディを小気味良く走らせて悦に浸れる。

しかしその速度が高まるほどに、ヴァンテージSは本性をさらけ出してくる。物理的な言い方をすれば、重心が高い。そもそも全高が1275mmと、Z06(1225mm)に対して50mmも高いのだが、特に運転していると、ノーズに重心の高さを感じる。ステアリングを切ったときの反応がワンテンポ遅く、その動きは較べてしまえばゆっくりと緩慢だ。

前後方向ではエンジンの搭載位置をフロントミッドシップして重量配分を50対50に整えているが、ウェットサンプだけに重心位置としては、Z06のミッドシップ/ドライサンプレイアウトには敵わないというのが、正直な感想である。

だけれどそれが、ラップタイムは別としてキャラクターとしてデメリットになっているかというと、そうとは言い切れないのがまた面白い。

Z06の回頭性の上質さやトラクション性能の高さは、乗り手によっては引き出しがたい面もあり、あまりにリニア過ぎて個性がないと感じるドライバーもいるだろう。対してヴァンテージSは動きがわかりやすく、足まわりを引き締め、エンジンを回して行けば挑んでいる感じがグッと高まる。それが、強烈な個性にまで昇華されている。

ターボの加速はZ06のLT6ユニットよりも明らかにパンチが効いていて、レスポンシブだ。それでいて二次曲線的な盛り上がりが絶妙になめされているから、680PSの最高出力をして扱いにくさがない。

ヴァンテージSのタイヤは前275/35R21後325/30R21、銘柄はミシュラン・パイロットスポーツS5だった。ホイールは写真の5ダブルスポークを含め、全11タイプから選ぶことが可能だ。
ヴァンテージSのタイヤは前275/35R21後325/30R21、銘柄はミシュラン・パイロットスポーツS5だった。ホイールは写真の5ダブルスポークを含め、全11タイプから選ぶことが可能だ。

トランスアクスルとE-デフでは飽き足らず、リヤのサブフレームブッシュをリジット化し、かつスプリングをソフトにして、トラクションを稼いだこともリヤスタビリティの高さに大きく貢献している。おそらくトラックに持ち込めば、スキッドしてからのコントロール幅の広さはヴァンキッシュSに軍配が上がるのではないか? つまり911がRRレイアウトを貫いてここまで成長したように、アストンマーティンもFRレイアウトにこだわって、このエモーショナルなハンドリングのキャラクターを得ているのだ。

個人的にはV12ヴァンテージのような、ゆっくり走らせても味わい深い足まわりの方が断然好みだ。しかしタイヤの剛性も含めてこのソリッドさがあるからこそ、ヴァンテージSはトラックに持ち込んだときに思い切りその走りを楽しむことができるのだろう。Z06も同様にそのトラクションを、段階的に解放できるコントロールユニットを備えているが、このヴァンキッシュSにも、間違いなくサーキットを走らせるための資質が備わっている。

そして何よりこのFRレイアウトを採ることでヴァンキッシュは、美しいプロポーションを得ている。エヴァンゲリオン初号機のようなボディカラーを着こなす若さは筆者にはないけれど、この美貌はアストンマーティンを選ぶ大きな理由になる。現代のスポーツカーで、素直にそのデザインに惚れ込める存在は貴重だ。

911への強烈なカウンターパンチ

高級スポーツカー市場において、ポルシェ911が絶対的中心であるという事実は揺るぎない。だが少しまわりを見渡すだけで、それに負けず劣らずの魅力的なクルマがあることに気付く。この2台は、そんなスポーツカーの最新にして最右翼。乗らずに死ぬのはもったいない!

すっかりコルベットZ06コンバーチブルVSアストンマーティン・ヴァンテージSという構図になってしまったが、つまりそれだけこの2台には、対称的な個性が備わっていたということで勘弁して欲しい。そしてどちらもポルシェ911という偉大なスポーツカーに対して、強烈なカウンターパンチが打てるだけの性能とキャラクターが備わっていることは、筆者が保証する。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2026年9月号

SPECIFICATIONS

アストンマーティン・ヴァンテージS

ボディサイズ:全長4495 全幅1980 全高1275mm
ホイールベース:2705mm
車両重量:1745kg
エンジン/モータータイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:500kW(680PS)/6000rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/3000-6000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/35R21 後325/30R21
0→96km/h加速:3.3秒
最高速度:325km/h
車両本体価格:2760万円

シボレー・コルベットZ06コンバーチブル

ボディサイズ:全長4685 全幅2025 全高1225mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1740kg
エンジン/モータータイプ:V型8気筒DOHC
総排気量:5454cc
最高出力:475kW(646PS)/8550rpm
最大トルク:623Nm(63.6kgm)/6300rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/30ZR20 後345/25ZR21
0→96km/h加速:2.6秒
最高速度:314km/h
車両本体価格:3020万円

【問い合わせ】
アストンマーティン・ジャパン・リミテッド
TEL 03-5797-7281
https://www.astonmartin.com/ja

GMジャパン・カスタマーセンター
TEL 0120-711-276
https://www.gmjapan.co.jp/

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