Mercedes-Benz CLA with EQ Technology
メルセデス・ベンツの安全思想

1959年に衝突試験を導入し、1969年から実際の事故調査を始めたメルセデス・ベンツにとって、安全は決して妥協できない基本理念のひとつである。現在は、ドイツや欧州だけでなく、米国、中国、インドにも事故調査のネットワークを広げ、地域ごとに異なる交通環境や事故の傾向を車両開発に活かしているという。
メルセデス・ベンツの新車開発では実際の衝突試験を実施する前に、およそ5万回にも及ぶシミュレーションを行う。外板厚や溶接ポイント、ボディ構造の形状などをコンピューター上で繰り返し調整し、そのうえで実際に1車種あたり約150回の衝突試験を実施するのだ。正面衝突では、車両前部を意図的に変形させることで衝突エネルギーを効率よく吸収する一方で、キャビンの変形は可能な限り抑えることが重要だ。
ここで重要なのが「適切な場所に適切な材料を使う」という考え方だ。超高張力鋼板など非常に高い強度を持つ材料は、Aピラーやサイドシル、Bピラー、ドア内部など変形を最小限に抑える必要がある部分に配置する。特にドアには補強部材を組み込み、トラックなど大型車との側面衝突においても最大限の乗員保護を目指しているという。
バッテリー自体が安全構造の一部

側面衝突時は、乗員までの距離が短く、衝撃を吸収するスペースが限られているため、正面衝突ほど大きな変形を許容できない。そのため新型「メルセデス・ベンツ CLA」では衝撃荷重をクロスメンバーやフロアへと衝突エネルギーを逃がし、キャビンと、その下に配置されるバッテリーへの入力を抑える構造を採用しているという。
新型CLAの安全設計で興味深いのが、BEVにおける高電圧バッテリーの扱いだ。CLAに限らず、多くのBEVで大容量高電圧バッテリーは車体フロアに配置されるが、その際バッテリーは単なる部品ではなく構造部材として扱われる。重要なのは、衝突時にバッテリーのセルやモジュールに大変形を与えないことだ。バッテリー周辺の構造やケーブルの取り回しも含め、衝突エネルギーを安全な方向へ逃がすように設計されている。
さらに高電圧システムには、事故後の安全を確保するための複数の対策が施されている。事故を検知するとエアバッグ制御システムが即座に高電圧システムを遮断。バッテリー内部で電力を切り離し、ケーブルや各コンポーネントを無電圧化するという。これは事故後に救助活動を行うレスキュー隊員や整備士を高電圧から守るための知見だ。
BEVと内燃機関車で異なる点と変わらぬ安全性

CLAにはフル電動のBEVと内燃機関を搭載するICE車が存在するが、基本となる衝突安全コンセプトは共通しているという。異なるのはバッテリーやエンジンなど、それぞれのパワートレインに合わせた部品配置と材料、板厚などだ。その違いが分かりやすく表れるのがサイドシルであるという。
BEVではフロアにバッテリーが搭載されるため、サイドシルにアルミ製のエネルギー吸収部材を組み込んだ。部材の角度やリブの厚さまで気を使い、側面衝突時に効率よく変形して衝撃エネルギーを吸収する構造としたという。一方、ICE車ではバッテリーを搭載しないため、この部分に同じ構造を設ける必要はないと判断した。パワートレインに合わせて部材を変更あるいは省略したが、BEVとICE車では構造こそ異なるものの、目標とする安全レベルは同じだという。
11個のエアバッグを搭載

安全技術というと、エアバッグやボディ構造が注目されがちだが、CLAは事故後の救助まで含めた安全設計が考えられている。前述のように事故を検知すると、高電圧システムが遮断されるが、それと同時にフラッシュサーフェスドアハンドルも即座に展開される。もちろん、万一12Vや48V電源が失われてもドアを開けられるよう、ドアには物理的なワイヤー機構も用意されている。電気的なシステムが完全に機能しなくなった場合でも、車内外からドアを開けられるリダンダンシー(冗長)な設計である。
そして事故現場に駆けつけたレスキュー隊に用意されているのが「レスキューステッカー」だ。ステッカーのQRコードをスマートフォンで読み取ると、高電圧バッテリーの位置、ケーブルの取り回し、電源を遮断するポイントなど、救助活動に必要な情報が示される。車両には充電パッド付近とBピラーの2ヵ所にコードが設けられているという。2ヵ所あるのは、車体の片側が大きく損傷していても、もう一方からアクセスできるようにするためだという。
事故後も考えた安全設計

パッシブセーフティにおいては、エアバッグとシートベルトをいかに協調させるかも重要だ。新型CLAには、運転席と助手席の中間に展開されるセンターエアバッグを含めて11個のエアバッグが搭載され、その総容量は約360Lに達するという。だが単純にエアバッグを増やせば安全になるわけではない。エアバッグの形状や容量、内部の構造は車種ごとに最適化することも大切だ。
その制御を担うのが、「セーフティ・エアバッグ・ブレイン」と呼ぶエアバッグ制御システムである。車両にはカメラ、加速度センサー、荷重センサーなど各種センサーを含め、およそ25~27個のセンサーが配置されているといい、これらからの情報を統合し、衝突の種類や方向、衝撃の大きさなどを瞬時に判断するという。興味深いのは常に全エアバッグを展開させるわけではないという点だ。これは衝突状況に応じて必要なエアバッグだけ展開することで、二次衝突が起きた場合も展開可能な状態を残し、乗員保護性能を最大化するのが目的だという。
PHOTO/GENROQ

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