英国で開催された『グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード』で、レクサスの次世代スーパーカーとみられる開発車両が走行を披露した。数多くの高性能スポーツカーがエンジンサウンドを響かせるなか、このプロトタイプはほとんど走行音を発することなくヒルクライムを走破。その姿は、BEVを視野に入れた開発車両である可能性を改めて印象づけた。

このモデルは、初代『LFA』の実質的な後継として期待されている車両だ。レクサスが公開した次世代スーパーカーのコンセプトをベースに開発が進められているものとみられ、同時期に発表されたトヨタ『GR GT』と基本アーキテクチャを共有する可能性も指摘されている。
現状、GR GTにはV8ハイブリッドパワートレインの搭載が有力視されるのに対し、新型LFAは電動化を前提としたフラッグシップとして差別化が図られるとの見方が強い。

■全固体電池の実証車となる可能性
今回、特に注目を集めているのが搭載されるバッテリーだ。一部の海外メディアでは、新型LFAがトヨタ製全固体電池を初めて採用する量産車になる可能性があると報じている。現時点でトヨタやレクサスが正式に認めた情報ではないものの、長年開発を続けてきた次世代電池をどのモデルへ投入するのかという点で、大きな関心を集めている。
全固体電池は、現在主流となっているリチウムイオン電池よりエネルギー密度を高められるほか、小型・軽量化や航続距離の延伸、急速充電性能の向上などが期待される次世代技術である。しかし、生産コストや量産体制など解決すべき課題も多く、トヨタはこれまで実用化時期を慎重に見極めながら開発を進めてきた。
その最初の採用車がLFA級のスーパーカーだとすれば、それは極めて合理的な選択と言える。
■なぜ最初の採用車がLFAなのか
仮に全固体電池を初採用するとすれば、量販車ではなく少量生産のフラッグシップモデルを選ぶメリットは大きい。
生産台数を限定できるため、高価な新技術を採用しやすく、製造コストも吸収しやすい。また、高性能車なら高出力時の発熱制御や耐久性など、過酷な条件下でデータを蓄積できるという利点もある。
これは新技術をまず最上級モデルへ投入し、その成果を量販車へ展開するという、自動車メーカーがこれまで繰り返してきた開発手法でもある。
トヨタにとってLFAは、ブランドを象徴する存在であるだけでなく、新しい技術を世に送り出すショーケースとしての役割も担うことになるのかもしれない。
■電動化でも「走る楽しさ」を追求
レクサスが目指しているのは、単に高性能なBEVではない。同ブランドはこれまで、電動車でもドライバーとの対話を重視する姿勢を示してきた。単純にエンジンサウンドや変速フィールを再現するのではなく、電動車ならではの新しい走りの楽しさを追求する考えを打ち出している。
一方で、新型LFAには大きなハードルもある。初代LFAは、ヤマハと共同開発した自然吸気V10エンジンが奏でる官能的なサウンドによって、世界中のファンを魅了した伝説的なモデルである。その存在感は現在でも色あせておらず、後継モデルには単なる性能だけではない、新たな感動を生み出すことが求められる。
だからこそ、次期LFAの使命は速さだけではない。電動化時代において「レクサスらしい走る歓び」をどのように表現するのか、その答えを示すモデルになることが期待されている。
■トヨタの電動化戦略を占う先行開発車か?
新型LFAが全固体電池を採用するかどうかは、現時点では正式に明らかになっていない。
しかし、もし実現すれば、その役割は一台のスーパーカーにとどまらない。将来の量販BEVへ技術を展開するための先行開発車として、トヨタの電動化戦略全体を左右する重要な存在になる可能性がある。
グッドウッドを静かに駆け抜けた一台は、次期LFAの姿を示すだけでなく、トヨタが描く次世代モビリティの方向性を映し出すプロトタイプだったのかもしれない。









