舗装路では柔らかい足回りも、荒れた路面では抜群の安心感を発揮!

前編に続き、26年後半から日本市場で発売されるホンダのオフロード系SUV「パスポート」に付いてレポートしていこう。
まず、日本仕様として導入される最上級グレードの「TRAILSPORT ELITE」は、オフロード向けのサスペンションチューニングが施されている。街中の舗装路を普通に走っていると、やや接地感に乏しい柔らかな乗り心地が最初に印象に残る。タイヤもブロックが大きめに設計されたオールテレーンタイヤということで、独特のゴツゴツした感触やロードノイズの大きさも気になるところだ。

だが、その乗り味は荒れた路面に足を踏み入れた瞬間、逆に乗り手に安心感を与えてくれる。今回の試乗では春先の風の強さで知られるユタ州の郊外も走ったのだが、風に運ばれた砂塵が舗装路の上にも降り積もってしまうため、もはやオンロードなのかオフロードなのか判別がつかなくなるほどだ。

そうした路面環境が急に変わる状況においては、常に神経を尖らせて走らなければならないダイレクト感の強い足回りよりも、ストロークの豊かなパスポートの足回りの方が安心感が高い。
実際、日没頃に撮影を終えて移動している時、大きな通りに合流して右折しようとしたのだが、路面の状況がよく見えなかったためステアリングを早く切りはじめてしまい、砂が溜まった路肩に右リヤタイヤを乗せて大きくリフトさせてしまったことがあった。

ドンと跳ね上がった後、車体がバウンドして大きく揺れたのだが、それでも同乗者が笑って許してくれる程度の衝撃で済んだのは、まさにパスポートの懐深いサスペンションのおかげ。環境の変化に柔軟に対応できるパスポートは、気候変動により突発的な積雪や激しいゲリラ豪雨が常態化している日本でも心強い相棒になってくれるに違いない。
パワフルなV6エンジンと電子制御4WDが生み出す、巨体に似合わぬ軽快な走り

3.5リッターV6エンジンは低回転からトルクを発揮し、加速性能も十分。かなりの巨体ながら、ワインディングでもグイグイと走れて頼もしい。ステアリングにもそれなりに遊びが設けられているので、もちろん「切れ味鋭く曲がる」というタイプでは全然ないのだが、操作に対する姿勢変化のリズムが掴めてくると、思いのほか機敏に曲がってくれる。

パスポートに搭載される電子制御4WDのi-VTM4は、パイロットやリッジラインなど、その他の北米向けモデルに採用されているシステム。フロントのトランスファーユニットとリヤのトルクベクタリング機構が連動することにより、駆動力を前後と左右後輪に最適配分する。パスポートに採用されているのは、従来より許容トルクと応答速度を上げた第2世代だ。

滑りやすい路面におけるスタビリティを高めることに貢献するのはもちろんだが、リヤアクスル左右の駆動力配分は0〜100で自在に調整できるため、コーナリングへの影響も多大。自然なステアリングフィールで、まるで自分の運転が上手くなったように錯覚させてくれる旋回性能を実現してくれる。

日本仕様にそのまま引き継がれるかどうかはわからないが、ドライブモードの中から最も悪路走破性を高めるトレイルモードを選択した場合、オフロード専用制御の「トレイル・トルク・ロジック」を発動。タイヤが一時的に接地を失うような状況でも駆動力を最適に配分してくれる。
そしてマルチビューカメラシステムには、トレイルモード選択時に自動でフロントカメラの映像を表示する「トレイルウォッチ」という機能も搭載。急勾配の坂を登っている時など、路面の様子を直接目で見ることができなくても、前方視界を確認することができる。

車中泊にも使えそう! 広大な荷室とアウトドアで役立つ充実装備
SUVとして大事なラゲッジスペースについても見ていこう。筆者が実測した荷室の各部寸法は、通常時の奥行きが約1080mm、幅が約1130mm、高さが約845mm。普段の買い物など、日常的な用途では使い切れないほどの広さだ。

後席シートは6:4分割可倒式となっており、背もたれを倒せばさらに広いスペースを確保することができる。ドライビングポジションを取った運転席の背もたれまでの奥行きは、約2030mmに達する。後席格納時の段差や隙間はなく、フラットなフロアになるため、車中泊のニーズにもしっかり適応してくれそうだ。

荷室側面には収納も備わり、常備しておきたいアウトドア用の道具類も整理整頓できそう。AC115V 150Wのアクセサリーコンセントも装備されている。

フロアボードの左側を折りたたむように持ち上げると、収納トレーが備わり、ここもキャンプ道具を運ぶのに重宝しそうだ。右側にはスペアタイヤが収納されているのだが、その前方に山々を描いたイラストがあるなど、ちょっとした遊び心が込められている。


また、「TRAILSPORT ELITE」はシートのヘッドレストだけでなく、ステアリングやフロアマットにも専用ロゴを装備。ステアリングヒーターも備わるため、冬場の早朝に出かけるような時にありがたみを実感しそうだ。



後席頭上まで続く大開口のパノラミックムーンルーフも標準装備。室内側のシェードを開放するだけで室内の明るさが格段にアップする。車中泊するなら星空を眺めることもできるかもしれない。

600kmの試乗で見えた燃費の実力と、パスポートならではの魅力

さて、今回の試乗で走った走行距離は約600kmとなり、平均燃費は約8.7km/Lと出た。重量や4WDであることを考える妥当なところだが、少なくとも燃費がいいとは言い難く、妥協は必要だ。

これまで、日本国内のSUVラインナップの中で最上級に位置したCR-Vと比べても、明確にオフロードでの強さとアウトドア好きをアピールできるパスポートは、これまでホンダにありそうでなかった個性に満ちている。

そもそもトランプさんのご機嫌を取るために始まった国土交通省の制度がいつまで続くのかはわからないが、他の人とカブらないクルマで自分らしさを主張したい人にとって、パスポートはかなりイケてる選択肢であることは間違いない。


