連載

西川淳の自動車1Weekダイアリー

井の中のカワズ

ラディカル・ジャパン代表の榎本由香氏(左から3番目前)とラディカルファクトリーにて。
ラディカル・ジャパン代表の榎本由香氏(左から3番目前)とラディカルファクトリーにて。

かなりの閉塞感がある。日本人の海外志向が収縮し、このまま進むとまるで精神的な鎖国になりそうだ。直接的には円安、間接的には諦観。いずれにしても、うちにこもって全てをやり過ごせばいいという空気が濃厚に漂っているように思う。全ての領域で、だ。先週、私は英国のドニントンパークを訪れた。田園に広がるとても美しいサーキットで、空港が近いためレーシングカーと旅客機の爆音が共鳴し、名物のヘアピンカーブからは離陸する飛行機とコーナーに近づくレーシングカーとのコラボレーションを見ることもできる。すでにリポートが公開されているように、ドニントンパークに本拠を構えるラディカル・モータースポーツの訪問が目的だった。2025年にラディカル・ジャパンが立ち上がったわけだが、榎本由香さんがインポーターとなる背景と野望に感心した。彼女が運転に目覚めたのは比較的最近のことで、最初はスーパーカーでサーキットを走っていたらしい。ところがスーパーカーで走るとどうしても限界が低く、クラッシュさせてしまうこともあった。そこで本格的なGT3レーシングカーに乗り換えたものの、やはりロードカーベースの限界が露呈する。たまたま(サーキット専有時間が余ったから)日本製の純レーシングカーを試してみたところ、ハマった。

それからラディカルに辿り着く。彼女にはもうひとつ不満があった。素晴らしい文化と伝統、知識と経験、知恵と技術を持つ日本人がどうしてこうも内向的なのだろう。どうして海外にもっと出ていかないのだろう。どうしてもっと評価されないのだろう。そこで彼女は大好きなモータースポーツを通じて、日本と世界を今一度結びつける架け橋になろうと決意した。それがラディカル・ジャパンを立ち上げた精神的な理由である(物理的にはもちろんクルマも欲しかった)。すでに世界中でモータースポーツコミュニティを持つラディカルは、彼女の思いに、ハードとしても、そしてソフトとしても、ピッタリとマッチする唯一のブランドだったわけだ。私などはもう還暦を過ぎて、もうこれからはうちにこもったほうが良いかも、などと思い始めているけれど、彼女はまだ若い。子供たちもカートで活躍しているという。モータースポーツを通じて、今一度、世界における日本のプレゼンスを高めていきたい。彼女のピュアな想いを、微力ながら応援していきたいと思っている。

2026年9月第4週

2026年9月19日(土)雨

午前中はホテルで原稿執筆。ひと段落ついて電車に乗り八王子へ。名前が同じということで以前から親しくさせていただいている「淳ちゃん寿司」へランチがてら6周年のお祝いを伝えに。フレッシュなクロマグロを握りで。もう少し熟成させても面白い。部屋に戻り、「アマルフィ」に乗って浅草へ。同業の大先輩と「ステーキとみい」さんで会食。肉もうまいが、ガーリックライスが最高すぎる。こんなに丁寧に調理されたガーリックライスは初めて。アマルフィで鈴鹿へ。

2026年9月20日(日)曇り

フェラーリ アマルフィ
フェラーリ アマルフィ

朝から小雨だったが、奇跡的に上がって青空まで見えてきた。この日は鈴鹿サーキットで「スーパーカーフェスティバル」。来場した子供たちを運転席に座らせたり、爆音を聞いてもらったり、と、のんびりとした1日を過ごす。夜は仲間と鈴鹿で寿司ディナー。鈴鹿泊。

2026年9月21日(月)晴れ

鈴鹿サーキットで「スーパーカーフェスティバル」
鈴鹿サーキットで「スーパーカーフェスティバル」

この日も鈴鹿でスーパーカーフェス。台風の接近に伴って関東は大荒れの天候だったが、関西は晴れ間が広がった。とはいえ心配だったのは、夜にクルマ(しかもアマルフィ)で東京入りしなければならなかったこと。翌朝早くの便で英国へ渡航するため、何が何でもこの日中に東京入りしなければいけない。万が一、高速道路が通行止めになるようなことがあれば、当然、飛行機も新幹線も厳しい。一時は“行けないかも”と気が気でなかったけれど、夕方に鈴鹿を出てみれば、外出を自粛した方も多かったためか交通量はいつもよりかなり少なく、あっという間に東京へ。

2026年9月22日(火)晴れ

スタンフォードにて。
スタンフォードにて。

午前中のANAでロンドンへ。ラディカル・ジャパンのスタッフと共にスタンフォードという田舎町へ向かう。ディナーはホテルのレストランで。

2026年9月23日(水)晴れ

ラディカル SR1 XXR
ラディカル SR1 XXR

まるでイギリスらしくない快晴のなか、ドニントンパークに本拠を構えるラディカル・モータースポーツへ。本社でプレゼンテーションを受け、最新モデルの「SR1 XXR」をサーキットでテストする。ディナーはスタンフォードのイタリアンでラディカル本社の面々と共に。

2026年9月24日(木)晴れ

ラディカルファクトリーにて
ラディカルファクトリーにて

午前中はピーターバラのラディカルファクトリーへ。その昔のレーシングカー工場を彷彿とさせる職人仕事の現場に、一同、感動。午後からフリーだったので、DKエンジニアリングを訪問。レストレーションの現場はもちろん、巨大なストレージサービスに息を呑む。それにしても、ここに来ると「F40」がまるで「86」のようで、「F50」や「288GTO」にもさほど驚かなくなってしまう。ガンメタにペイントされた「288」や「F40」は、某王国からやってきた個体だろうか。フェラーリのみならず、ほとんどすべてのハイパーカーも複数台、見ることができる。もちろんクラシック&ヴィンテージも多数。名車の数々にお腹いっぱいになった。夜はラディカルのスタッフが勧めてくれたスタンフォードの「リバーサイド」さんで名物のフィッシュ&チップスを。間違いなく、これまで英国で食べたなかで最も美味しいF&Cだった。

2026年9月25日(金)晴れ

この日は1日フリーだったので、京都の友人にお願いしてあった場所へ初めて向かう。堀場マイラだ。マイラといえばちょうど80年前に国営で開業したモビリティ用の一大開発施設(プルービンググラウンド)だ。そこをおよそ10年前に京都の堀場製作所が買収。現在に至っている。堀場とマイラとの関係は元々、堀場のメインビジネスである排ガス試験装置をマイラに提供したことに始まったもの。電動化時代を見据えて事業の多角化を図る堀場にとって、マイラの施設は(メーカー以外の)会社でも世界の自動車産業に貢献できるということを示す、絶好の機会でもあった。個人的には、マイラに開発拠点を構えるベンチャー企業が開発した「アクティブ・アライメント・システム」が面白かった。ゲームの世界がいよいよ現実になろうとしている。

2026 9/19〜2026 9/25

走行距離 約700km 試乗台数 2台

2025 11/1〜2026 9/25累計

総走行距離 約5万3500km 累計試乗台数 218台

京シングルのサニーに驚嘆

22歳で1959年式「ダットサン100」に乗る驚愕の若者に遭遇【西川淳の自動車1WeekダイアリーVol.45】

スーパーカー界の重鎮、モータージャーナリスト西川淳。この連載は、昨年還暦を迎えた氏が、日々どんなクルマに乗って、何を感じたのか徒然なるままに語るものである。果たして今週はどこで何をして過ごしたのか?

連載 西川淳の自動車1Weekダイアリー

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