シリンダーヘッドに直付け!「縦型キャブ」

OHCエンジンの初期の頃まで、スーパーカブにはダウンドラフトタイプの“縦型キャブ”が使われていた。

特徴は、インテークマニホールドを介さず、キャブレターをシリンダーヘッドへ直接取り付けていたこと。年式によって数種類が存在するため、旧いカブを見分けるポイントのひとつにもなっている。

今の感覚で見ると、キャブレターがかなり立った姿勢で付いているので「こんな向きなの?」と思うかもしれない。でも、当時のカブではこれが普通だったのである。

OHC初期まで使われた“縦型キャブ”。インテークマニホールドを介さず、シリンダーヘッドへ直接取り付けられているのが特徴だ。

カブの“胃袋”は吸気を助けるパーツだった!

そして縦型キャブの時代、キャブレターとエアクリーナーの間をつないでいたのが、通称「胃袋」と呼ばれるパーツだ。

その独特な形状から付いた愛称だけれど、役割はちゃんとある。インテークダクトの途中に容積を持たせ、インテークチャンバーとして機能させることで、中低速域のトルクアップを狙っていた。

つまり、ただの変わった形のゴム部品ではない。カブらしい扱いやすさを支えるために、低い回転域での力強さまで考えられていたというわけだ。見た目は“胃袋”そのまんま。

縦型キャブとエアクリーナーの間に付く通称“胃袋”。独特な形状だけでなく、インテークチャンバーとして中低速域のトルクアップにもひと役買っていた。

気づかいから生まれた「横型エンジン」

スーパーカブを語るうえで外せないのが「横型エンジン」だ。

女性でも乗り降りしやすいように、アンダーボーンのステップスルーフレームを採用。その低い車体構成に合わせるため、それまでになかった横型シリンダーのエンジンが開発された。初代C100のために生まれた、まさにカブ専用エンジンだったのである。

シリンダーを前方へ大きく寝かせることで、車体中央の上側に大きな空間を確保できる。だからフレームをまたぐように足を高く上げなくて済む。その後、この横型エンジンはモンキーやダックスなど多くのホンダ小排気量車へ広がっていくことになる。カブから生まれたひとつの考え方が、ホンダの小排気量車群を長く支える存在になったわけだ。

シリンダーを前方へ大きく寝かせた“横型エンジン”。ステップスルーフレームを成立させるために生まれた、カブらしさの根っこにあるメカだ。

キャブからFIへ! アイドリングを支える「IACV」

時代が進み、スーパーカブの燃料供給はキャブレターからPGM-FIへ変わった。

2007年のPGM-FI搭載カブから、スロットルボディには「IACV=インテークエアーコントロールバルブ」が装備されている。低回転時の吸入空気量をコントロールすることで、アイドリングの安定性や燃費向上に貢献する仕組みだ。

見た目も仕組みも大きく変わったけれど、目指しているのはいつの時代も同じ。低速でも扱いやすく、毎日気軽に乗れること。そんな地道な進化の積み重ねこそ、スーパーカブが長く愛されてきた理由のひとつなのだ。

PGM-FI化後のカブで使われるIACV。低回転時の吸入空気量をコントロールし、安定したアイドリングや燃費向上を支えている。

縦型キャブ、胃袋、横型エンジン、IACV。呼び名も仕組みもバラバラだけれど、どれも“乗りやすく、扱いやすいカブ”を作るためのもの。名前だけ覚えるより、その役割まで知るとカブの見え方がちょっと変わってくるのである。

※この記事は月刊モトチャンプ2025年8月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】