今後はほかの日本メーカーでも海外生産車が国内ラインアップの中核を担うケースが増えていくかも
「輸入車」と聞くと、メルセデス・ベンツやBMW、フォルクスワーゲンといった海外ブランドを思い浮かべる人が多いはずだ。しかし2026年上半期、日本で最も多く新規登録された輸入車ブランドは、意外にも日本のスズキだった。

その原動力となったのが、インドで生産される5ドアSUV「ジムニー ノマド」である。発売直後から高い人気を集めた同モデルは、スズキの輸入台数を大きく押し上げ、日本の輸入車市場で異例の存在感を示している。

日本メーカーが海外で生産した車両を日本へ持ち込む、いわゆる「逆輸入」は以前から行われてきた。しかし近年は、その動きが加速している。背景にあるのは海外工場の生産能力や品質の向上に加え、車種ごとに生産拠点を集約し、世界各国へ供給するグローバルな生産体制の広がりである。
2026年上半期、日本メーカー各社が海外から日本へ輸入した車両の新規登録台数は7万2330台となり、前年同期比38.1%増加した。
なかでも突出しているのがスズキだ。輸入台数は3万4288台に達し、前年同期から約91%増加。メルセデス・ベンツの2万3064台を上回り、2026年上半期の輸入車ブランド別新規登録でトップに立った。
その最大の立役者がジムニー ノマドである。
ノマドはジムニーシリーズ初の5ドアモデルとして日本へ導入された。従来の3ドアモデルが持つ本格的な悪路走破性を受け継ぎながら、ホイールベースを延長することで後席への乗降性や居住性、荷室の使い勝手を向上。アウトドアユーザーだけでなく、日常的に使えるSUVを求める幅広い層から支持を集めている。
2026年上半期だけでも販売台数は2万6682台に達しており、スズキの輸入台数を大きく押し上げた。2025年の日本導入時には想定を大幅に上回る注文が集まり、一時受注を停止したことも、その人気の高さを物語っている。
一方、海外生産車の日本導入を積極的に進めているのはスズキだけではない。
トヨタも2026年上半期に1万5977台を海外から輸入した。タイ生産の「ハイラックス」などが輸入台数を押し上げているほか、2026年5月14日には、同じくタイで生産される「ランドクルーザーFJ」を日本で発売している。
かつては「日本で売るトヨタ車は国内工場で生産する」というイメージが強かったが、海外工場を日本市場向けモデルの重要な生産拠点として活用する動きは、すでに本格化しているといえる。
こうした海外生産車の増加を支えているのが、海外工場そのものの競争力向上だ。
ジムニー ノマドを生産するインドは日本より人件費が低い一方、生産技術や品質管理のレベルも大きく向上している。スズキ側からも、インドの技術力は日本と肩を並べ、一部では先行する領域もあるとの認識が示されている。
つまり海外工場は、もはや単なる低コストの生産拠点ではない。世界市場へ供給する商品を開発・生産し、日本市場向けモデルも安心して任せられる重要拠点へと役割を変えつつある。
ただし、すべてのメーカーで海外生産車が好調というわけではない。
ホンダの2026年上半期の輸入台数は1万4937台で、前年同期比約32%減となった。インド生産のコンパクトSUV「WR-V」の販売が前年ほど伸びず、2026年2月に発売したタイ生産の「CR-V」を加えても、その減少分を補うまでには至っていない。
マツダも輸入台数は3309台で前年同期比約20%減となっており、海外生産車を日本へ導入すれば必ず成功するという単純な構図ではない。
それでもスズキやトヨタの動きを見る限り、日本メーカーによる海外生産車の国内導入は今後さらに広がる可能性がある。
現在の自動車メーカーは、車種ごとに世界で最も効率的な工場へ生産を集約し、そこから各国へ供給する体制づくりを進めている。SUVやピックアップトラックなど世界共通で販売されるモデルほど、生産拠点を集約するメリットは大きく、日本向けだけに国内生産ラインを設ける必要性は以前ほど高くない。
もちろん、日本市場独自のニーズへの対応や為替、輸送コストなど、海外生産ならではの課題もある。それでもジムニー ノマドの成功は、海外生産であること自体が日本での販売のハンディにはならないことを示した好例といえる。
「日本車だから日本製」という考え方は、少しずつ過去のものになりつつある。重要なのはどこで生産されたかではなく、世界各地の工場で一定の品質を確保し、日本のユーザーが求める商品を安定して供給できるかという点だ。
ジムニー ノマドのヒットは、単なる人気SUVの成功にとどまらない。2026年上半期にスズキが輸入車ブランド首位に立ったという事実は、日本メーカーの生産体制が新たな段階へ移りつつあることを象徴している。今後はトヨタをはじめ、ほかの日本メーカーでも海外生産車が国内ラインアップの中核を担うケースが増えていく可能性がある。









