スズキ・SV-7GX……113万3000円~(2026年10月13日発売)








Aモードの瑞々しさに感激、このミドルVツインはやはり名機だ

1999年、初代SV650/Sとともに登場したスズキの645cc水冷90°Vツイン。同時開発されたSV400/Sが前年の1998年に先行して登場しているが、このパワーユニットの活躍の場は、スズキのラインナップだけにはとどまらなかった。
社内ではVストローム650やグラディウスへと展開され、イタリアのカジバもRaptor 650とV-Raptor 650に採用。さらにラベルダも、同ユニットを搭載するプロトタイプ「650 Lynx」を製作している。四半世紀を超えて進化を続け、他メーカーにも選ばれてきた、息の長いエンジンなのだ。

SV-7GXでは、新たに電子制御スロットルを採用。3種類の出力特性を選べるSDMS、3段階+オフのトラクションコントロール(STCS)、オン/オフを切り替えられる双方向クイックシフトシステムを備えた。SV650から受け継いだイージースタートシステム、ローRPMアシストなどとともに、スズキではこれらの電子制御システムをS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)と総称している。なお、6軸IMUは搭載しておらず、トラコンやABSはバンク角に応じた制御を行うタイプではない。
SDMSのモードはA(アクティブ)、B(ベーシック)、C(コンフォート)の3種類のみ。出力特性やエンジンブレーキなどを個別に変更できるユーザーモードは用意されていない。AとBはともに最高出力73PSを発揮し、Bはスロットル開度における発生出力をマイルドにした設定。Cではさらに穏やかな特性となり、最高出力は45kW、約61PSに抑えられる。

ここで把握しておきたいのは、SDMSとトラコンが独立した設定になっていることだ。走行モードの変更に合わせてトラコンも連動して切り替わる多くのモデルとは異なり、たとえ雨が降ってきてCモードを選んでも、トラコンまで介入の強い設定になるわけではない。コンディションに合わせてモードを変更する際は、両方の設定を確認してほしい。

筆者はこの水冷Vツインに、歴代SV650やVストローム650、グラディウス(400cc版を含む)などで何度も触れてきた。今回あらためて実感したのは、実用性の高さと心地良さだ。
3000~5000rpmにかけて、まるで意思を持っているかのようにフワリとトルクが盛り上がり、そこから最高出力を発生する8500rpmまでは、駆け足をしているかのように力強くも軽やかに伸びていく。そして、その先も急に勢いを失うことなく、レッドゾーンの始まる1万rpm付近まで、力強さはほぼドロップすることがない。
加えて、4000rpm以下でのスロットル操作に対するレスポンスが緻密なのも見逃せない。交通の流れが20km/hを下回る場面でも、適切なギヤを選べばギクシャクせず、スムーズに追従できる。個人的には、スロットルの遊びがなく、操作に対してすぐに反応が返ってくる感触も気に入った。
回転数だけでなく、スロットルの開け方によってもエンジンのフィーリングは変化する。それが顕著に感じられるのがAモードだ。この瑞々しさ、表情の豊かさは、歴代ナンバー1といっても過言ではない。

ちなみに、トップ6速での回転数は、メーター読みで60km/h:約2700rpm、100km/h:約4500rpmだった。公表されている減速比とタイヤの呼び寸法から求めた概算値は、それぞれ約2800rpm、約4600rpmとなる。実際のタイヤの転がり周長やメーターの表示誤差を考えれば、概ね整合する数値だ。
高速巡航で多用する4000~5000rpm、スロットル中開度域に漂うウェットな鼓動感は、まさに“癒やし系”だ。急かされることなく、それでいて退屈もしない。この感触こそが、乗り続けたいと思わせる根源なのだろう。
Bモードでは、そうした表情の変化がなだらかになり、何となく「スン……」と澄ました印象になる。今回のウェット路面では、筆者にはAモードでも十分に扱いやすく感じられたため、短い試乗時間においてBを使う機会は少なかった。
Cモードはさらに穏やかだ。先の理由から筆者が積極的に選ぶことはなかったが、250ccや400ccからステップアップしたライダーが、この排気量帯のトルク感に慣れていく上でのトレーニング用として有効だと感じた。
双方向クイックシフターの変速フィーリングも良好だった。各社が自動変速システムや自動クラッチへと歩を進める昨今、ライダーエイドな装備としては、もう一歩先も期待したくなる。それでも、SV-7GXのシステムは実用上、十分に洗練されている。

回転域やスロットル開度、勾配などの負荷条件によっては、やや強めの変速ショックが出ることも。とはいえ、総じて最新世代のクイックシフターと言っても差し支えないレベル仕上がりだ。なお、シフトペダルの踏み応えには少し弾力があり、カチッとした硬質な感触ではないものの、操作自体は軽く、すぐに慣れてしまった。
一方、クラッチレバーの操作力は、このクラスとしては重めに感じた。クイックシフターで走行中の操作回数は減らせても、発進と停止を繰り返す街中では気になる部分だ。今後、操作力を軽減する社外パーツ(長いクラッチレリーズアームなど)が登場することにも期待している。
安定性重視のハンドリング、乗り心地は極めて良好だ

車体まわりでは、何と言っても足着き性の良さが光る。身長175cmの筆者なら両かかとが楽に接地し、そのまま車体を前後に動かせるだけの余裕もある。アドベンチャーやクロスオーバーモデルに興味がありながら、足着き性を理由にためらってきた人は、ぜひ一度またがってみてほしい。
ハンドリングは微速域からフラつきにくく、安定性の高さが際立つ。車体が直立状態を保とうとする感触が強めで、キャスター角とトレール量が共通のSV650とは、走り出した瞬間から印象が異なる。
前後のサスペンションはSV650をベースにセッティングが見直されており、乗り味はかなりソフトになったと感じる。速度域や路面状況にもよるが、ギャップを通過した際の追従性は高く、衝撃を穏やかにしてくれる。クッション性の高いシートと相まって、総じて乗り心地は優秀だ。

ワインディングでは、ライダーの操作に対して過不足なく素直に反応し、バンク角に応じてスムーズに向きを変える。反応が唐突になる場面が少なく、ライダーを慌てさせないという点において実に優等生だ。二次旋回中の安定性も非常に高い。
その一方で、ベースとなったSV650に感じられた「操縦を強く意識しなくても、視線を送っただけで自然と曲がり始める」といった軽快さは、やや薄らいだ。カウリングなどの追加装備に伴う重量やそのレイアウト、乗車姿勢、タイヤ、サスペンション設定など、複数の違いが重なった結果だろう。
また、長く続く高速コーナーではリヤが下がり気味に感じられ、狙ったラインよりも外へ膨らもうとする場面があった。この傾向は上り勾配のコーナーでより顕著であり、フロントの接地感も薄くなりがちだった。
以上は今回の試乗条件で感じた挙動であり、リヤのプリロード変更による比較まではできていない。ただ、荷物を積んだりタンデムしたりすれば、リヤサスの沈み込みはさらに増える。荷重状態に応じてプリロードを都度調整し、適切な車体姿勢を確保することは意識しておきたい。

ブレーキについては、SV650が2019年モデルでフロントキャリパーがピンスライド片押し式2ピストンから異径対向式4ピストンとなり、SV-7GXもこの仕様を受け継ぐ。
筆者の記憶では、2ピストン時代は峠道でペースを上げると、レバーをしっかり握り込む必要があった。それが4ピストン化されてからは、操作に対する制動力の立ち上がりに余裕が増した。SV-7GXも同様の印象であり、今回の試乗では絶対制動力、コントロール性ともに不満はなかった。

ABSはバンク角に応じて制御する最新タイプではないが、今回のウェット路面では違和感なく介入した。レバーやペダルを通じて伝わる作動感も細かく、公道で使う上での完成度は高いと感じる。
SV650との決定的な違いは、防風効果の高さだ。アップライトな姿勢のままでも、首から下の上半身や膝まわり、両腕に当たる走行風が和らぎ、高速巡航は非常に快適だった。
惜しいのはスクリーンの高さ調整。3段階から選べるものの、ヴェルシス650やタイガースポーツ660のように工具不要で変更できる仕組みではない。ツーリング先で気軽に調整したい装備だけに、ここは注文を付けたいところだ。

スマートフォン連携アプリ「SUZUKI RIDE CONNECT+」も試してみた。メーターに表示されるターンバイターンナビは、次に曲がる地点までの距離と方向、予定到着時刻、目的地までの距離、渋滞情報などを伝えるもの。土地勘の薄い場所での試乗だったため、これは非常に役に立った。

ただし、スマホ側とは異なり、メーターに地図そのものは表示されない。経路案内に従うには十分でも、周囲の道路との位置関係や、自分がどこを走っているのかは把握できない。いずれマップ表示にも対応してくれたら、さらに便利になるだろう。
日本ではライバルに対する価格面のアドバンテージは大きくない

現在、Vストローム250SXを愛車とする筆者。以前から「乗り換えるならタイガースポーツ660がいいかな」などと考えていただけに、昨年の発表以来、SV-7GXの国内販売を心待ちにしていた一人だ。ゆえに、当然ながら価格と装備の釣り合いを見る目は厳しくなる。
前後17インチホイールを備えた650cc前後のクロスオーバーモデルとして、ヴェルシス650およびタイガースポーツ660との比較表を作成した。



3台とも概ね同じ価格帯に収まる。こうして装備や諸元を比べると、SV-7GXが価格面で明確に有利とは言いにくく、数値で分かりやすい強みは低いシート高と燃費の良さだ。
長距離を快適に走るための資質は十分にある。それだけに、せめてクルーズコントロールが標準装備されていたなら、すぐにでも見積書を作ってもらいにショップへ駆け込んだだろう。
とはいえ、この水冷Vツインの味わいは唯一無二だ。筆者にとっては、モトグッツィのV7シリーズにも通じる「エンジンフィールを理由に選びたくなる」存在へと昇華した。刺激を求めて峠道を走り込む日もいいが、ただ鼓動に身を委ね、走るうちに気持ちがほぐれていく日もある。SV-7GXを“リカバリー系”と呼びたくなるのは、そういう一面を持っているからだ。
そして、この水冷Vツインに対しては次の展開にも期待している。「SV」は単なる車名ではなく、スズキが欧州市場で長年育ててきた資産の一つ。電子制御を進化させた今回のエンジンを使い、灯火類をLED化した新たなSV650が登場しても不思議ではない。もちろん現時点では筆者の妄想だが、このエンジンを楽しむ選択肢は、もっとあってもいい。
ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)
SV650に対し、ハンドルグリップ位置を27mm上方かつ24mm後方へ。さらにハンドル幅を690mmから740mmへと広げたSV-7GX。アップライトなネイキッドポジションの範疇であり、未舗装路でのスタンディングには不向きだ。シート高はSV650よりも10mm高いが、それでも筆者なら両かかとが余裕で接地するほど足着き性は優秀。付け加えると、座面が約25mmアップする純正アクセサリーのコンフォートハイシートにもまたがってみたが、それですら両かかとが接地した。身長170cm以上で、なおかつステップに足を置いた際に膝の曲がりがきついと感じる人は、迷わずハイシートをお勧めする。おそらくハンドリングの印象も変化するはずで、筆者としてはハイシートの状態の走りが開発陣の“本音”ではないかと想像している。
ディテール解説














スズキ・SV-7GX 主要諸元
型式 8BL-ET1AA
全長/全幅/全高 2,160mm/910mm/1,295mm
軸間距離/最低地上高 1,445mm/135mm
シート高 795mm
装備重量 211kg
燃料消費率 国土交通省届出値:定地燃費値 34.5km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 24.6km/L(クラス3、サブクラス3-2)1名乗車時
最小回転半径 3.0m
エンジン型式/弁方式 P511・水冷・4サイクル・V型2気筒/DOHC・4バルブ
総排気量 645cm3
内径×行程/圧縮比 81.0mm×62.6mm/11.2:1
最高出力 54kW〈73ps〉/8,500rpm
最大トルク 64N・m〈6.5kgf・m〉/6,800rpm
燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式
潤滑方式 圧送式ウェットサンプ式
潤滑油容量 3.0L
燃料タンク容量 17L
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン(E10ガソリン対応)
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.462
2速 1.778
3速 1.381
4速 1.125
5速 0.962
6速 0.852
減速比(1次/2次) 2.088/3.066
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター/トレール 25°/106mm
ブレーキ形式(前/後) 油圧式ダブルディスク[ABS]/油圧式シングルディスク[ABS]
タイヤサイズ(前/後) 120/70ZR17M/C(58W)/ 160/60ZR17M/C(69W)
舵取り角左右 33°
乗車定員 2名
排出ガス基準 平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に対応


