連載

【歴史を飾ったライバル対決】

地球温化と化石燃料依存からの脱却のための電動化

1990年代、CO₂削減による地球温暖化抑制と化石燃料依存からの脱却が世界的なテーマとなった。地球温暖化の原因は、CO₂やメタン、フロンガスなど、断熱効果の高い温室効果ガスの増加である。その地球温暖化ガスの主成分であるCO₂低減の観点から、化石燃料を燃焼させてCO₂を排出する自動車には強いプレッシャーがかかり、CO₂(燃費)低減が要求さされるようになった。

その有効な対策として考えられたのが、電気自動車やハイブリッド、プラグインハイブリッドといった電動化技術である。しかし、当時はまだ安価で効率の良い、耐久性の優れた実用的な電池(リチウムイオン電池)は存在しなかったので、電気自動車やPHEVは現実的ではなかった。

現実的な解が、エンジンとモーターを動力源として、運転状況に応じて両者を効率よく使い分けるハイブリッドだったのだ。

3種のハイブリッドシステム

ハイブリッドとしては、以下の3方式がある。

3種のハイブリッドシステム

・パラレル方式:エンジンとモーターを駆動力として使い分けるが、あくまでエンジンが主役でモーターは補助的な役割
・シリーズ方式:エンジンは、電池の発電専用として使い、エンジンで充電した電池で全域モーター走行
・シリーズ・パラレル方式:エンジンの出力を発電用と駆動用に使い分け、エンジンとモーターの駆動力を合成して走行

また電池容量とモーターの大きさによって、モーター主体のフル(本格)ハイブリッドとエンジン主体のマイルドハイブリッドに分類した。

それぞれ一長一短があるが、効率が良いのはシリーズ・パラレル方式のフルハイブリッドだが、構成が複雑でコストが高い。一方、燃費低減効果は限定的だが、低コストで容易に構成できるのがパラレル方式のマイルドハイブリッドである。

世界に衝撃を与えた世界初の量産ハイブリッドのトヨタ「プリウス」

1997年12月にデビューした世界初の量産ハイブリッド、トヨタ初代「プリウス」

“21世紀に間に合った”と謳って、プリウスは1997年12月にセンセーショナルにデビューした。「カローラ」と同等サイズの4ドアセダンで、ホイールベースを延ばして余裕の室内スペースを確保し、また燃費のために空気抵抗に優れたスタイリングを採用。空気抵抗係数(Cd)0.30は、セダンとしてはトップレベルを達成した。

トヨタ初代「プリウス」のコクピット、メーターまわり

インテリアも先進的で、大型のセンターメーター、中央部にマルチインフォメーションディスプレイを備え、オーディオやエアコンの表示に加えて、エンジンとモーター、バッテリー間のエネルギーフローを表示して先進性をアピールした。

・THS(Toyota Hybrid System:トヨタ・ハイブリッドシステム)

トヨタ初代「プリウス」搭載のハイブリッドシステム(THS)

THSは、エンジンとモーター&発電機、動力分割機構などで構成されるシリーズ・パラレル方式のハイブリッドである。その特徴は、エンジンとモーターの出力を動力分割機構(遊星歯車機構)によって、クルマの駆動力と発電に効率的に振り分けていること。低速トルクに優れたモーターと高速走行に有利なエンジンを効率的に使い分け、エンジンとモーターを最適な組み合わせで使う。また、減速時の制動エネルギーを回生し、ニッケル・水素バッテリー(駆動電圧288V)に充電する。

トヨタ初代「プリウス」搭載のハイブリッドシステム(THS)

ハイブリッドシステムに組み合わせるエンジンは、プリウスのために新開発されたアトキンソンサイクルを適用した最高出力58ps/最大トルク10.4kgmを発揮する1.5L 直4 DOHC VVT-iエンジン、これに30kW(41ps)/31.1kgmのモーターを組み合わされた。燃費は、28.0km/L(10-15モード)を達成、一般的な4ドアセダンの燃費が18km/L程度なので、ハイブリッドの効果は驚異的だった。

トヨタ初代「プリウス」のサスペンション

車両価格は、標準仕様で215万円とやや割高だったが、特に米国ではエコカーのシンボルとしてハリウッドスターなどに愛用されるなどの後押しもあり、2000年5月までのプリウスの累計販売は3万7000台を記録した。

トヨタ初代「プリウス」の居住性、ラゲッジスペース

ちなみに、当時の大卒初任給は19.5万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で標準仕様が約254万円に相当する。

シンプルなマイルドハイブリッドで世界最高燃費を達成したホンダ「インサイト」

1999年11月にデビューしたホンダ「インサイト」

プリウスの2年後、1999年11月にデビューした 「インサイト」は、3ドアの2シーター・ファストバッククーペで、35.0km/Lという当時世界一の低燃費を実現。実用性を重視したプリウスとは対照的に、スポーツカーの要素を取り入れたパッケージングが特徴だった。

ホンダ初代「インサイト」のCd 0.25の優れた空力性能

鋭く切り落とされたようなリアハッチを持つ流線形ファストバックスタイルに、リアホイールを覆うホイールスカートによる空気の整流効果によって空気抵抗を低減。Cd値は、プリウスの0.3に対して0.25を達成した。

1999年11月にデビューしたホンダ「インサイト」のリヤビュー

フレームは、NSXと同じアルミフレームを採用し、アルミニウムのボディパネルや樹脂パネルを使うことで徹底的に軽量化を図り、車両重量は驚異の810kg~840kgmが達成された。

・IMA(Integrated Motor Assist:インテグレーテッド・モーター・アシスト)

ホンダ初代「インサイト」搭載のIMAシステム

IMAは、エンジンとCVTまたは5速MTの間に円盤状の薄型DCブラシレスモーターを挟み込んだパラレル式マイルドハイブリッドである。減速時にはモーターが減速エネルギーによる発電を行ない、搭載されているニッケル水素電池(駆動電圧144V)に充電する。この電気を使って、主に加速時にエンジンの駆動力をアシストする。基本的にはモーターのみの駆動(EV走行)はできない。

ホンダ初代「インサイト」に搭載されたECA-MF2型エンジン

エンジンは、軽量でフリクションを低減させた最高出力70ps/最大トルク9.4kgmを発揮する1.0L 直3 SOHCリーンバーンVTECエンジン、これに10kW(13.6ps)/5.8kgmのモーターとCVTおよび5速MTが組み合わされた。

車両価格は、210万円(5速MT)/218万円(CVT)に設定された。

【主要諸元の比較 プリウス vs. インサイト】

・ボディスタイル:4ドアセダン vs. 3ドアハッチバッククーペ

1997年12月にデビューした世界初の量産ハイブリッド、トヨタ初代「プリウス」雪上テスト風景
1999年11月にデビューしたホンダ「インサイト」

・ボディサイズ 全長/全幅/全高(mm):4275/1695/1490 vs. 3940/1695/1355

1997年12月にデビューした世界初の量産ハイブリッド、トヨタ初代「プリウス」
ホンダ初代「インサイト」のリアビュー

・車両重量:1240kg vs. 810kg~840kg

・エンジン:1.5L 直4 DOHC VVT-i(58ps/10.4kgm) vs. 1.0L 直3 SOHCリーンバーンVTEC(70ps/9.4kgm)

トヨタ初代「プリウス」搭載のハイブリッドシステム(THS)
ホンダ初代「インサイト」搭載のIMAシステム

・モーター:交流同期型(30kW(41ps)/31.1kgm) vs. DCブラシレス(10kW(13.6ps)/5.8kgm)

トヨタ初代「プリウス」のコクピット
ホンダ初代「インサイト」のコクピット

・駆動用電池:駆動電圧288V/容量6.5Ah/1.87kWh vs. 144V/6.5Ah/0.94kWh

・10-15モード燃費:28.0km/L vs. 30.0km/L

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同じハイブリッドながら、「プリウス」と「インサイト」の設計思想は大きく異なる。プリウスは実用重視のフルハイブリッド、インサイトは軽量化と空力を極めた燃費優先型のマイルドハイブリッドである。現在、プリウスはTHSを進化させながらモデル展開を進め、一方のホンダはさまざまなハイブリッドシステムに挑戦しながら、現在はフルハイブリッドのe:HEVシステムに集約している。

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