連載

あのコンセプトカー、どうなった?

アーバンEVコンセプトは将来の量産EVモデルの技術とデザインの方向性を示すコンセプト

2017年のフランクフルト・モーターショーでは、Honda Urban EV Concep(右)とHonda Sports EV Conceptが発表された。

Honda Urban EV Concept(アーバンEVコンセプト)がベールを脱いだのは2017年のフランクフルト・モーターショーでだった。

「将来の量産EVモデルの技術とデザインの方向性を示すコンセプトモデル。ホンダはこのモデルをベースにした量産EVを2019年に欧州で発売する」

としていた。

Honda Urban EV Concep(2017年)

アーバンEVコンセプトは、2年後の2019年にHonda e prototypeとなり、ほぼそのままHonda eとして市販された。

2017年時点では、ボディサイズ、駆動方式等詳細な諸元は公表されなかった。ホンダが正式に発表したのは

新開発EV専用プラットフォーム、4人乗り、フィット(欧州名JAZZ)より100mm短い全長、くらいだった。

当時のフィット(JAZZ)の全長は3995mmだったから、アーバンEVコンセプトは3895mmということになる。

Honda eのボディサイズは
全長×全幅×全高:3895mm×1750mm×1510mm
ホイールベース:2530mm

上がアーバンEVコンセプト、下が量産となったHonda e

だから、アーバンEVコンセプトとHonda eのボディサイズは、ほぼ同じだと言える。

量産化で変わったのは、
3ドア→5ドア化
後ろヒンジ開きが通常のドアへ
ホイール径が小さく
そして、バンパー・フェンダーなどが保安基準対応で変わったことくらいだ。

Urban EV Conceptは後ろヒンジのドアを採用していた。
上がアーバンEVコンセプト、下が量産となったHonda e
上がアーバンEVコンセプト、下が量産となったHonda e

つまり、デザイン全体の印象はコンセプトから忠実に受け継がれている。

Honda eがRWDで量産化されたことを考えると、Urban EV Conceptの段階からRWDを前提にパッケージングされていた可能性が高い。

当時のホンダ・フィット 全長×全幅×全高:3990mm×1695mm×1525mm ホイールベース:2530mm

Honda eはフィットより全長が100mm短いが、ホイールベースは当時のフィットと同じ(2530mm)。フィットと同じ2530mmという長いホイールベースを維持しながら全長だけ100mm短くしたことで、四隅にタイヤを置いた理想的なプロポーションを実現した。

ホンダのM・M思想(マン・マキシマム・メカ・ミニマム)を体現したパッケージだといえる。

Honda eのプラットフォームはRWDで結局、Honda e専用となった。

このパッケージを実現させたのは、ホンダの新しいBEV専用プラットフォームである。当時の新世代BEVは、床下全面にバッテリーを搭載する専用プラットフォームが主流となり、それに合わせて後輪駆動を採用するメーカーが増えていた。アーバンEVコンセプト(Honda e)もその文法に則っていた。

また、アーバンEVコンセプトのデザインは世界的に評価が高く、多くのデザイン賞に輝いている。

Honda eはなぜ成功しなかったのか?

Honda Urban EV Concept – Design Story

Honda eはデザイン、パッケージ、走りの完成度はいずれも高く、評論家からの評価は非常に高かった。にもかかわらず、Honda eは市場で成功しなかった。

その最大の要因は、航続距離が短かったことだ。

35.5kWhのバッテリー容量でWLTCの一充電航続距離は259km、リアルワールドでは200kmに届かなかった。

Honda Urban EV Concep(2017年)
Honda e アーバンEVコンセプトのインテリアをうまく継承している。

そして、価格。ベースグレードで451万円、アドバンスで495万円は、少し高かった。欧州でも約3万5000ユーロ前後で、これは、テスラModel3やVW ID3などとも被る価格帯だった。コンパクトカーだから、後席も荷室も小さい。

ホンダは、都市でのライフスタイルを考えて、あえてバッテリー容量を小さくし、それを軽量化や運動性能の向上に振り分けたわけだが、ここホンダの計算違いがあったわけだ。当時マーケットはSUV志向がより強まっていた。そこにホンダは「小さなプレミアムハッチバック」を投入したのだが、そこも読み間違えたと言える。

結局、アーバンEVコンセプト(≒Honda e)は、「デザインは大成功、商品企画は失敗」というクルマだったわけだ。しかし、いまでも、Honda eのファンは多い。あのデザインであのサイズで、もう少し航続距離が長く、価格が手頃だったら……という声が根強い。

Urban EV Concept

アーバンEVコンセプトは、コンセプトカーとしては理想に近い形で量産化された。しかし、その理想をあまりにも忠実に実現したからこそ、市場との距離が生まれてしまった。Honda eは、「コンセプトカーらしさ」を最後まで失わなかった、極めて希有な量産車だったのである。

Honda eで培った教訓とノウハウが次のホンダBEVで活かされる……ことを期待したい。

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