2022年に国内発売された現行「エクストレイル」の次世代モデルも候補に
ホンダと日産が、次世代車の“頭脳”を共同開発する。両社は次世代の「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」に向け、クルマの中核を担うECUや車載OS、ソフトウェアを共通化する共同開発契約を締結した。

共同開発したECUやソフトウェアを搭載するE&E(電気・電子)アーキテクチャーは、2029年度以降、両社の次世代SDVへの適用を目指す。つまり数年後には、エンブレムもデザインも異なるホンダ車と日産車が、その奥深くで同じ電子基盤を共有する時代が始まる可能性がある。

ホンダと日産といえば、2024年12月に経営統合に向けた協議を開始したものの、2025年2月に統合協議を終了した。ただし、両社の戦略的パートナーシップそのものが解消されたわけではない。
共同開発で何が変わる?
今回の共同開発では、次世代SDVに採用するE&Eアーキテクチャーの中核となる複数のECUを共通化する。
対象となるのは、SoC(System on Chip)を使用する高性能なメインECUや、車両の各エリアを統括するゾーンECU。さらに、そのECU上で動く車載OS、ミドルウェア、車両制御ソフトウェアの主要部分についても共通仕様を構築する。
少し難しく聞こえるが、簡単にいえば、これまで車内各所に分散していた電子制御を集約し、クルマ全体を高性能コンピューターとソフトウェアによって統合的に制御する仕組みである。
近年の新型車では、運転支援やインフォテインメントだけでなく、パワートレインやバッテリー、シャシーなど、さまざまな機能がソフトウェアと密接につながっている。OTA(無線通信)によるアップデートが広がれば、購入後に機能を追加したり、制御を進化させたりすることも可能になる。
一方、こうしたシステムをメーカーごとにゼロから開発するには、膨大な費用と人員が必要だ。
そこでホンダと日産は基盤部分を共通化し、両社の技術的知見や開発リソースを活用する。開発スピードの向上に加え、スケールメリットによる開発コスト削減を図ることが今回の共同開発の大きな狙いである。
もちろん、これによってホンダ車と日産車が「同じクルマ」になるわけではない。共通化するのは、いわばスマートフォンでいうOSや半導体などに相当する基盤部分だ。その上で動く機能やユーザーインターフェース、走行制御などを各社が作り込めば、それぞれのブランドらしさを残すことは可能である。
次期「CR-V」「セレナ」などが採用候補か?
では、この新しい“頭脳”を最初に搭載するのは、どのモデルになるのか。
両社は具体的な車名を明らかにしていない。ただし、共同E&Eアーキテクチャーの適用開始は「2029年度以降」。そこから各車の商品サイクルを逆算すると、いくつか気になるモデルが浮かんでくる。
ホンダでは「CR-V」が候補のひとつだ。
日本では6代目CR-Vが2026年2月27日に発売されたばかりで、2.0リットルエンジンと2モーターハイブリッドを組み合わせた「e:HEV」を搭載している。
2029年度時点ではまだ現行型の商品サイクル内にある可能性が高いが、その先の世代交代まで視野を広げれば、ホンダと日産が共同開発する新しい電子基盤を採用する候補となってくる。
さらにホンダは2027年から、ハイブリッドシステムとプラットフォームをともに刷新した次世代ハイブリッド車の投入を開始する計画だ。日本ではSUVを中心に展開し、2028年以降は新型「ヴェゼル」を皮切りに、次世代ハイブリッドと次世代ADASを組み合わせたモデルを投入する。
つまり2029年度以降のホンダ車では、パワートレインだけでなく、電子制御の基本構造まで大きく変わっていく可能性がある。
一方、日産でより時期的に注目されるのが「セレナ」だ。
現行C28型セレナは、ガソリン車が2022年12月、e-POWER車が2023年4月に発売。その後の改良を経て、2026年2月にはマイナーチェンジを実施している。
現在の商品サイクルを考えれば、2029年度以降は次世代セレナの登場が視野に入ってくる時期だ。日本市場における日産の主力モデルだけに、次期セレナが新しいSDV基盤を採用する可能性は十分考えられる。同様に、2022年に国内発売された現行「エクストレイル」の次世代モデルも候補に入ってきそうだ。
さらに海外では、日産のアライアンスパートナーである三菱自動車が、将来的にこの枠組みに加わる可能性も報じられている。ただし、今回のホンダと日産の公式発表では、三菱の参加については明らかにされていない。
経営統合という大きな構想はいったん白紙となったホンダと日産。しかし、次世代車の競争力を左右するソフトウェア分野では、むしろ協力関係が具体的な形になり始めている。
2029年度以降、次期セレナをはじめ、将来のCR-Vなど両社の主力モデルが、見た目も走りも異なりながら、その奥深くでは同じ“頭脳”を共有する――。
今回の合意は、ホンダと日産のクルマづくりを大きく変える第一歩となりそうだ。









