シビック・タイプRとインテグラ・タイプSは?
ホンダが、北米市場で販売しているシビック Siとアキュラ・インテグラ A-Spec Techに設定する6速MTモデルの生産を、2026年モデルイヤー終了をもって一時停止すると発表した。

MT車の縮小が相次ぐなかだけに、「ホンダもついにMTから撤退するのでは」と受け止めた人も少なくないだろう。しかし、今回の発表を詳しく見ると、その内容は一般的な販売終了とは大きく異なる。

ホンダは、「1.5Lターボエンジンと6速MTを組み合わせたモデルの生産を2026年モデルイヤー終了をもって一時停止する」と説明するとともに、将来的に両モデルをラインアップへ復活させる計画があることも明らかにした。また、現在の見通しでは2027年初頭まで販売店在庫を確保できるとしている。
今回対象となるのは、1.5Lターボエンジンに6速MTを組み合わせたシビック Siとインテグラ A-Spec Techである。北米では、どちらも手頃な価格で本格的なスポーツドライビングが楽しめるモデルとして支持されてきた。
今回の決定の背景には、2027年モデル以降に適用されるEPA(米国環境保護庁)の認証制度への対応があるとみられている。SNS上にはホンダ工場の内部通達とされる文書も出回ったが、その後ホンダ自身が「一時停止」であることを正式に認めたことで、単なる噂ではないことが確認された。
一方で、生産ラインそのものが縮小されるわけではない。報道によれば、生産終了となるグレードに代わる別仕様がラインへ組み込まれる予定で、工場全体の生産台数への影響はないとされている。

MTファンにとって安心材料と言えるのが、シビック・タイプRとインテグラ・タイプSは今回の対象外となっている点だ。
両モデルは2.0Lターボエンジンと6速MTのみを組み合わせる高性能モデルであり、今回の一時停止措置には含まれていない。ホンダのスポーツブランドを象徴するモデルは、今後も引き続き販売される予定である。
つまり今回の発表は、「ホンダがMTをやめる」という話ではなく、「1.5Lターボ+6速MT」という特定のパワートレーンが、規制対応のため一時的に生産を停止するというニュースとして受け止めるのが適切だ。
今回の発表で注目したいのは、ホンダが「生産終了」ではなく、あえて「一時停止」という表現を用いている点である。
「生産終了」ではなく、あえて「一時停止」
ホンダは公式コメントのなかで、シビック Siとインテグラ A-Spec Techを将来的にラインアップへ復活させる計画があることを明言している。時期は未定としながらも、「適切なタイミングで詳細を発表する」としており、規制への対応が整えば再投入する考えを示した。
この点は、近年相次ぐMTモデル廃止のニュースとは性格を異にする。例えばフォルクスワーゲンは、北米市場でゴルフGTI、ゴルフRに続きジェッタGLIでもMTを廃止したが、その背景には販売比率の低下があった。一方、ホンダは販売不振を理由に挙げているわけではなく、新たな認証制度への対応が今回の判断につながったと説明している。
さらに、ホンダのスポーツモデル戦略を見ても、MTを手放す方向へ向かっているとは考えにくい。
現在もシビック・タイプRとアキュラ・インテグラ・タイプSは6速MT専用モデルとして販売が続けられており、ホンダのスポーツブランドを象徴する存在となっている。こうしたフラッグシップモデルを維持していることからも、ホンダがMTそのものの価値を否定しているわけではないことが窺える。
実際、ホンダはこれまでも「操る楽しさ」をブランド価値のひとつとして掲げてきた。販売台数だけを見ればMT車は少数派だが、スポーツブランドのイメージを支える重要な存在であることに変わりはない。
もちろん、自動車業界全体を見れば電動化や環境規制の強化は今後も加速し、MT車を取り巻く環境が厳しさを増していくことは避けられないだろう。しかし、そのような状況下でも、ホンダは今回「一時停止」と「復活予定」をセットで発表した。この点は、単なるMT縮小のニュースとは異なる意味を持つ。
MTファンにとっては寂しい知らせではあるものの、完全終了ではないという事実は見逃せない。今後の規制対応や商品計画次第では、シビック Siとインテグラ A-Spec Techが再び6速MTを搭載して市場へ戻ってくる可能性は十分に残されている。
今回の発表は、「ホンダがMTを捨てた」という話ではなく、変化する規制環境に対応するための一時的な措置と捉えるのが現時点では妥当である。ホンダが掲げる「MT継続」の方針が、今後どのような形で具体化されるのか。その動向を引き続き注視したい。







