マツダ3とCX-30に2.5Lガソリンエンジンを設定
自動車業界では長年、エンジンの排気量を小さくし、ターボや電動化によって不足する性能を補う「ダウンサイジング」が進められてきた。

ところがマツダは、その流れとは逆ともいえる選択をしたのだ。
2026年の商品改良で「マツダ3」と「CX-30」に、新たなパワートレイン「e-SKYACTIV G 2.5」を投入。従来の主力だった2.0Lガソリンエンジンより500ccも大きい、2.5L直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンを設定したのである。
パワーアップのメリットに対し燃費悪化のデメリットは少ない
なぜ今、あえて排気量を拡大するのか。
新しいe-SKYACTIV G 2.5は、最高出力179ps/6000rpm、最大トルク238Nm/3750-4000rpmを発生する。従来のe-SKYACTIV G 2.0は156ps/6000rpm、199Nm/4000rpmだったため、最高出力は23ps、最大トルクは39Nm向上した。

しかも、単純に排気量を拡大しただけではない。2.5Lにもマイルドハイブリッドシステムを組み合わせ、バランスシャフトや気筒休止機構を採用している。CX-30の場合、WLTCモード燃費は2.5L・2WDが15.5km/Lなのに対し、2.0Lは16.2km/L。排気量を500cc拡大しながら、燃費の悪化は0.7km/Lにとどまる。
1.8Lディーゼルを廃止
今回の2.5L投入を読み解くうえで、もうひとつ重要なのがディーゼルの存在である。
商品改良に伴い、MAZDA3とCX-30では1.8Lクリーンディーゼル「SKYACTIV-D 1.8」がラインアップから姿を消した。背景には今後の排出ガス規制がある。マツダによれば、小型ディーゼルを将来の規制へ適合させるには尿素SCRなどの追加が必要となり、大きな開発コストがかかる。
さらに直近1年間のディーゼル販売比率はCX-30で約28%、MAZDA3では約20%。限られた販売規模のために小型ディーゼルを新たな規制へ対応させ続けることは、商品戦略として難しくなったと考えられる。

興味深いのは、ディーゼルを廃止したマツダが、単純に2.0Lガソリンへ一本化しなかったことだ。SKYACTIV-D 1.8は最高出力130psに対し、最大トルクは270Nm。低回転から力強く加速できることが大きな特徴だった。
新しい2.5Lガソリンの238Nmはディーゼルには届かないものの、2.0Lガソリンの199Nmからは約20%増えている。ディーゼルが得意としていた余裕あるトルク感に近づけながら、自然吸気ガソリンらしい滑らかなフィーリングを狙ったと見ることができる。

実際、マツダはCX-30の「25L」を「洗練された空間と上質な走りを兼ね備えたハイグレード」と位置づけている。単純に速さを追求するための2.5Lではなく、余裕ある走りそのものを商品価値としているわけだ。

マツダの戦略とユーザーのメリット
ここには、マツダらしいエンジン戦略も見えてくる。
小排気量エンジンをターボで過給すれば、排気量を増やさなくても高出力・高トルクを得ることはできる。一方、2.5L自然吸気ならアクセル操作に対して素直にトルクを引き出しやすく、複雑な過給システムも必要ない。
そこへマイルドハイブリッドや気筒休止を組み合わせることで、大排気量化による燃費面のデメリットを抑える。単なる「大排気量化」ではなく、自然吸気エンジンの特性を生かしながら効率を高める考え方である。

もちろん、ユーザー側にはデメリットもある。日本の自動車税(種別割)は排気量によって区分されるため、2.0L以下から2.5L以下になることで年間の税負担は増える。燃費についても2.0Lの方がわずかながら有利だ。
それでもマツダは2.5Lを投入した。MAZDA3では2.5L搭載の「25S」「25L」に2WD/4WDを用意し、6速ATだけでなく一部仕様には6速MTも設定する。現在のMAZDA3ファストバックは1.5L、2.5L、そして「e-SKYACTIV X 2.0」という性格の異なるパワートレインを選べる構成となった。

CX-30でも2.5Lには「25L」と特別仕様車「25 Air Edition」を設定し、2WDと4WDを用意する。価格は25Lが341万円から、25 Air Editionが352万円からとなる。
こうして見ると、マツダ3とCX-30の「2.5L化」は、単なる排気量アップではない。規制対応コストが膨らむ小型ディーゼルから撤退する一方、2.0Lガソリンだけでは埋めにくい「余裕あるトルク」「滑らかさ」「上質な走り」を、2.5L自然吸気+電動化によって補う。

エンジンを小さくしてターボで補うことだけが効率化ではない。ダウンサイジングが当たり前になった現在だからこそ、MAZDA3とCX-30への2.5L投入は、マツダのパワートレインに対する考え方がよく表れた選択といえそうだ。
