フォルクスワーゲンが世界で最も経済的な市販間近の電気自動車“Mission Efficiency”を発表した。3つの記録を樹立したと同社はアナウンスしていて「Cd値0.158の公道仕様車」「6.89kWh/100kmの平均電費」「もっとも経済的な量産仕様車」とのこと。技術的な点は他メディアの報道に預けるとして、Car Styling Webとしては、EV時代に空力性能がエクステリアデザインをどこまで支配するのかというテーマに着目したい。

Mission EfficiencyがCd値0.158を実現できたトピックをいくつかあげてみよう。

[フロントエンドに一体化されたアクティブ冷却エアフラップ]
3箇所に装備され、個別または複数を組み合わせて段階的に開閉できる。空気抵抗を抑えるため、必要な最小限の開口面積のみとするのはご想像のとおり。

[下部エアフローガイドと完全に覆われたリアホイール]
ティアドロップ型に後方に向かって細くなり、後端での空気の剥離や乱流を抑えるシルエットとした。2013年の『XL1』を思い出される方も多いだろうか、同車を彷彿とさせる、後方に向かって流れる非常に長いルーフラインが組み込まれている。当然、アンダーボディもフルフラットとし、フォルクスワーゲンが空力に関して新しいベンチマークを確立するのに役立ったそう。特許取得済みのリム・デフレクターなども採用し、デザインと空力を一体で追求している。

[長く低いボディディメンジョン]
高さ1,392 mm、幅1,744 mm、長さ4,775 mmという寸法は、ID. Poloと比較して全長が大幅に増加(+722 mm)。この長さは、ホイールベースが100 mm長くなった(2,700 mm)ことと、大きなリアオーバーハングによるもので、これにより技術・設計チームはボディのティアドロップ形状と、それに伴う先駆的な空力性能を実現することができた。なお、ボディはID. Poloのコンポーネントとアルミ合金製モノコック構造を組み合わせ、ドア、ボンネット、トランクリッド、フェンダーなどには高強度CFRPとアラミドの複合材を用いている。

[ドアとミラーの処理]
ドアにはフレームレスウィンドウを採用し、空力性能にも貢献している。ドアハンドルは最適な空気の流れを実現するために外装パネルに一体化された。ハンドルは電動で格納展開し、ロック自体は機械的に操作する仕組み。停電時にも問題なく開閉できる構造としている。一方、空力的に最適化されたエクステリアミラーは従来型のデザイン。カメラのみを使用したエクステリアミラーは、計算と風洞実験の結果、全体的な効率はほとんど向上しないものの、量産においては大幅にコストが高くなることが判明したため。ただし、フォルクスワーゲンとしてはなお、カメラ型のミラーの可能性を模索しているようだ。

「美しい/醜い」ではなく、EVの航続距離競争によってプロポーション、ホイール、ボディ表面はどう変わるのか。2013年の『XL1』における当時の最新環境技術は0.8Lの2気筒TDI+7速DSGにモーターを組み合わせたパワートレインで、これをCFRPモノコックで覆い、Cd値は0.186を実現していた(量産仕様)。当時のフォルクスワーゲンのアプローチも空力そのものをボディデザインの主役にしたクルマであり、とにかく「空気をどう流すか」から形を決めていた。

XL1

あれから13年、今回のMission Efficiencyは0.158を達成。XL1のCdが0.186に対し、単純な数字比較だけでも約15%低い。フォルクスワーゲンは、XL1で突き詰めた“空気の形”を、BEV時代にもう一度やり直すことをねらったのだろう。

プラットフォームMEB+による前輪駆動
バッテリー総電力量54.9 kWh
システム最高出力99 kW (135 hp)
DC充電時最大受入電力105 kW
WLTPモード電費8.4 kWh/100 km
フォルクスワーゲンの試験走行における平均電費6.89 kWh/100 km
(充電損失を含めた外部供給電力量では7.51 kWh/100km)
最高速度と0-100 km/h所要時間160 km/h、9.0秒
長さ × 幅 × 高さ4,775 × 1,744(ミラーを除く)× 1,392 mm
ホイールベース2,700 mm
Cd × A0.158 × 2.08 m2