アメリカでカムリとアコードの販売が伸びている
SUV人気が世界的に続くなか、米国の新車市場でちょっとした異変が起きている。トヨタ「カムリ」とホンダ「アコード」という日本を代表するセダン2台が販売を大きく伸ばし、一部の人気SUVを上回る勢いを見せているのだ。

なかでも伸びが目立つのがアコードである。米国では2026年8月に1万8691台を販売し、前年同月比19.1%増。1~8月累計では12万9014台に達し、前年同期比33.3%増を記録した。
単純計算では年間20万台に迫るペースで、2021年以来となる20万台回復も視野に入る。かつて年間30万台以上を販売した時代には及ばないものの、SUV全盛の現在を考えれば目を引く数字だ。

さらに売れているのがカムリである。
8月単月は前年同月比9.7%減となったものの、それでも2万5754台を販売。2026年1~8月では23万5334台に達し、前年同期を11.6%上回っている。このペースが続けば年間35万台を超える計算となり、近年では際立つ好調ぶりだ。
販売台数ランキングでは人気SUVを上回るほど
しかも、単に「セダンのなかでは売れている」という話ではない。
カムリはフォード「エクスプローラー」や日産「ローグ」、シボレー「エクイノックス」、ヒョンデ「ツーソン」といった人気SUVを上回る勢いを見せている。アコードも全米販売ランキングでトップ25圏に入る勢いだ。

もちろん、これだけで米国市場全体に「セダン復権」が起きているとは言い切れない。トヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」をはじめ、SUVの販売は依然として強く、市場の主役であることに変わりはない。
それでも、SUVに押されてセダン市場が縮小し、多くのメーカーがこのカテゴリーから撤退・縮小してきたことを考えれば、カムリとアコードが揃って販売を伸ばしているのは興味深い現象である。

なぜ今、カムリとアコードが売れているのか?
背景のひとつとして考えられるのが、クルマそのものの価格と維持費だ。SUVや大型クロスオーバーは一般的に車両価格が高く、車重や空気抵抗の面でもセダンより不利になりやすい。新車価格が上昇するなか、比較的軽量で燃費性能にも優れるセダンの経済合理性が改めて意識されている可能性がある。
現在のカムリとアコードには、もうひとつ共通点がある。それがハイブリッドだ。
米国仕様の現行カムリはハイブリッド専用車となり、アコードもハイブリッドを主力に据えている。つまり両車は「昔ながらのセダン」に回帰しているのではない。SUVより低く軽いボディと電動化技術を組み合わせることで、セダン本来のメリットを現代的に再構築しているともいえる。

では、この流れは日本にも波及するのか。
現在の日本では、米国以上にセダンの存在感が薄くなっている。2026年7月の国内セダン系モデルの販売を見ると、プリウスが3880台、カローラが1190台、シビックが723台。レクサス「IS」は447台、クラウンセダンは210台だった。
アコードも2024年に11代目が日本へ投入され、2026年には初代誕生から50周年を迎えた。同年7月末には一部改良を実施し、「Honda SENSING 360+」搭載グレードを含む上級セダンとして販売が続いている。
そして、この市場に大きな動きがある。
2023年に国内販売を終了したカムリが、この秋にも日本へ復活する予定だ。今回は北米で生産する右ハンドル仕様を日本へ輸入するという、従来とは異なる形になる。

トヨタは年間1万台という販売目標を掲げ、価格についても「プリウスより上、クラウンより下」という方向性を示している。
年間1万台なら月平均で約830台。現在の国内セダン市場を考えれば、決して小さな数字ではない。実現すれば現在のシビックを上回り、カローラにも迫る販売規模となる。カムリが復活すれば、プリウス、クラウン、アコードなどとともに、日本のセダン市場に久々に大きな選択肢が加わる。

一方で、SUVの価格上昇が続くなか、低燃費と快適性、走行安定性を兼ね備えたハイブリッドセダンが改めて評価される余地はある。とはいえ、米国で起きているカムリとアコードの復調が、そのまま日本でも再現されるわけではない。日本ではコンパクトSUVやミニバン、軽自動車の支持が極めて強く、セダンを取り巻く環境はさらに厳しい。
年間1万台を掲げて日本へ戻るカムリが、月800台規模を安定して売れるのか。SUVとミニバンが販売上位を占める日本でその数字を実現できれば、「セダンはもう売れない」というこれまでの常識を覆すひとつの材料となる。