高級セダンに秘められた驚異のポテンシャル
マークレビンソンに惹かれて選んだGSがタイムアタックマシンへ
富士スピードウェイのスポーツ走行枠。その日、ひときわ異彩を放っていたのが、松山真輝さんのレクサスGS350だった。ベタベタにローダウンされた車高にレーシーなエクステリア。ひと目見ただけで“普通じゃない”ことが伝わってくる。汗ばむ陽気にも関わらず、2分ひとケタというハイペースで周回を重ねる姿は抜群のインパクトを放っていた。

ペトロナスカラーのGSといえば、タイムアタック界隈では知る人ぞ知る存在だ。決してサーキット向きとは言えない高級セダンでAttackに参戦し、ラジアルタイヤで筑波1分3秒台をマーク。本人にとっては納得のいく結果ではなかったそうだが、SUGOでは1分38秒5、セントラルでは1分28秒644を記録している。
現在はラッピングを剥がしているものの、その速さは健在。富士でもフェラーリやBMW Mシリーズといった海外スポーツカー勢に引けを取らないペースで周回する姿を見て、「GSって、こんなに速かったのか」と思わず驚かされた。


てっきり大掛かりなチューンが施されているのかと思いきや、「エンジンは吸排気くらいですよ」と松山さん。搭載される3.5L V6の2GR-FSEはカタログ値315ps&38.4kgmを発揮するが、本体はほぼノーマルでスピードリミッターを解除した程度。チタン製サクションパイプには吸気温度上昇を抑える遮熱材を貼り込み、冷却系にはUSブランドのIS用アルミラジエーターを流用している。

排気系はサードの中間パイプ&スポーツ触媒に、ワンオフ製作した76φストレートマフラーを組み合わせる。ミッションも純正のトルクコンバーター式6速ATのままだ。スポーツモードでも思い通りのタイミングで素早く変速してくれないため、サーキットでは「ゲームみたいに連打しています(笑)」とのこと。
そもそもGSを選んだ理由も、「マークレビンソンのカーオーディオに惹かれたから」と言うのだから面白い。本音を言えば、以前から憧れていたJZX100が欲しかった。しかし、中古車価格の高騰で断念。そこで目を付けたのが、手頃な価格で他車とも被りにくい4ドアセダンだったGS350だ。

AE86やHA23アルトワークスを乗り継ぎ、3台目の愛車として手に入れたGS。当然、最初から速かったわけではない。「曲がらない、止まらない、進まない(笑)」
サーキットを走り始めた頃は、そんな状態だったという。それでも足まわりやブレーキを見直し、走っては改善を繰り返す。その積み重ねが確実にタイムアップへと繋がっていった。
やがて本気でタイムアタックに挑戦したいという思いが強くなり、一時は会社員を辞めて走り込みに専念。月に何度もサーキットへ通い、エンジンやミッションを壊した苦い経験も積み重ねてきた。それでも挑戦をやめなかったのは、「もっと速く走りたい」という純粋な情熱があったからだろう。

その進化を支えてきた足まわりはオリジナル車高調で、スプリングレートはフロント22kg/mm、リヤ18kg/mm。IS用フロントアッパーアームを採用することで前後のキャンバーを揃え、リヤにはIS250用メンバーを流用。メンバー自体を約20mm上げ、ワンオフのメンバーカラーやイケヤフォーミュラ製調整式トーロッドを組み合わせて、バンプ時のアライメント変化も抑えている。LSDにはZN6純正のトルセン式を移植した。

ブレーキもフロントにトムス6ポットキャリパー+355φローター、リヤにはLS純正2ポットキャリパー+RV37純正350φローターを組み合わせて強化。足元を飾るのは、東京オートサロンで一目惚れしたというインディゴブルーのアドバンレーシングTC-4。撮影時には295/30R18のアドバンA050を履いていた。
もっとも、このGSの魅力は速さだけではない。タイムアタックを楽しみながら、自走で全国のサーキットへ遠征。しかも走行中は音楽をガンガン鳴らすのが松山流だ。タイヤを履き替えればドリフトもこなし、USDM系の置きイベントにも積極的に参加する。速くて、楽しくて、格好良い。しかも快適。その全てを1台で実現しているのである。

2008年式の中期型をベースとするボディは、メルセデス・ベンツのボーラホワイトにDIYでオールペン。「走りよりも見た目優先」と言い切るだけあって車高はベタベタだが、ノーマル1680kgの車重は約1500kgまで軽量化されている。

フロントにはT&E製バンパーとGS450h用ヘッドライトを組み合わせ、アクリル合板で自作したアンダーパネルを追加。純正ボンネットにはCFラボのカーボンダクトをインストールし、水温は4〜5℃低下したという。

リヤウインドウはドライカーボンパネルに置き換え、サンルーフ付きルーフはブラックにペイント。シャークアンテナも撤去してスムージングすることでUS仕様のようなシンプルなルックスを追求した。

ドゥーラック製GTウイングはアルミ削り出しのワンオフステーでローマウント。見た目だけでなく、ウイングレスではリヤが暴れるというほど空力面でも効果を発揮する。

さらにリヤフェンダーは、フロントフェンダーのアーチ部を移植するニコイチ加工によって前後のアーチ形状を統一。低さだけに頼らず、細かなボディワークまで徹底しているのだ。


室内はフロアカーペットやルーフライニング、リヤシートを撤去し、2名乗車で公認を取得。オクヤマのIS F用ロールケージやトムス製前後ブレースバー、レーステック製フルバケットシートを投入する一方、長距離の自走遠征を考えてエアコンやオーディオといった快適装備は残している。ダッシュボードにはDIYでスエード生地を貼り込んだ。

さらにメーターはUS仕様のマイル表示に交換し、マルチメディアもカセットテープ仕様のUS純正品を移植。徹底的に手を加えながらも自然なまとまりを感じさせるのは、DIYでクルマ作りそのものを楽しみながら仕上げてきたからこそだろう。

「まだまだ完成ではありません。将来的にはIS FのV8・5.0Lエンジンと8速ATに載せ替えたいと思っています」と松山さん。
タイムアタックからドリフト、USDMイベント、そして全国への自走遠征まで。高級セダンの常識を覆しながら、クルマ遊びの全てを受け止めてきたGS350。その挑戦は、まだ終わりそうにない。
PHOTO:南井浩孝(Hirotaka MINAI)/REPORT:石川大輔(Daisuke ISHIKAWA)

