
トヨタの人気SUV『カローラクロス』に似た、奇妙な開発車両が欧州で目撃された。現行モデルのボディを短縮したような不自然なプロポーションを持ち、排気管も確認できない。スクープ班が入手した情報によると、どうやら次世代のバッテリー式電気自動車(BEV)に向けたテストカーである可能性が浮上してきた。
注目されるのは、この車両が次期カローラクロスの開発につながる可能性だ。トヨタが進める次世代パワートレイン戦略と合わせて、その正体を探る。

ホイールベースを短縮した異様なプロポーション
今回、欧州のトヨタ開発拠点付近で捕捉されたのは、現行カローラクロスのボディを大幅に改造したテスト車両だ。一見するとカローラクロスの改良型にも見えるが、通常の試作車とは明らかに異なる部分がある。
まず目を引くのは、ホイールベースの短さだ。現行カローラクロスのホイールベースは2640mmだが、今回の車両は前後輪の間隔が短く、ボディ中央部を切り詰めたような姿となっている。ヘッドライトには既存モデルとは異なる形状のランプが装着され、車体下部には通常のカローラクロスでは見られない構造物も確認できる。
こうした車両は「ミュール」と呼ばれる。ミュールとは、既存モデルのボディを利用し、新しいプラットフォームやパワートレインを試験するために製作される開発車両のことだ。量産車とは異なる外観を持つことも珍しくなく、今回の車両も新しいメカニズムを検証している可能性が高い。
そして、最も興味深いのが排気管の存在を確認できない点である。
排気管が見えない理由=BEVの開発か?
今回のテストカーは、ガソリンエンジンを搭載した一般的な試作車とは異なる特徴を備えている。車体下部にはバッテリー関連部品を思わせる構造が見られ、排気管も確認できない。
これらの特徴から、BEV向けの車両構造や電動パワートレインを検証している可能性が考えられる。ただし、排気管が見えないことだけで即座にBEVと断定することはできない。また、カローラクロスのボディを使用していても、開発対象が必ずしも次期カローラクロスとは限らない。
今回の車両は、トヨタが将来投入する小型電動SUVの技術開発に利用されている可能性もある。それでも、カローラクロスに近いサイズのボディが使われている点は見逃せない。
トヨタの次世代コンパクトSUV戦略を占ううえで、重要な開発車両といえそうだ。
次期カローラクロスにBEV追加の可能性?
トヨタは現在、電動化の選択肢をBEVだけに限定しない“マルチパスウェイ”戦略を推進している。市場や地域によって異なるエネルギー事情に対応するため、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、BEVなどを並行して展開するという方針だ。
現行カローラクロスはTNGAのGA-Cプラットフォームを採用する一方、トヨタのBEVには専用設計の車両構造を用いるモデルも存在する。次世代モデルでは、こうした車両構造やパワートレインの組み合わせが見直される可能性がある。
スクープ班が入手した情報によると、次世代カローラシリーズでは、複数のパワートレインに対応できる車両アーキテクチャの採用が検討されているという。これが実現すれば、HEVを中心とする従来のラインアップにBEVを加える展開も考えられる。
ただし、次期カローラクロスへのBEV設定や共通プラットフォームの採用は、現時点でトヨタから正式発表されていない。
航続距離400km超、電動4WDも視野か?
次期カローラクロスにBEVが設定される場合、気になるのは航続距離と駆動方式だ。
スクープ班では、航続距離400km以上をひとつの目安とし、前輪駆動モデルに加えて、前後にモーターを配置する電動4WDモデルが用意される可能性にも注目している。
中国市場では、価格競争力を高めるため、LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを採用するBEVが広く展開されている。仮にカローラクロスのBEV仕様が中国を主要市場とする場合、バッテリーコストを抑えながら実用的な航続距離を確保することが重要になる。
他方、日本や欧州への展開を考えれば、航続距離だけでなく充電性能や電費性能も商品力を左右する。
なお、400km以上という航続距離や電動4WDの設定は現段階での予想であり、正式な仕様が確認されたものではない。
次世代1.5L 直4エンジンとの関係にも注目!
トヨタが進める次世代パワートレイン開発は、BEVだけではない。同社は電動化を前提とした新しい内燃機関の開発も進めており、1.5L 直列4気筒エンジンの自然吸気仕様とターボ仕様を開発している。新エンジンでは小型化と高効率化を追求し、HEVやPHEVとの組み合わせも視野に入れている。
仮に次世代カローラシリーズでこうした技術が採用されれば、BEVだけでなく、HEVやPHEVについても商品力の向上が期待できる。
つまり、次世代カローラクロスは、BEVへの全面移行ではなく、地域の需要に応じて複数のパワートレインを展開するモデルになる可能性がある。
中国で2028年以降に生産開始か、日本導入は?
スクープ班が入手した情報では、次世代カローラシリーズの生産が2028年以降に中国で始まる可能性も浮上している。生産を担う候補として挙がっているのが、トヨタと中国第一汽車の合弁事業である一汽トヨタだ。
中国では現地メーカーによる低価格BEVの投入が相次ぎ、競争が激化している。トヨタにとっても、HEVに加えてBEVの選択肢を拡充することは、中国市場での競争力を維持するための重要な課題となる。
他方、日本市場では、カローラクロスの実用性と扱いやすいサイズが支持されている。そこにBEVが加われば、自宅での充電環境を持つユーザーや、日常の移動を電気だけでまかないたいユーザーにとって、新たな選択肢が生まれることになる。もっとも、次期カローラクロスのBEV設定や日本導入については、正式な発表がない。
果たして2028年以降の次世代カローラシリーズに、初のBEV仕様が含まれるのだろうか? 今回捕捉された謎のテストカーは、トヨタが描く次世代コンパクトSUVの方向性を示す重要な手掛かりとなりそうだ。











