マツダが開発を進める謎のSUVが、欧州の公道で目撃された。スクープ班が捉えたのは、大型SUV『CX-90』のボディを大胆に短縮した異形のテスト車両だ。その正体は、マツダが独自開発する次世代EVの可能性がある。

この車両は約1年前にも米国で目撃されており、今回は欧州で再び確認された。一見するとCX-90の改良型にも見えるが、通常モデルとは明らかに異なるプロポーションを持っている。最大の特徴は、CX-90のボディを流用しながら、ホイールベースを短縮している点だ。リヤオーバーハングも大幅に切り詰められ、トレッド幅も狭くなっている。大型SUVを無理やりコンパクトにしたような、不自然なシルエットが目を引く。

こうした開発車両は“ミュール”と呼ばれ、量産車のボディが完成する前に、新しいプラットフォームやパワートレインを検証する目的で使用される。つまり、今回の姿がそのまま市販モデルのデザインになるわけではない。
フロントマスクにも通常のCX-90とは異なる特徴がある。大型グリルはほぼ完全に塞がれ、バンパーには小さな冷却用開口部が残されているだけだ。空力性能を意識したパーツも装着されており、内燃機関を搭載するCX-90とは異なる車両であることを示唆している。
さらに、ホイールはフロントがシルバー、リヤがブラックという組み合わせ。量産仕様とは考えにくい暫定的な装備であり、開発途中の車両であることがうかがえる。
では、マツダはなぜ大型SUVのCX-90をわざわざ短縮しているのだろうか。入手した情報によると、この車両はマツダが独自開発する新世代EV専用プラットフォームの検証に使用されている可能性がある。
注目したいのは、そのボディサイズだ。CX-90やCX-70より明らかに小さく、最終的な市販モデルは『CX-5』や北米向け『CX-50』に近いクラスになるものと予想されている。仮にCX-5級のSUVとして登場すれば、マツダのEV戦略において重要なモデルとなりそうだ。大型SUVより幅広いユーザーを対象にできるだけでなく、日本市場でも現実的なサイズの電動SUVとなる可能性がある。
独自開発のEV専用プラットフォームを採用か
この新型EVが、すでに発表されているマツダの電動SUVと大きく異なるのは、車両の基本設計だ。マツダは中国の長安汽車との協業によって、電動セダン『MAZDA 6e』やSUV『CX-6e』を展開している。これらは中国で開発された車両をベースとしているが、今回の新型SUVには、マツダが独自に設計するEV専用プラットフォームが採用されるものとみられる。このプラットフォームは、将来的に異なるボディサイズや車種にも展開できる可能性がある。マツダが重視してきた車体構造や重量配分、操縦安定性などを、EVでも追求するための基盤になるものと考えられる。
バッテリーについても、新しい技術の採用が検討されているようだ。入手情報では、次世代リチウムイオン電池に加え、将来的な全固体電池の活用も視野に入っているとされる。マツダはパナソニック エナジーとの協業によって円筒形リチウムイオン電池の調達を進めており、国内でのバッテリーモジュール生産体制の整備にも取り組んでいる。ただし、今回の新型SUVに全固体電池が搭載されると決まったわけではない。まずは次世代リチウムイオン電池を採用する可能性も考えられる。
市販化は2029年頃までずれ込む可能性も
もうひとつ気になるのが発売時期だ。マツダの独自開発EVについては、当初2025年頃の発表が想定されていたが、その後、2027年までの投入へと計画が見直されたと伝えられている。さらに最新情報では、開発スケジュールが再調整され、市販モデルの登場が2029年頃までずれ込む可能性も浮上している。今回の車両が依然として既存モデルのボディを流用したミュールであることを考えると、量産仕様の完成までには、まだ一定の時間が必要なのかもしれない。今後の焦点となるのは、市販モデルに近い専用ボディをまとったプロトタイプがいつ姿を現すかだ。その段階になれば、新型EVのデザインや正確なボディサイズも見えてくるだろう。
日本市場への導入も注目点のひとつとなる。現在、マツダは国内で純粋なバッテリーEVの選択肢が限られている。独自開発の新型SUVが登場すれば、国内の電動化戦略にも大きな変化をもたらす可能性がある。特にCX-5に近いサイズであれば、日本の道路環境や駐車場事情にも比較的適応しやすく、マツダの主力SUVを検討するユーザーにとっても現実的な選択肢となりそうだ。
車名や価格、航続距離などは明らかになっていないが、CX-90のボディを切り詰めた異形のテスト車両が、北米に続いて欧州でも走行を続けていることは確かだ。マツダが独自開発する次世代EVは、どのような姿で登場するのか。今後、市販型に近いプロトタイプが姿を現せば、その輪郭がさらに明確になりそうだ。













