新車価格が約500万円のSUVと約260万円のSUV。購入時の価格差は約240万円にもなるが、3年後の車両価値を比較すると、意外な逆転現象が起きていた。高額なSUVの方が、購入価格からの値落ち額が小さかったのである。中古車市場の最新データから、その理由を探ってみた。

新車を購入する際、多くの人が最初に気にするのは車両価格だ。300万円のSUVと500万円のSUVなら、当然ながら後者の方が高額であり、購入時の負担も大きい。しかし、数年間乗って売却するところまで考えると、必ずしも高額なクルマほど経済的な負担が大きいとは限らない。

その理由は、購入価格と売却時の車両価値との差である「値落ち額」にある。
例えば、300万円で購入したSUVが3年後に200万円の価値を残していれば、値落ち額は100万円。一方、500万円で購入したSUVが450万円の価値を維持していれば、値落ち額はわずか50万円となる。購入時には200万円も高かったSUVの方が、車両価値の減少額では50万円も小さくなる計算だ。
もちろん、これは仕組みを説明するための仮定だが、実際の中古車市場でも同様の現象が起きている。
今回比較するのは、トヨタ「ヤリスクロス」と「ランドクルーザープラド」である。ヤリスクロスは2023年式の「ハイブリッドZ・2WD」、ランドクルーザープラドは同じ2023年式の2.8Lディーゼル「TX Lパッケージ・7人乗り」を対象とした。
ヤリスクロスの当時の新車価格は260万6000円。一方、プラドは499万7000円で、両車の価格差は239万1000円に達する。
ところが、3年後の車両価値を比較すると、興味深い結果が浮かび上がった。中古車相場を分析するリセールバリュー総合研究所が2026年10月に公表したデータによると、2023年式ヤリスクロス・ハイブリッドZの平均売却予想額は223万5200円。新車価格との差は37万800円で、残価率は約86%となっている。
これに対し、2023年式ランドクルーザープラド・TX Lパッケージのディーゼルモデルは、10月17日集計の平均売却予想額が468万5714円。新車価格との差は31万1286円で、残価率は約94%に達する。つまり、新車価格では約239万円も高かったプラドの方が、3年間の値落ち額では約6万円も小さいという結果になったのだ。
ここで注目したいのが、両車の走行距離である。
同研究所の2026年10月の集計では、2023年式ヤリスクロス・ハイブリッドの2WDモデルは平均約3万km、プラド全体の2023年式も平均約3万4000kmとなっている。完全に同一条件ではないものの、年式が同じで走行距離も比較的近い車両群のデータから、こうした価格差が確認できたことは興味深い。
なお、今回の「平均売却予想額」は、買取査定された車両がオートオークションなどで売却される際の価格を予測したものであり、オーナーが実際に受け取る買取金額とは異なる。また、走行距離は車種・型式別の平均であり、比較対象の各グレードで条件を完全にそろえたものではない。
それでも、両車の残価率には明確な違いがある。
では、なぜ約500万円のプラドは、約260万円のヤリスクロスよりも値落ちしにくいのだろうか。最大の理由として考えられるのが、ランドクルーザーシリーズ特有の中古車需要の強さだ。ランドクルーザープラドは、本格的な悪路走破性能と耐久性を備えたSUVとして、国内だけでなく海外でも高い人気を誇っている。特にディーゼルモデルは、力強い走行性能や長距離移動への適性などが評価され、中古車市場でも根強い需要がある。
さらに、150系プラドは2024年に国内販売を終了し、後継モデルとなるランドクルーザー250へ世代交代した。新車では購入できなくなったことも、状態の良い150系プラドの中古車価値を支える要因のひとつと考えられる。
一方、ヤリスクロスも決してリセールバリューが低いわけではない。今回比較した2023年式ハイブリッドZの残価率は約86%。3年が経過しても新車価格の8割以上の価値を維持している。つまり、今回の逆転現象はヤリスクロスの中古価格が大きく下落したためではなく、プラドが極めて高い残価率を維持していることで生まれたものだ。
ただし、ここで注意したいのが、値落ち額の小ささと維持費の安さは別問題という点である。ヤリスクロスはコンパクトなボディと優れた燃費性能を特徴とするハイブリッドSUVだ。一方、プラドは大型ボディに2.8Lディーゼルエンジンを搭載する本格クロスカントリーSUVであり、自動車税やタイヤ交換費用などの負担はヤリスクロスより大きくなりやすい。
さらに、任意保険料や車検費用、ローンを利用した場合の金利負担なども考慮する必要がある。また、今回比較した新車価格は車両本体価格であり、登録諸費用やメーカーオプション、購入時の値引きなどは含んでいない。そのため、3年間の総所有コストまでプラドの方が安かったと結論付けることはできない。
しかし、クルマの経済性を考えるうえで、購入価格だけでなく、将来の売却価格が重要であることは間違いない。例えば、購入時の価格が安くても、数年間で車両価値が大きく下がれば、その分だけ実質的な負担は増える。反対に、高額なクルマでも中古車市場での需要が強く、高い残価率を維持できれば、車両価値の減少額を小さく抑えられる。
もっとも、リセールバリューは車名だけで決まるものではない。同じ車種でも、グレード、駆動方式、ボディカラー、メーカーオプション、走行距離、修復歴などによって査定額は大きく変わる。加えて、モデルチェンジの時期や新車の供給状況、海外市場での需要なども中古車相場を左右する。
特にランドクルーザー系は、海外需要や供給状況によって価格が大きく変動することがあり、一般的なSUVとは異なる値動きを示す場合がある。今回のプラドのような高い残価率が、今後も維持されるとは限らない。それでも、2023年式のヤリスクロスとランドクルーザープラドを比較した結果は、クルマ選びにおける重要な視点を示している。
新車価格が260万円のSUVと約500万円のSUV。購入時には約240万円もの差があったが、3年後の車両価値の減少額では、むしろ高額なプラドの方が小さかった。クルマの価格が年々上昇するなか、購入時の金額だけで「高い」「安い」を判断するのは早計だ。重要なのは、いくらで購入するかだけでなく、手放すときにどれだけの価値が残るかという視点である。高額なSUVが必ずしも経済的に不利とは限らない。今回の比較は、そのことを具体的な数字で示す興味深い一例といえる。