次世代「フルフラットFC路線バス」は、いすゞが先行開発したフルフラット路線バス用BEVプラットフォームをベースに、トヨタのFCシステムと高圧水素タンクを組み合わせたアーキテクチャが特徴だ。BEVとFCEVで車体・電動駆動系などのコンポーネントを共通化することで、専用設計に伴う開発負担やコストの低減を図っている。

路線バスは乗用車のように何十万台も売れるものではない。これまではバス型FCEV(旧型Soraなど)を作るために莫大な専用開発費をかけ、結果として車両価格が1億円に迫るような「製品」になっていた。これでは普及は困難と言わざるを得ない。次世代「フルフラットFC路線バス」は、いすゞが苦労して開発した「リヤアクスルモーター駆動のBEVフルフラット骨格」プラットフォームに、トヨタのFCシステムをモジュールとして組み込む構造とすることで「莫大な専用シャシー開発費の削減(安く)」「テスト期間の短縮(早く)」「既存BEVでの走行実績(確実に・安全に)」をすべて同時に達成したのだ。

また、FCスタックの出力向上と大容量バッテリーによる高効率なエネルギーマネジメントにより、搭載する水素タンクの容量を20%削減しながらも、航続距離を従来比100km増の300km以上へと改善している。BEVとFCEVの設計をモジュール化して束ねる、商用車アーキテクチャのひとつの完成形といえよう。

いすゞの「ERGA EV(BEV)」は、車室内のフルフラット化(後部座席の段差解消)を実現するために、重いバッテリーを「屋根上」と「車体後部」に分散配置するアーキテクチャを採っている。また、同じくフルフラット化のためにリヤアクスル(後輪)の左右にモーターを独立配置する特殊なe-Axleを採用し、床下と車体後部のスペースを極限まで削っている。通常の商用車のように車体の中央にデフ(減速機)を置くのではなく、後輪の左右それぞれの端っこにモーターを独立して追いやる「インアクスルモーター」を採用することで通路の完全フラット化を実現しているのだ。

いすゞ・ERGA EVの電動パワートレーンユニット配置

この「完成されたフルフラットの床」を一切いじらずにFCEV化するため、いすゞの設計陣は「最高出力113kWのFCスタック」と「157Lの高圧水素タンク×3本」を、すべて「屋根上(ルーフ)」にコンパクトに一体化して押し込むという強烈なパッケージングを採用した。これにより、車室内のレイアウトや骨格(シャシー)をBEV版から大きく設計変更することなく、エネルギー供給系を屋根上に集約することに成功している。

トヨタといすゞの役割分担についても明確だ。いすゞが「動くフルフラットのスケルトン(車体+モーター)」を作り、そこにトヨタが「屋根に載せる発電ユニット(水素タンク+FCスタック)」を供給する、という完全なモジュール・アーキテクチャが成立している。

FCシステムと水素タンクを屋根上に集約することで、重心高やロール挙動への影響はどう変わるのか。BEV版と同じフルフラット構造を維持しながら、車両運動性能をどう成立させたのかも興味深いポイントだ。

車両全長/全幅/全高10,545/2,485/3,440mm
定員(座席+立席+乗務員)70(19+50+1)人
FCスタック名称(種類)トヨタFCスタック(固体高分子形)
最高出力113kW
モーター種類交流誘導電動機
最高出力220kW(110kW×2)
最大トルク970N・m(485N・m×2)
高圧水素タンク本数(公称使用圧力)3本(70MPa)
タンク内容積471L
駆動用バッテリー種類リチウムイオン電池