1980年代の第1次コンパクトカーブーム

1960年代に、日本経済の急成長とモータリゼーションによって、いったん大きくなったクルマのボディとエンジンは、1970年代に始まった排ガス規制強化とオイルショックの影響で、小型化へのシフトを余儀なくされた。燃費や排ガス規制対応のためには、ボディは軽くエンジン排気量も小さい方が有利なのだが、当時の550ccの軽自動車では、排ガス規制対抗が厳しく、またファミリーカーとしては小さくパワー不足だった。
そのような状況下で、軽並みの燃費が狙えて、それでいて室内空間が確保でき、高速道路でも余裕をもった走りができる排気量1.0L~1.3Lエンジンを搭載したコンパクトカーが、1980年代に注目されるようになった。

まず登場したのが、リッターカーの元祖とされるダイハツ「シャレード」である。シャレードは、1977年11月に登場して、1.0Lクラス乗用車としては世界初となる3気筒4ストロークエンジンを搭載し、燃費の良さとともに軽快な走りによってヒットモデルとなった。

シャレード以降、多くのコンパクトカーが市場に登場したが、なかでも人気を誇ったのが、1981年11月にデビューした背高ノッポの“トールボーイ”と呼ばれたホンダ「シティ」と、ジウジアーロによる欧州風デザインと扱いやすさが特長の1982年10月デビューした日産自動車の「マーチ」だった。見た目もコンセプトも大きく異なるシティとマーチだったが、当時の市場が求めていたコンパクトカー像に上手く合致したのだ。
1990代にはコンパクトカーブームが停滞
盛り上がったコンパクトカーブームだったが、1990年代初頭のバブル崩壊の頃には、コンパクトカーは“安いが、それなり”という評価となって存在感が薄れたためだった。
1990年代には、場所を選ばず日常もレジャーも楽しめるRVや、多人数で荷物も運べるミニバンのような実用的なクルマが支持された。また、1990年の軽自動車の規格改定によって、軽自動車のエンジン排気量が550cc→660cc、全長が+100mm拡大されてコンパクトカーとの差が縮まった。さらに、1993年9月にデビューしたスズキ「ワゴンR」が軽ながら広々とした室内空間を持つ軽ハイトワゴンブームを巻き起こし、コンパクトカーユーザーが軽にシフトするという現象が起きたのだ。
このような市場の需要変化によって、RVやミニバン、軽ハイトワゴンにメーカーの開発投資が集中することで、コンパクトカーの商品力強化が手薄になり、コンパクトカーの魅力自体も低下し、新たなコンパクトカーが出現しなかった。
そのような停滞した状況で、コンパクトカー人気を復活させたのが、新世代コンパクトカーのトヨタ「ヴィッツ」とホンダ「フィット」だった。
コンパクトカーのイメージを刷新したトヨタ・ヴィッツ

1999年1月に誕生したトヨタ「ヴィッツ」は、“世界に通じるコンパクトクラスの新ベンチマークとなる”をコンセプトに掲げて、プラットフォームや主要コンポーネントすべてを一新した新世代コンパクトカーだった。

従来のコンパクトカーの定番であるシンプルな2ボックススタイルでなく、丸みを帯びた世界に通用する欧州車風の3ドア/5ドアハッチバックスタイルを採用。ロングホイールベース化することで広い室内空間が実現され、さらにワンランク上のインテリアで上質感をアピールした。

パワートレーンは、小型・軽量化を図った新開発の最高出力70ps/最大トルク9.7kgmを発揮する1.0L 直4 DOHC VVT-i(可変タイミング機構)エンジンと、5速MTと電子制御式4速ATの組み合わせ。駆動方式は、当初はFFのみだった。

さらに世界戦略車に相応しいように走行性能や安全性能も高められ、海外では「ヤリス」とネーミングして世界中で人気を獲得。発売当初から月販1万台を越え、初年度はカローラに続く15万台を達成し、日本と欧州でカー・オブ・ザ・イヤーをW受賞した。
車両価格は、84.5万~128万円。当時の大卒初任給は19.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で99万~150万円に相当する。
ヴィッツの出現が、それまでのコントパクトカーのイメージを一掃。すべてにおいてコンパクトカーのレベルをワンラック上のレベルに引き上げ、ヴィッツが世界のコンパクトカーの世界基準となったのだ。
ワンランク上の室内空間と低燃費、優れた性能を実現したホンダ・フィット

ホンダ「フィット」は、「ヴィッツ」がデビューした2年後の2001年6月、ヴィッツとはコンセプトの異なる新世代コンパクトカーとして登場した。その基本設計は、ホンダ伝統の“MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想、すなわちに“人のためにスペースは最大に、メカは最小”基づいて開発された。

最大の特長は、コンパクトカーでありながら圧倒的なスペースユーティリティを実現したこと。通常は、後席下に配置する燃料タンクを、前席下の車両中央に配置したセンタータンクレイアウトを採用して、ワンクラス上の低床の室内空間を生み出したのだ。
ボディは、ワンモーションフォルムの個性的な5ドアハッチバックで、Cピラーにウインドウを備える点が、個性的だった。また広い室内は、リアシートを床下に格納することでフルフラットな荷室が実現された。
パワートレーンは、新開発の1.3L 直4 SOHC i-DSIエンジンとホンダマチックS-CVTの組み合わせ。i-DSIは、1気筒の燃焼室に2つの点火プラグを対角に配置し、点火タイミングをずらすことで急速燃焼を実現する方式。これにより、最高出力86ps/最大トルク12.1kgmを発揮し、クラストップの燃費を達成した。駆動方式は、FFとデュアルポンプ式フルタイム4WDが選べた。
また、優れたエンジン性能と軽量なボディが相まって、小気味よい走りも実現。車両価格は、106.5万円~144.0万円。当時の大卒初任給は19.7万円程度(現在は約23万円)なので、現在の価値で約124万円~168万円に相当する。
2001年の販売は、半年足らずで10万台を超え、翌2002年は25万790台を記録。2年目でカローラを凌ぎ、ホンダとして初の登録車トップの座を獲得した。
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「ヴィッツ」と「フィット」は、従来のコンパクトカーの“安いのが魅力でそこそこ使える”という既成概念を打破したエポックメイキングなコンパクトカーだった。ただし、両車のクルマづくりの方向性に大きな違いがある。ヴィッツは、乗用車的な用途が得意であり、快適な小さなセダンのようなチョット上級なコンパクトカー。一方のフィットは、小さなミニバンのように人と荷物が運べるマルチな用途に対応できるのが特徴である。

















