カウルを脱がせたら正体不明の3輪マシンに!

ヤマハ独自のLMWテクノロジーを採用し、フロント2輪、リヤ1輪という独特のスタイルを持つトリシティ。2014年に登場したトリシティ・シリーズは、安定感と滑らかな旋回感を武器にシティコミューターとして支持されてきた。快適な移動を目的としたモデルだけに、市販されるカスタムパーツもロングスクリーンやシートなど実用性を高めるタイプが中心。

ところが十国峠で見つけたオーナーのG345さんのトリシティ125は、そんなイメージをキレイさっぱり吹き飛ばしてくれた。

外観の変わりっぷりは、一見しただけでは正体不明と言っていいほど。フロントが2輪だから「トリシティかな?」とは思うものの、もしかしたらピアジオMP3? ジレラ・フォコ? ホイールを見てなんとか判明。ベースはヤマハ・トリシティ125(初代)のようだ。

純正カウルをほぼすべて取り払い、ネイキッド化……というか全裸状態。だがただ脱がせただけではなく、ケーブルやハーネスはなるべく見えない位置へ移動し、一部をコルゲートチューブへ収めることで、メカむき出しなのにゴチャゴチャして見えないよう工夫しているのはお見事。さらに無骨な鉄板のステップボードやアルミ製ガードを組み合わせ、サイバーパンクな世界観へ。オーナーに話を伺うと「ロンホイ…セパハン…LED4灯ヘッドライト…フェイクNOSシステム…キーレスリモコン…シングルシート」と、ノーマルのトリシティからは想像しづらい言葉が並ぶ(笑)。

カウルを取り払うと、トリシティの車体構成そのものがデザインになる。フロント2輪に対して細く伸びたリヤ周りも相まって、ノーマルとはまるで違うシルエットだ。

こちらがノーマルの初代トリシティ125。2014年に登場したコミューターで、安定感と安心感がズバ抜けて高いモデル。今回のG345さん号と見比べると、その変貌ぶりは一目瞭然だ。

ロンホイ&セパハンでロー&ロング! トリシティだと難易度が爆上がり!

横から眺めると、その変貌ぶりはさらに分かりやすかった。エンジンマウントを加工して他車用のロングホイールべっすキットを組み込み、ホイールベースを延長。そこへ低いセパレートハンドルを合わせることで、トリシティではまず見ない“ロー&ロング”なスタイルに仕上げている。

ただし、普通の2輪車と同じ感覚でハンドルを下げればいいわけではない。トリシティはコーナリング時にフロント2輪が車体とともにリーンするため、ハンドル位置を低くしすぎると、スイングしたフロントフェンダーと干渉してしまう。そこでセパハンの位置を調整しながら、見た目と動きをバランスさせているという。トリシティをカスタムするからこその苦労なんですね。

そして強烈なのがフロントマスク。バルカンタイプのLED2灯に左右のフォグランプを加えた4灯仕様で、スタイリッシュだったトリシティの顔が一気にワイルドかつ攻撃的になった。テール周りもラゲッジスペースやエアクリーナーボックスを取り払い、剥き出しになったフレームパイプの下へコンパクトなバータイプLEDをセット。

それでも実用車としての心は少し残っている様子。シートはシングル化し、その後方にはワイヤーバスケットを装着。買い物や通勤にも便利なはずなのだが、車両自体があまりにも奇抜すぎて使いづらくなってしまったのだとか。便利にしたのに出掛けづらい(笑)。そんな矛盾もカスタム車の世界らしいところだ。

シート下のラゲッジスペースもエアクリーナーボックスも撤去し、後ろから見るとフレームやエンジンまで丸見え。スクーターらしい“箱感”はどこにもない。

かなり低い位置にセットされたセパハン。KOSO製スロットルホルダーなども組み合わせ、コクピットまで独自の雰囲気に仕上げられている。

専用品がないなら作る! 10年かけても、まだゴールじゃない

ここまで大胆な姿になった背景には、トリシティならではの事情もある。外観を大きく変えるような専用カスタムパーツはほとんど存在しないため、使われているパーツの多くは他車用を加工したものか、ワンオフで製作したもの。ラジエターの冷却ファンには、なんとパソコン用を加工して使用しているという。

細部を見れば、その“ないなら作る”精神がさらによく分かる。リモコン式キーレスキットを採用したことで、メインスイッチやスターターボタンはステム付近へ移設。シート下には青いNOSボトルまで搭載されている。「まさかトリシティにNOS!?」と思わせておいて、こちらは実際には作動しないフェイクというオチまで付く。こういう遊びがあるから、この手のカスタムは眺めていて飽きない。

さらにバッテリーボックスや配線の取り回し、ワイヤー類が見える場所はアルミ製プレートでガード。「DANGER HIGH VOLTAGE」などのステンシルまで入れ、隠すための部品すらデザインの一部にしている。見せるところ、隠すところ、あえてむき出しにするところ。その積み重ねが、この独特なサイバーパンク感を作っているわけだ。

G345さんがこのトリシティを手に入れてから約10年。少しずつ手を加えながら現在の姿まで育ててきたものの、本人にとってはまだまだ未完成なのだという。

普通なら「ここまでやったら完成でしょ!」と言いたくなる。でも10年かけてここまで来た人にとって、完成とは“手を止めること”なのかもしれない。まだやりたいことがある限り、このトリシティは完成しないのだろう。

キーレス化に合わせ、スイッチ類もステム付近へ移設。純正カウルが消えたことで、こうした機能部品まで見せ場になっている。

シート後方にはNOSボトルを搭載。「そこまでやる!?」と思ったら、じつは作動しないフェイク(笑)。サイバーパンクな世界観を盛り上げる小道具なのだ。

電装や配管が露出する部分にはアルミ製プレートを製作。「DANGER HIGH VOLTAGE」のステンシルまで含め、ガードそのものを魅せるパーツにしている。むき出しの燃料タンクにもDANGERの文字、ナットクです。

トリシティ125改に出会ったイベントはこちら!

今回のトリシティ125を撮影したのは、2026年7月19日に森の駅箱根十国峠で開催された「十国峠原付祭十周年」。今年で10周年を迎えた十国峠原付ミーティングには、関東・中部を中心に全国から100台を超える原付カスタムマシンが集合した。もともとはスーパーカブオンリーのイベントとしてスタートし、現在ではさまざまな原付カスタムが集まるイベントへと広がっている。

今回紹介したトリシティ125も、そんな濃い参加車の中からモトチャンプが気になった1台。十国峠で捕獲したほかのマシンたちも、これから1台ずつじっくり紹介していきます。

【モトチャンプ編集部】